Revue Thommen (レビュー・トーメン) 本国のHP
(2003/12/21, 2004/12/27)
レビュー・トーメンは創業1853年の老舗です.簡単な社史は以下の通りです.
1853 | ヴァンデンバーグ時計公社(公益会社)設立. |
1859 | Gedeon Thommen が同社を買収. |
1885 | ジャンピングダイアル式懐中時計を開発. |
1908 | トーメン社(The Thommen S.A.)に社名変更. |
1961 | バルカン&スタジオ(Vulcain & Studio)社,フェニックス(Phenix Watch)社,Buser Freres & Cie 社と共にMSR(Manufactures d’Horlogerie Suisses Reunies SA) グループ結成.設立時は760人の従業員を持ち,年産60万個の時計を生産する大連合であった. |
1986 | 機械式アラーム時計「クリケット(Cricket)」復活.この際,MSR グループの時計は,「Revue Thommen」銘に統一される. |
2001 | PMH社(Production & Making Horloger S.A.) がバルカン社とクリケットブランドを買収.これにより,バルカン社が MSR グループを離脱.同時に,グロバナ・ウォッチ社(Grovana Watch)がレビュー・トーメンの販売を開始. |
このように,「Revue Thommen」銘の時計が初めて世に出たのは意外に遅く,1986年です.この年,50年代後半まで
バルカン社で製造されていたクリケットが復活し,それに併せて MSR グループの時計はすべて「Revue
Thommen」銘としたようです.それまでは,MSR グループの各メーカー銘でした.ちなみに,「Revue」とはトーメン社の一ブランド銘でした.(2003/12/21)
Revue Thommen as 'Maufacturer'
2004年に代理店がフレンディアから第一昭和に移ったと思ったのですが,どうもその後この話は立ち消え?現時点では代理店がどこなのかよく分かりません...(2004/12/27)
Cricket 1997 Enamel (クリケット・1997エナメル)
Ref. 8010008BE/M
SSケース/SSベルト/ケース径35mm/厚さ13mm/手巻き
1997年にメンズ・ボーイズ各1997本ずつが限定で販売されたクリケット1997エナメルです.シリアルNo.は367/1997でこれは裏蓋に刻印されています.文字通り,文字盤のブルーのエナメルがとても美しいクリケットです.個人的には,モダンな感じのラグの形状も好きです.また,5振動のセンターセコンドなので,秒針の動きがかなりユーモラスです.
ムーブメントは MSR S23-80 で,基本設計は1947年から製造されたVulcain 120です.3時位置のリューズで時計用とアラーム用の香箱巻上げと時間設定を,2時位置のリューズでアラームの設定を行います.MSR
S23-80 はアラームの持続時間も30秒近くあり,なおかつ音も大きいので,目覚まし時計にも使えます.私の場合はもっぱらカウントダウンタイマーに使います.
2時位置のリューズを強く押し込むとアラーム設定モードになり,3時位置のリューズが一段上がります.3時位置のリューズでアラームを設定した後それを押し込むと,2時位置のリューズが一段上がります.このように2時位置のリューズと3時位置のリューズが連動しているので,最初は何がなんだか分かりませんでしたが,慣れると「アラームがなる->アラームを止める->アラームを設定する」という一連の動作がスムーズに行え,かなり便利です.
文字盤はシルバーのギョーシェにフンリケエナメルをあしらった完全手作りで,この文字盤だけで他のクリケット1997よりも定価で10万円の開きがありました.さすがにこの透明な青は吸い込まれそうなくらい美しいです.
MSR S23-80の画像です(ただし,この時計の裏蓋を開けたわけではありません).両もちのテンプ受けや輪列受けの形状がなかなか興味深いです.画像上がアラーム用の香箱,下が時計用の香箱,テンプと香箱の間にアラーム用ハンマーが付いています.(2003/12/21)
MSR S23-80 (5振動/17石/径28.0mm/厚さ5.6mm.金子時計店より)
GT 1885 Classics (GT 1885 クラシック)
Ref. 8122002 & 8222001
GPケース/革ベルト/ケース径33mm/厚さ8mm/手巻き
GT 1885 Classics は90年代の初めから販売されたモデルのようです.GTは Gedeon
Thommen を,1885はその年にジャンピングアワー懐中時計を Gedeon Thommen が開発したことに由来していると思います.GT
1885 には,クラシック以外にも,ジャンピングアワー「Saltallero (サルタレロ)」も販売されていました.それから,レディースもラインナップにありました.
現在(2003年)のところ,日本には輸入されていません.なお,レビュー・トーメンでは,2002年に参照番号の変更があったので,上の参照番号は古い番号です.これは推測ですが,おそらく8122002はすでに生産終了,8222001が13000.3523に変更になって継続して生産中だと思います.HPによると,この文字盤以外に「ローマ数字インデックス+ギョーシェ文字盤」である13000.3513がラインナップされています.
文字盤は白色エナメル(だと思います)で,3・6・9のみアップライトで他はプリント,インデックスには夜光のマーカーも入っています.ブレゲ針の先の穴(いわゆるブレゲのりんご)に見える部分は,実は夜光が入っているだけです(^^;;;)...
GT 1885 Classics (8122002)
GT 1885 Classics (8222001)
上の画像から分かるように,文字盤はほぼ同じデザインです.並べてみました.左が8222001,右が8122002です.よく見ると違いがあります.それは,スモールセコンドの位置とアワーマーカーの位置です.左の8222001の方がスモールセコンドが中心よりで,アワーマーカーも内よりです.ですので,「SWISS MADE」の刻印も左の8222001よりも右の8122002の方が外よりで縁ぎりぎりに刻印されています.
それ以外はほぼ共通で,ケース形状・ラグの形状などもほぼ同じです.私がほぼ同じ時計をなぜ持っているかというと,その理由は搭載されているムーブメントです.ひっくり返すと,以下のように異なるムーブメントが搭載されていることが分かります.どちらも手巻ムーブメントですが,受けの形状がぜんぜん違います.左が8222001,右が8122002です.
まずは,右の8122002のムーブメントから見てみます.Revue 81 との刻印が三番車受けにあります.ガンギ車受け,四番車受け,三番車受けが独立した,古典的な5分割ブリッジです.しかも,すべてのブリッジが曲線的です.ムーブメントもケース一杯に入っていることが分かります.
一方,左の8222001のムーブメントです.こちらはガンギ車・四番車・三番車の輪列受けが共通の3分割ブリッジです.輪列受けにある刻印は,いくつか見たことがあるこのムーブメントにすべて違う番号が割り当てられていたので,おそらくシリアル番号です.画像では見えませんが,地板に MSR X1 という刻印があります.ケースが同一であることから,ムーブメントの径がRevue 81 より若干小さいことが分かります.また,コハゼの位置も異なります.
おそらく,Revue 81 がおそらく1940-50年代の開発で,MSR X1 が1952年開発です.推測サイズは
Revue 81 が13リーニュ(29.5mm),MSR X1 が12 1/2リーニュ(28.2mm)です.どちらも17石・5振動でチラネジ付きテンプを採用しています.
特に,私は Revue 81 が大好きです.受けの形といい,大きなテンプがゆっくりワインドする様子といい,なかなかのものです.どちらのムーブメントも,汎用オールドムーブメントのユニタス・プゾー・ASだけでなく,ミネルバの
Cal.48 やオメガの 30mm キャリバーあたりと比較しても,遜色がない美しいムーブメントだと思います.
しかも,現行の高級メーカーの自社製手巻ムーブメントにはこのサイズがほとんどない(だいたい径は10リーニュ以下)ことを考えれば,オールドムーブメントとはいえ,Revue
81 と MSR X1 は,なかなか魅力的な選択肢だと思います.(2003/12/21)
Vulcain (バルカン)
真鍮ケース/革ベルト/縦33mm/横33mm/厚さ10mm/自動巻き
本来ならば,Antiques のページに入れるべきかもしれませんが,同じMSRグループだったということで,こちらに入れました.
1960-70年代製造のバルカンの角型スケルトンです.スケルトンというより,両面シースルーと形容した方がよいかもしれません.
太くて長い針がまず気に入りました.あと,レクタンギュラー(長方形)ではなくカレ(正方形)の角型は持っていなかったこと,MSR製の自動巻きムーブメントに興味があったこと,そして,革ベルトの自動巻きをほとんど持っていないことに気づいたこと,さらに破格だったこと,これらがこの時計の購入動機です.2004年に入手しました.
ケースは真鍮製のカレ型ですが,昨今の時計のように取り立てて大きくはありません.文字盤外周部は濃い緑色,インデックスと針は白色と,なかなか70年代っぽいデザインの時計です.この太い針のせいで,スケルトンなのに視認性は悪くありません.ただし,針・インデックスに夜光は入っていません.
Vulcain のロゴは風防に入っています.現行のレビュー・トーメンにもオープン・ハートはありますが,それよりもオープン部分は大きくなっています.
現行オープン・ハートでは,かんぬき,おしどり,かんぬき押さえは,ムーブメントと同じ色になっていますが,この時計では,ムーブメントは金色,それらのパーツは銀色となっています.さらに,現行ではムーブメントに模様が掘り込まれていますが,こちらはペルラージュ仕上げになっています.
ムーブメントは,現在は GT 54 と呼ばれている,MSR T54 です.5.5振動という,今となってはほとんど見ない振動数を採用しています.このせいで,太い秒針はひょこひょこと面白い動きをします(^^).
自動巻き機構は切り替え車式です.巻き上げ効率はそれほど悪くはありませんが,巻き上げ感はかなり安っぽい感じです(^^).ごくごく普通のムーブメントです.受けは一部ペルラージュ仕上げが施されています.
ちなみに,裏側はドーム上の風防になっていて,こんもりしています.このせいで,光がどうしても風防に反射してしまい,うまく撮影できませんでした(^^;;;).
社史に書いた通り,バルカンは現在MSRグループから離脱していて,主にクリケットを販売しています.現行のバルカン・クリケットの中でも,特に1947レプリカは素晴らしいデザインだと思います.ただ,レビュー・トーメン時代と比べて,価格が高くなったのがちょっと...まぁ,これはレビュー・トーメン自身も値上がり気味なので,何とも言えませんが(^^;;;)...
最初に引き合いに出したレビュー・トーメンのオープン・ハートの自動巻きは,MSRムーブメント搭載ということもあり,いずれは購入したいなぁ,という気がありました.ただ,実物を見てちょっと安っぽく感じるところに個人的には今一つ惹かれませんでした.
一方,この時計は,レビュー・トーメンと比較してもよりチープ感が漂っていると思います.ですが,そのチープ感が,時代錯誤とも言える派手なデザインとうまく融合して,面白い時計になっていると思います.
それに,この時計の場合,素とも言える表の仕上げも個人的には好みでした.スケルトンの場合,ムーブメントにプレスの模様が入っていることが多いのですが,これが私は嫌いなのです.そのような模様を入れるくらいなら,いっそのことこのような磨きのみで仕上げてくれた方が潔いと感じます.
でも,私が持っている時計の中では,かなり浮いたデザインの時計なのは確かです(^^).次は,GT
44を搭載した手巻時計を入手したいと考えています. (2004/12/27)