Ebauches S.A.
(2003/12/29, 2004/5/10, 2005/11/6)
エボーシュ社(Ebauches S.A.)とは,おそらくフランスのジャビー兄弟社製の格安ムーブメントに対抗するために設立された,スイスのムーブメント製造会社の連合体です.もともとエボーシュとは「半完成品」の意味です.
なお,以下の情報は,主に「ヴィンテージウォッチ No.7」と「ウォッチアゴーゴー No.30」を参考にしています.(2003/12/29)
最近,ワールドフォトプレス社から出版された,「ムーブメントブック」には,エボーシュS.A.の歴史とカタログの一部が掲載されています.(2004/5/10)
エボーシュ社の歴史
エボーシュ社.の歴史は,ムーブメント製造会社の合従連衝を繰り返す歴史であり,クォーツショックの後,最終的にはETAに統合されて現在に至っています.カッコ内はホールマークです.
なお,ETA社のHPを見ると,ETA社は創業当時からメンバーだったように書かれています.これはどちらが正しいかは今となっては不明ですが,ここでは,ETA社は後年加わったという説を採っています.
1926年 | ア・シールド(AS),フォンテンメロン(FHF),ア・ミシェル(AM)によって創設. |
1927年 | ランデロン(L)ほか9社が傘下に入る. |
1928年 | フェルザ(F),ヴィーナス(☆)が傘下に入る. |
1932年 | アローニョ(A),フルーリエ(FEF),ユニタス(UT),ETA(ETA)が傘下に入る. |
1933年 | プゾー(P)が傘下に入る. |
1937年 | シェザール(C)が傘下に入る. |
1941年 | デルビィ(D)が傘下に入る. |
1944年 | バルジュー(R)が傘下に入る. |
1962年 | シェザールが操業停止. |
1965年 | デルビィが操業停止. |
1966年 | ヴィーナスが操業停止. |
1969年 | フェルザがETAに吸収合併. |
1970年 | ランデロンが操業停止. |
1974年 | アローニョが操業停止. |
1978年 | ア・シルトがETAに吸収合併,キャリバーが統合される. なお,AS製のキャリバーは1983年まで製造される. |
1979年 | フルーリエが操業停止. |
1983年 | ユニタスが操業停止. |
1983年 | SSIH(オメガ・ティソ)とASUAG(コンコルド・エテルナ・ロンジン)が合併してSMHを結成. |
1985年 | プゾーが操業停止. |
1985年 | エボーシュS.A.がETAの名のもとに統合し,SMHの傘下に入る. |
1989年 | フォンテンメロンが操業停止. |
代表的なメーカー
代表的なメーカーは以下の通りです.正式名称の最後は地名です.エボーシュ社の各メーカーは,その地名を基に名づけられたメーカーが多いことに気づくと思います.
左端がムーブメントに刻印されたホールマークです.
現在でもETA社で生産されているムーブメント
プゾー,ユニタス,バルジューが租である以下のようなムーブメントが現在でもETA社で製造されています.なお,現在のETA社の公式表記はETA 7001などのようです.このHPでは,ETA/Peseux 7001というような表記を使っています.
Peseux 7001 | 1971年から1985年までにPeseux社で約235万個生産され,現在も生産されている薄型のムーブメント.直線的なブリッジ形状が特徴.6時位置にスモールセコンド.刻印はETA.手巻き.6振動. |
Unitas 6497/6498 | 共に懐中時計用として開発されたムーブメント.スモールセコンドがリューズの正反対(腕時計の場合は9時位置)にあるLepineが6497で,右90度(腕時計の場合は6時位置)にあるSavonneteが6498.ビックデイトやトリプルカレンダームーンフェイズのモジュールが存在する.刻印はETA.手巻き.5振動. |
Valjoux 7750/7751/7753/7754/7760/7765/7770 | 1973年にデュボア・デプラ社が開発したモジュールの特許をもとに開発された,縦三目の自動巻クロノグラフムーブメント.カム式で,動力伝達方式はスインギングピニオン方式を採用.バイプロダクトとしては,トリプルカレンダームーンフェイズ付きの7751,横三目版の7753,センターGMT針付の7754,手巻きの7760と7765,スプリットセコンドの7770がある.ETA2894やETA2892+クロノモジュールと共に,現在クロノグラフに最も多く使われている.刻印はRではなくVAL.全回転一方向自動巻き.8振動. |
(2003/12/29)
以下では,手持ちのムーブメントの中で,オフィシャルカタログ(1955年版)に掲載されているムーブメントの図を紹介しています.カタログをクリックすると,実際の画像にリンクしています.
なお,オフィシャルカタログには,クロノグラフは文字盤側・裏蓋側の図が掲載されていますが,三針は文字盤側の図だけです.また,ETA1168の裏蓋側の図はBESTFITから抜粋しました.
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Venus 175 | Valjoux 23 | Landeron 48 |
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Landeron 185 | Venus 1221 | Venus 203 (参考) |
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ETA 1168 | ETA 1168 (BESTFIT) | FHF 29 |
ランデロン185とヴィーナス1221の文字盤側のカレンダーの仕組みがよく分かると思います.特に,ヴィーナス1221のカレンダーは,ヴィーナス203と同じ仕組みであることが分かります.
ちなみに,SCD・SCはセンターセコンド,QAはポインターデイト,JGは曜日表示,MGは月表示,PHはムーンフェイズ,STはストップウォッチを表しています.(2005/11/6)