(2003/12/26, 2004/1/22, 2004/7/9, 2008/6/10)
クォーツクライシスの1970年代後半,機械式時計愛好家だったピーター・ホッファー(Peter
Hofer)氏は,リーズナブルでハイクォリティな機械式時計を製造する会社をスイスのビエンヌに設立しました.当初はOEM供給メーカーだったのですが,その中で1983年に設立した唯一の自社ブランドが「エポス」でした.
エポスの特徴は,ピーター・ホッファーの哲学である「時計愛好家のために,スイスの伝統的な製法を守りながら,後世に継承すべき優秀な機械式時計を製作する」という姿勢の下に製造されている数々の機械式時計です.おおよそ,複雑機能であるトゥールビヨン,ミニッツリピーター,永久カレンダー,レトログラードなど以外の機能,すなわち,トリプルカレンダームーンフェイズ,レギュレーター,ドクターズウォッチ,ジャンピングアワー,クロノグラフ,ビックデイト,アラームなどの機能を搭載した時計が,どれもリーズナブルな価格で提供されています.
さらに,ムーブメントも現行のETA製ムーブメントだけでなく,オールドストックムーブメントを使っているモデルもあります.オールドムーブメントは主に手巻ムーブメントで,プゾー7040と7046,ASのアラームの1475と三針の1727,8日巻きのヘブドマス,それからETA2512があります.最近はジャケ736を搭載した手巻時計も販売されました.
ですので,ラインナップにないものは手巻クロノグラフくらいで,あとはだいたいリーズナブルな価格で揃ってしまう,恐ろしいメーカーです.エポスのラインナップを以下のページにまとめています.
Epos Reference
ただなぁ...毎年のように繰り返される値上げはそろそろ勘弁願いたいです.振り返れば価格的なアドバンテージはほとんどなくなってしまいました...ジャッケ・エトアールといいエポスといいオリスといい,この代理店は値上げが多すぎです...少しはオーガスト・レイモンドの代理店を見習って欲しいものです.(2003/12/26)
2004年の新作は,大きめのトノー型が充実しているようです.画像だけ見ましたが,手巻パワーリザーブ計やスケルトンが面白そうです.また,古典的な2カウンタークロノグラフもなかなかそそられます...あとは価格ですね.手ごろな価格であることを期待しています.(2004/7/9)
Emotion Regulateur (エモーション・レギュレーター)
Ref. 3157WL
SSケース/革ベルト/ケース径36mm/厚さ8mm/手巻き
この時計は,原型が1992年のバーゼルで発表されていましたが,日本に入荷したのは2001年です.
時針・分針・秒針が独立しているレギュレーターは,もともと欲しかったのですが,なかなか手が出にくい価格の時計が多く,しかもETA
2892 ベースの自動巻きが多かったので,ちょっと迷っているときにこの時計を見つけて購入しました.文字盤はエナメル調にアップライトのバーインデックス,ブルースチール針にポインターデイトの先の赤がよいアクセントになっています.デザインはかなりのお気に入りです.
しかも,コインエッジベゼルに裏はマット仕上げ,と傷が入りやすいところはすべて傷が目立たないような加工がしてあり,しかも好みのサイズなので,汗をかかない時期の主力の時計になっています.
時針の形状をちょっと凝って欲しいことと,時針・分針・秒針をもう少し長くして欲しいところですが,これは贅沢な悩みかなぁ(^^)?それから,視認性は当然のことながら,かなり悪いです.
ムーブメントはプゾー7046でシースルーバックです.これは1960年代のオールドムーブメントらしく,ホールマーク(エボーシュマークの刻印)もETAではなくPです.17石,6振動で,おそらくETA/Peseux
7001と同一の10 1/2リーニュ(23.69mm)です.
受けの形は,ETA7001が香箱受けに二番車があるのに対して,こちらは輪列受けにガンギ車,四番車,三番車と共に二番車もあります.ですので,輪列受けの形状が曲線的になっています.なお,テンプ受けは7001と同じ形状です.
日付はジャストチェンジではなく,23時30分から0時30分にかけてジワーッと変わります.プッシュ式の日付早送り機構が付いています.(2003/12/26)
Unitas (ユニタス)
Ref. 3260SL
SSケース/革ベルト/ケース径40mm/厚さ11mm/手巻き
この時計の日本入荷も2001年です.
かなり大振りの三針手巻時計です.インデックスはアップライトのブレゲ数字で,針はインデックスと同色のリーフ針です.文字盤には模様が入っていて,スモールセコンドにも別の模様が入っています.
ケース全体は側面がポリッシュでそれ以外はマット仕上げとなっています.ただ,悲しいことに,うっかりケースに大きな傷を入れてしまいました(ToT)...ベルトは厚手でなじむのに少し時間がかかりました.
個人的には,このサイズは持て余すサイズですが,それでもデザインはなかなかのものだと思います.それから,私の手巻好きは,この時計から始まったので,そういう意味では思い入れが深い時計です.
搭載されているムーブメントはETA/Unitas 6497です.大きくてシンプルで,でも見飽きることがありません.17石,5振動で,16
1/2リーニュ(36.6mm)です.
おそらく最廉価に近い仕様を使っていると思われますが,それにしては,地板にペルラージュが入っていたり,受けにコートジュネーブが入っていたり,ブルースクリューを使っていたりと,なかなか凝っています.
大きなムーブメントを使いながら,その中でもケース径を小さくしようと,ケース一杯に広がったムーブメントがなかなか壮観です.(2003/12/26)
Doctor's Watch (ドクターズ・ウォッチ)
Ref. 3185SL
SSケース/革ベルト/縦32mm/横25mm/厚さ7mm/手巻き
エポスのドクターズウォッチです.日本に入荷したのは2003年で,入手したのは2004年です.この時計は2003年末のカタログに載ると同時に思いっきり値上がりしました.
オーガスト・レイモンドのチャールストン・ドクターと比べると,幅広な印象があります.ケース形状は端に行くにしたがって広くなるフレアードで,このケース形状とインデックスデザインを持つようなロレックスのプリンスが存在するので,おそらくそれをモチーフとして作られたのだと思います.
ドクターズ・ウォッチなので時分針はごく小さいですが,それでもなかなか凝った形です.この針はブルースチールです.
文字盤の格子模様はどうも貼り付けているようです.格子模様には黒枠が書かれていますが,これは微妙にずれていたりします^^;;;.この格子模様が光の当たり方によって,いろいろな表情を見せます.ただし,光が当ると反射するため,視認性はそれほどよくありません.
ベルト幅も20mmあります.また,ベルトがラグの先端につけられていないため,ラグの下端が余っています.
ムーブメントは,オーガスト・レイモンドのチャールストン・ドクターと同じAS1727です.ただ,こちらはロジウムメッキ仕上げで,ネジも青です.シースルーバックから覗ける範囲もこちらの方が大きく,この時計で初めて,AS1727には,ガンギ車に添った形のパーツが存在することを知りました^^...
なお,日本語版カタログには,3185のムーブメントはAS1726と書かれていますが,地板にASの刻印があり,最後が27となっていることを確認したので,カタログは,AS1727の間違いだと思います.
正直なところ,購入をかなり迷いました.その理由は,オーガスト・レイモンドのチャールストン・ドクターを持っていたからです.そのイメージから,それほどよいムーブメントとは最初は思えなかったので...
しかしながら, リューズが大きいこととケース形状のおかげで,チャールストン・ドクターとは比べものにならないくらい巻上げが容易にできました.そして,AS1727の巻き上げ感もなかなかだということを再認識しました^^.
また,最初は3208SLのジャンピング・アワーを購入しようと思っていました.ところが,実物を見ると想像以上に大きく,プロポーションも今一つという感じだったので,今回はこちらを選びました.ただ,やっぱりジャンピング・アワーの機能も捨てがたいので,いずれは購入しそうな気がします^^;;;...(2004/1/22)
Rectangular Power Reserve (レクタンギュラー・パワーリザーブ)
Ref. 3327BK
SSケース/革ベルト/縦43mm/横30mm/厚さ9mm/手巻き
2003年に,白文字盤300本,黒文字盤300本の計600本限定で発売されたレクタンギュラー・パワーリザーブです.2004年に入手しました.
エポスにしては珍しい限定品です.シリアル番号はケースサイドに入っています.この時計は,002/300です.黒文字盤,白文字盤とも,一桁の番号をいくつか日本で見たことがありますので,ほとんど日本向けの時計だと感じています.
文字盤はかなり凝っています.画像では分かりづらいのですが,中央のインデックス内部はペイントの下に格子状のギョーシェ模様が入っており,しかもペイント自身にも格子状の模様が入っています.ですので,光線の具合で,文字盤全体に格子模様が見えたり,真ん中の部分だけに格子模様が見えたり,ただの黒文字盤に見えたりとさまざまな表情を見せます.
1時位置はパワーリザーブ計で,8時位置がスモールセコンドです.針はリーフ型ですが,リーフ型といっても,時分針と秒針とパワーリザーブ計で微妙に膨らませ方が異なっています.また,針の軸は銀色で,針のみ白となっています.
ケースは外側へ向って湾曲している,いわゆるカーベックスタイプです.ケースは鏡面仕上げです.9時側のサイドに「limited
Edition 300」,3時側のサイドに「002 300」と刻印されています.さらに,このケースの質感は,同じエポスの中でもずば抜けています.
ムーブメントは角型のJaquet 736です.19石,6振動です.テンプ受けが両持ちになっていて,輪列もスモールセコンドではない,というちょっと変わったムーブメントです.ブリッジにはコート・ド・ジュネーブが,地板にはペルラージュが施されていてなかなかの仕上げです.
このムーブメントは謎が多く,ETA(FHF,FEF)製の1960年代製のストックムーブメントという説もありますが,私の想像では,次の2つのうちのどちらかだと思っています.(1)ETA(FHF,FEF)が1960年代に製造していたものを現在もJaquet社で製造している,(2)Jaquet社がそもそも開発して製造している.
個人的には,(2)の可能性が高いと思っています.それは,「テンプを組み込んだ後にヒゲをいじることはほとんどない」という割り切りから両持ちのテンプ受けを1960年に採用したセイコーならいざ知らず,伝統的なスイスでは,クォーツショックまで,頑なに片持ちのテンプ受けを使ったのでは,と思われる点,それから,スモールセコンドが8時位置のアンティークの時計を私は全く見たことが無い上,数多くの角型ムーブメントが存在した1960年代に,あえてこのムーブメントを作った理由が分からない,という点です.
小型なレディースで角型ムーブメントを搭載した二針時計では,このような輪列はよく見かけます.ただ,さすがにここまで大きいものは,私はこのムーブメント以外に見たことがありません...しかも,このムーブメントは,香箱側の受けが無駄に大きいように感じます.ですので,私は上の(2)の可能性が高いと思っています.
なお,このムーブメントを搭載している時計には,ジャッケ・エトアールのエステスパーク,ボーム&メルシエのハンプトン・ミレイス・パワーリザーブ,ダンヒルのファセット,ダニエル・ロートのミレニアム・モデル,フィリップ・デュポアのパワーリザーブ,ジャケ・ドローのボヤージュ,太安堂の角型ムーンフェイズなどがあります.このうち,スモールセコンドが8時位置にあるのは,この時計とボーム&メルシエです.他は6時位置に移動しているか,スモールセコンドを省略しています.
家内はこれを見て一言,「これと同じ時計じゃない!」と...確かにサイズ的にもデザイン的にも,ぱっと見はそっくりです.また,この時計は私の感覚からすると,かなり大きいです.私の角型サイズはモーリス・ラクロアのFHF29までが許容範囲ですから,それと比較すると,やはり一回りは大きいです.
ただ,そのせいで,存在感は抜群の時計です.カーベックスタイプなので腕へのフィット感もいいですし,何より文字盤が面白いです^^.(2004/7/9)
Heure Sautante (ジャンピング・アワー)
Ref. 3345SL
SSケース/革ベルト/縦35mm/横35mm/厚さ8mm/手巻き
こちらで言っていた,ジャンピング・アワー,結局,2007年末に入手しました(^^).なお,「Heuer
Sautante」とは「Jumping Hour」の意味です.
梨地とも言うべき白(シルバー)文字盤で,インデックス部分もきちんと掘り込まれています.10,20,40,50を大きく表示して文字盤の隙間を埋めると共にデザインのアイコンになっています.
これにブルースチールの分針と秒針が合わせられています.特に,分針はちょっと長過ぎますが,その形状が大好きです(^^).
ただ,付属していた革ベルトが殺人的に硬かったです(^^;;;)...Dバックルは,レクタンギュラー・パワーリザーブのものよりも進歩しています.
ムーブメントはAS1727.多少見栄えが良くなる程度で,仕上はドクターズ・ウォッチと全く同一です(^^;;;)...
裏には3345という参照番号が刻印されています.エポスでは,この時計を3208としていますが,両者の違いはロゴです.3208は「epos」とだけ書かれていますが,3345は「epos
switzerland」となっています.
ちょっと長くなりますが,この時計に対する思い入れを(^^).この時計との出会いは今から10年ほど前,まだエポスが日本に輸入される前です.その当時,海外の通販サイトを見ていて,この時計を発見しました.ちなみに,後で調べたら,この時計は1996年のバーゼルで発表された時計でした.
この時計を初めて見たときには本当に驚きました.(その当時)1000ドル以下!?それでジャンピング・アワー!?しかも手巻角型でかっこいい!!そのときから私はこの時計の虜になりました(^^).
その後,2001年に日本にエポスが輸入されると雑誌で知り,さらに「当店でもエポスの扱いを始めます」とアナウンスされた金子時計店に,ジャンピング・アワーが入荷するかをメールで問い合わせたのが,そのお店との付き合いの始まりです.エポス輸入開始第一弾には,残念ながらこの時計は入っていませんでした.そのときには,ユニタスとレギュレーターを購入しました.
ただ,ちょうどその頃から,私はムーブメントを偏重するようになりました.また,今にも増して,「デカ厚嫌い・小さい時計大好き」でした.そして,既に同じムーブメントを搭載するオーガスト・レイモンドのチャールストン・ドクターを入手済みだった時にこの時計の輸入が開始されました.そこで,喜び勇んでお店へ現物を見に行ったのですが...
第一印象は「大きい!」でした.一方,エポスのドクターズ・ウォッチは私好みのサイズ,ということで,散々店頭で迷った上げく,上に書いた通り,ドクターズ・ウォッチを選びました.ムーブメントはオーガスト・レイモンドと同じでしたが,仕上げが異なる上,リューズの巻き上げやすさも段違いによかったので,これは納得できました.
ところが,そうなると今度はこの時計を買うきっかけを失いました(^^;;;).同じエポスのドクターズ・ウォッチとは,ムーブメントが同じどころか仕上げまで同じです.さらに,その頃の私は,針表示の方が堅牢だろうということで,故障リスクが高いジャンピング・アワーにどうにも手を出しあぐねていました.しかも,特にディスコンになったわけではないので,「いつでも入手できる」ということもあり,なかなか手が出ずに何年か経っていました.
このジャンピング・アワーを購入しようと決めたのは,2007年の12月に入ってからです.その頃から,ムーブメントに対する思い入れよりも,時計そのもののできや楽しさの方が重要になってきたからです.そうなると,デザインが抜群に好みなこの時計は,自ずと購入候補のトップに躍り出ます(^^).
というわけで,今回一念発起して入手しました(^^).紆余曲折ありましたが,出会って10年経ってようやく手にすることができました!入手してみると,「何で今まで購入しなかったんだろう?」という感じですが(^^;;;)...
さて,初のジャンピング・アワーですが,アワーディスクがジャンプする様子がまたとても楽しいです(^^).
上の画像のように,アワーディスクは反時計回りに回転します.手持ちの時計は,59分45秒ごろジャンプします.左から58分,58分40秒,59分,59分20秒,59分40秒,59分45秒です.ジャンプする前に,一旦時計回り方向へアワーディスクが動いています.まるで勢いをつけるかのように...その後,音も無くアワーディスクが反時計回り方向へジャンプします.
いやぁ,デザイン,機能,共に本当に楽しい時計だと思います(^^).(2008/6/10)