Jacques Etoile (ジャッケ・エトアール) 本国のHP/日本代理店のHP

(2003/12/18, 2004/5/14, 2007/11/26)

ドイツの時計師 Klaus Jacob (クラウス・ヤコブ)氏が1996年に設立したブランドで,日本に輸入されはじめたのは,2000年頃です.「Jacques」はJacob氏のクリスチャンネーム,「Etoile」はJacob氏の妻の名前だそうです.

ジャッケ・エトアールは,何といってもヴィーナスやバルジューといった今は生産されていないオールドムーブメントを搭載した時計を,限定とはいえ,かなりの本数の時計を販売したことで有名になりました.例えば,ヴィーナス175で少なくも500本の時計が販売されました.最近ではさすがにヴィーナス175のストックはなくなってきたらしいのですが...

ヴィーナス175,バルジュー23,72,72C,88といったオールドの手巻クロノグラフムーブメントだけではなく,汎用のオールドムーブメントであるユニタス6300や6376,さらには現行のETA製ムーブメントを搭載した時計も販売しています.2003年には,2001年のバーゼルフェアに続いてプログレス製の自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載した時計を発表し,ようやく販売になるようです.

デザインは,ムーブメントにあわせたような古典的なデザインが多く,まぁ,好みはありますが,私は好きなデザインです.ケースの質感も2001年ごろからSUG(Saechsische Uhrentechnologie Glashuette)製を使うようになり,驚くほど向上しました.

ただ,最近のジャッケ・エトアールにはちょっと首を傾げてしまいます.一例として,ヴィーナス・インペリアルですが,2002年以降は,SSケースのモデルが以前のYGケースのモデルと同程度の価格で販売されるという恐ろしいことになってしまいました.リスボンも2倍弱の値上げになったし...そろそろ値上げをやめないと,メーカー存続の危機が近いような気がします.あとは,現行ムーブメントを搭載して魅力的な時計を作ることも必要だと思います.現在ラインナップにあるモデルはよいモデルとは思うのですが,値上げによって他メーカーのモデルとの競合が増え,その魅力はかなり薄れました.

ジャッケ・エトアール自身は好きなメーカーですが,この方向性が続くのであれば,私はおそらく今後は購入しないと思います.(2003/12/18)


2004年には,プログレス改めSTT(Swiss Time Technology)製の三針時計もラインナップに加わりました.ジャッケ・エトアールとSTTの関係は深いようなので,STT製ムーブメント搭載の自動巻クロノグラフと三針は,ジャッケ・エトアールの今後に光明を与えるかもしれません.ヴィーナス175やバルジューのオールドストックは無くなったようですし,STT製ムーブメントを搭載した魅力的なデザインと価格の時計を強く希望します.

それから,ユニタス6300搭載のモデルは,針の長さをなんとかして欲しいです.メーター付きはインデックスに秒針がのっているからまだましですが,ドレッシーなタイプはあまりにも針が短すぎます...(2004/5/14)


Venus Imperial Applique (ヴィーナス・インペリアル・アップライト)
Ref. 175IA
SSケース/革ベルト/ケース径39mm/厚さ12mm/手巻き

ヴィーナス175を搭載した「ヴィーナス・インペリアル」は,2000年に販売されました.文字盤バリエーションとしては,この「アップライト(限定SSケース100本+YG25本)」,白文字盤の「チャイナホワイト(SS100本+YG25本)」,黒文字盤の「アヴィエーション(SS100本+YG25本)」,パルスメーターを印刷した「パルスメーター(SS100本+YG25本)」,それから2001年に販売されたテレメーターを印刷した「テレメーター(白50本,黒50本)」がありました.

さらに,2002年以降は,ローマ数字インデックスにエナメル文字盤やギョーシェ文字盤を組み合わせたモデルもラインナップに入りました.ですが,これらのSSケースが以前のYGケースの価格で販売されるという恐ろしいことになっています.

シリアルNo.は35/100.これが「Venus 175」という刻印とともに文字盤に入っています.針はブルースチールで,インデックスはアップライトのアラビア数字です.ドットインデックスは正直好みではありませんが,ツートンカラーの文字盤はなかなかシックですし,文字盤のトータルの雰囲気も大好きです.

初期ロットのケースに比べ,こちらは10気圧防水のSUG製ケースで質感はかなり高いです.角型プッシャーもクラシカルで,リューズも大きめです.

裏は当然シースルーバックで,美しいヴィーナス175をいつでも見ることができます.初期ロットはブレゲひげだったのですが,この時計は平ヒゲです.5振動で,スワンネック緩急計,チラネジ付きテンプを装備しています.なお,緩急周りはストックではなく新造です.

ヴィーナス175は,3つ目のヴィーナス178とあわせて,1940年から1966年までに11,000個生産された手巻クロノグラフムーブメントです.もともとは17石ですが,23石にまで加石されています.地板にペルラージュ,受けにコート・ド・ジュネーヴが入っており,なかなか綺麗な仕上げだと思います.

ヴィーナス175は,何といってもそのフェザータッチとも言うべきプッシュボタンの感触が素晴らしい!これは,おそらくリセットハンマーがリセット時にのみハートカムを叩く構造のためだと思います.

カップリングクラッチがドライビングホイールとクロノグラフランナーの間を通っているのも好きですし,ピラーホイール周りの部品がぎゅっと詰まった感じも大好きです.やっぱり,いつ見ても惚れ惚れしてしまうムーブメントです.(2003/12/18)


Palsometer Chronograph (パルスメーター・クロノグラフ)
Ref. 23P
スターリングシルバーケース/革ベルト/ケース径35mm/厚さ11mm/手巻き

2000年に限定65本で販売された,パルスメーター・クロノグラフです.銀無垢以外に,白文字盤・黒文字盤のYGも極少数限定で販売されたようです.搭載ムーブメントはバルジュー23です.バルジュー23を搭載したジャッケ・エトアールの時計には,他にも銀無垢ケースでギョーシェ文字盤や単純な白色文字盤もラインナップにあり「シルバーストーン」というモデル名が付けられていました.その後,2001年に50年代製のムーブメントを搭載したSSケースの「バルジュー・インペリアル」が35本限定で販売になりました.ただし,シルバーストーンよりケース径が大きくなった上,価格も上がりました.

この時計は,生産本数が少なかった上,結構人気だったらしく,なじみの金子時計店でも入荷後にすぐに売れてしまって,それ以後,ぜんぜん見かけなくなってしまいました.ですので,中古を購入しました.ベルトは前のオーナーが純正ベルトから交換したものでしたが,これがなかなか似合っているので,そのまま付けています.

文字通り,文字盤にパルスメーターが赤字で印字されています.文字盤自身は白く塗ってあるだけだとは思うのですが,その質感・雰囲気はまさに古のポーセリンダイアルを髣髴とさせるものとなっています.スペード型の時針やクロノグラフ針もヴィーナス・インペリアルとはまた違ってなかなかいい感じです.

それから,この時計は,文字盤にバルジュー(Valjoux)の語源である「Vallee de Joux (=ジュウ渓谷)」というロゴが印刷されています.どうもこのロゴがあるモデルとないモデルがあるようです.私自身は,これがあった方が好みです.

ムーブメントは手巻クロノグラフの傑作キャリバーと言われているバルジュー23です.1916年から1974年にかけて製造され,その製造個数は126,582個だそうです.ちなみに,バルジュー23に12時間積算計を追加したバルジュー72は,1938年から1972年までに261,558個生産されたそうです.

搭載されているムーブメントは1963年製で,5振動です(後年6振動も出たらしい).17石で,こちらはヴィーナス・インペリアルと違って加石されておらず,緩急計も普通のままでスムーステンプです.ですので,ヴィーナス・インペリアルがヴィーナス175のフルチューンなのに対して,パルスメーター・クロノグラフは製造時のムーブメントを忠実に再現した,という趣があります.ただ,地板にペルラージュ,受けにコート・ド・ジュネーヴが入っていて,仕上げ自身はなかなかのものだと思います.

シリアルNo.は34/65で,これはケース裏に刻印されています.また,受けのドリル跡は,もともと刻印されていたメーカー名を削ったのだと思います.

ヴィーナス・インペリアルは Made in Germany の刻印が誇らしげに裏蓋に入っていますが,この時計の銀無垢ケースはスイス製で,文字盤に Swiss Made と入っています.ケースは錆止め加工がされているらしいのですが,それでも曇りがちです.非防水です.(2003/12/18)


Lissabon Medium (リスボン・ミディアム)
Ref. 6376A(BK)
SSケース/革ベルト/ケース径36mm/厚さ9mm/手巻き

リスボン・ミディアムの2001年のカタログモデルには,「アップライトアラビア数字インデックス+白文字盤(6376A)」と「プリントアラビア数字インデックス+黒文字盤(6376B)」がありました.さらに,2003年にはこれらのモデルが生産中止となった上で,「アップライトアラビア数字インデックス+白文字盤」のAppliqueが70本限定,「プリントローマ数字インデックス+エナメル文字盤」のMaximus が60本限定で販売されました.

この時計(6376A(BK))は実は日本のカタログに載ったことがありません.一方,限定品でもありません.生産数は定かではありませんが,日本入荷数はなんとたったの4本とのことでした.ですので,総生産数も10本くらいでは?と想像しています.もしかしたら,試作品だったかもしれません.(その後,海外では普通に売っていることを発見...試作品ではないことが判明しました.)

最初は6376Aを購入しようと思っていたのですが,こちらの文字盤を見て,アップライトはヴィーナス・インペリアルを持っているし,プリントインデックスでいいや,と思ってこちらの6376A(BK)を購入しました.その後アップライトの実物を見る機会があったのですが,思った以上にインデックスが小さく感じられたので,こちらにしておいてよかったと今では思っています(^^)...

シルバーの文字盤に大きめ・厚めのアラビア数字インデックス,太目のブルースチールの時分針,と地味な時計です.まるで,ミネルバのドイツ限定モデルにインスピレーションを受けたようなデザインです.

ムーブメントは1960年代製のユニタス6376です.6振動スモールセコンドでスムーステンプの汎用ムーブメントです.地板にペルラージュ,受けにコート・ド・ジュネーヴが入っています.同じユニタスシリーズのオーガスト・レイモンドと比較すると,シースルーバック部分が多少小さいのは難点ですが,仕上げは地板にペルラージュが入っている分,こちらの方が上だと思います.

もともと入っていたメーカー名を削って,その上にジャッケ・エトアールのロゴを入れているのが分かります.ですので,ロゴの下の番号は,もともとのメーカーの管理番号だったのだと想像できます.また,ジャッケ・エトアールにしては珍しく,裏蓋周りに何の刻印もありません.

この時計は,その地味なデザインから,以前は冠婚葬祭(特に葬式)用にしていたのですが,その座をセイコーのメカニカルに譲った後は,冬場の気が向いたときに使うようになりました.(2003/12/18)


Monte Calro (モンテカルロ)
Ref. 6300MC-SL
SSケース/革ベルト/ケース径38mm/厚さ10mm/手巻き

もうジャッケ・エトアールの時計は買うことはないだろう,と思っていましたが,買っちゃいました(^^;;;).ユニタス6300搭載のモンテカルロです.購入は2007年です.

ジャッケ・エトアールのユニタス6300搭載機は,偶数番だけ縦長アラビア数字が打たれたものやバーアップライトインデックスの「メトロポリス」,それから,パルスメーター入りの「メディカス」,タキメーター入りの「プリムス」がカタログ上は存在します.本命は「メディカス」だったのですが,そもそも時計が全然売っていないので諦めていたときに,こちらのローマ数字インデックスのものを見つけ,これが好みということで,すかさず購入しました.

購入後に参照番号がMCとなっていることから代理店に確認したところ,こちらのモデルは「モンテカルロ」であることが判明しました.日本に数本の入荷だとのことです.ちなみに,モンテカルロとしては,他にも,日本未入荷ですがヴィーナス175搭載のものも存在したようです.

文字盤は,ジャッケ・エトアールにしては珍しくローマ数字インデックスです.シルバーと言うよりは白に近い文字盤にギョーシェが入っていて,全体的にちょっと膜が貼ってあるような質感です.針はブルースチールです.ジャッケ・エトアールのメトロポリスで私が最も気に入らなかった点が針の長さなのですが,このモンテカルロは秒針もある程度長く,辛うじてインデックスに載っていることもあり,私にとってはギリギリ許容範囲でした(^^).

ヴィーナス・インペリアルと同じくSUG製のケースなので,デザインも同一です.質感も高く,なかなか好ましいケースです.ベゼルが薄い上,文字盤と風防が妙に距離感があり,どうにもアンバランスな感はありますが,これはこれで味だと感じることができます.

ムーブメントは,大好きなユニタス6300です.本中三針の手巻ムーブメントです.こちらのオーガスト・レイモンドのエバーグリーンと比較すると受けの形状が異なることが分かると思います.受けにはコート・ド・ジュネーヴ,地板にはペルラージュが入っていて,ガンギ車と三番車の軸にはシャトンが入っています.5振動のセンターセコンドは見ていて癒されます(^^).

正直なところ,仕上げがされているユニタス6300搭載機が欲しくて,この時計を入手しました.ただ,上にも書いた通り,他のモデルは顔付きが好みではない or 手に入らないので,こちらのモデルを選びました.ですが,これが大正解(^^)!まず,このサイズが私には非常に使いやすく,しかも軽からず重からず,という絶妙な重量感,そして,白色系文字盤にブルースチール針と視認性が抜群な上,気になったときにはひっくり返してユニタス6300を眺めることができる,とかなりのお気に入りの時計となりました.(2007/11/26)


ついでなので,モンテカルロとエバーグリーンを一緒に撮影しました.時計の雰囲気,ムーブメントの仕上の違いなど,比較するとなかなか面白いと思います..(2007/11/26)