Mechanism for Index Mobile

(2005/11/4)

ここでは,インデックス・モビーレについて説明します.なお,この説明は「Chronograph Wristwatches: To Stop Time」の52-53ページを参考にしました.

そもそも,ダービー&シャルデンブランは,1946年にインデックス・モビーレを開発したゲオルグ・ダービー(Georges Dubey)博士が,レネ・シャルデンブラン(Rene Schardenbrand)氏と共に興したメーカーです.ですので,ダービー&シャルデンブランは,このインデックス・モビーレを売るために作られた会社とも考えられます.インデックス・モビーレのパテントは,1948年にスイスとフランスで,1951年にアメリカで取得されています.

インデックス・モビーレは,プッシャーを押している間,58秒間だけスプリット計測ができます.スプリットのプッシャーがリューズと同軸についており,スプリット針とクロノグラフ針がヒゲゼンマイで結ばれているのが外見上の特徴です.なお,秒針は上がスプリット針,下がクロノグラフ針で,スプリット針には正面に向かって左側に突起物(0)が付いています.

ムーブメントには,外見上は3つのパーツが追加されている(ように見える)だけです.プッシャーに連動するレバー(1)とそれを支える針金状のパーツ,それから軸に設定されたレバー(2)です.なお,(2)のレバーは焼きが入ったブルースチールです.

しかしながら,外見上に見えない部分で多少処理がされています.スプリット針の軸はクロノグラフ針の内側を通り,受けにまでヘッドが出ています.断面図を簡単に書くと,以下のような感じです.青がスプリット針で赤がクロノグラフ針です.

(通常時) (プッシュ時)

クロノグラフ動作時に3時位置のスプリット用のプッシャーを押すと,(1)のレバーが動き,(2)のレバーを文字盤側へ押さえます.それによりスプリット針のヘッドが押さえられ,結果的にスプリット針が止まります.

プッシャーを開放すると,(1)のレバーが(2)のレバーから離れ,それによってスプリット針の固定されていた動きが開放されます.そのとき,中央のヒゲゼンマイによりスプリット針がクロノグラフ針に引かれ,(0)の突起物がクロノグラフ針に当たることでスプリット針とクロノグラフ針が重なります.

いやぁ,単純ですが,よく考えられたシステムだと思います.たったこれだけでスプリットセコンド機能が実現できているところがとても素晴らしいと思います.ただし,いくら単純なシステムとはいえ,いや,単純だからこそ,きちんと動くように組み上げるためには,それ相応の技量は必要だと感じますが...

もちろん,あの独特のメカニズムによって制御される通常のスプリットセコンド機能は,機能もさることながら,審美性も素晴らしく,憧れている時計の一つです.ただ,私の経済状況では,残念ながら現実的に購入することはおそらく不可能です.

一方,インデックス・モビーレの場合,機能もそうですが,あの針のヒゲゼンマイが独特のデザインを醸し出している上,時計も古典的なデザインのものが多く,その結果,素晴らしい時計が多いように感じます.ムーブメントはランデロンやヴィーナス170といった,比較的廉価なものを搭載している場合が多いことは確かですが,それを補って余りある,理知的で一種独特の雰囲気を持った時計が多いと思います.(2005/11/4)