Special Pieces

ここでは,本来ならば Antiques や Others に分類すべき時計の中で,特に思い入れが強く,お気に入りの時計を紹介しています.

(2006/11/7, 2006/11/22)


Stowa / Exima Kalibar Omega 286 (ストーヴァ/エクシマ・キャリバー・オメガ286)
SSケース/革ベルト/ケース径37mm/厚さ10mm/手巻き

ドイツの時計メーカー「シャウアー」の代表であるシャウアー氏がオーナーで,主に低価格帯の時計を製造しているメーカー「ストーヴァ」の「エクシマ」です.ストーヴァは2006年からTICTACが輸入を始めました.

エクシマには,ETA2824搭載で白文字盤のノンクロノメーターとグレー文字盤のクロノメーターがレギュラーモデルとして販売されています.さらに,限定モデルとして,このオメガ286を搭載したモデル25本が販売され,その後でPUW560を搭載したモデル100本が販売されています.

このエクシマは,2005年5月に発売がアナウンスされ,そのときに注文しました.ところが,当初2005年の秋に発売という予定が延びに延び,結局,2006年の10月にようやく入手しました.ただし,現時点で出荷された分はたったの7本とのこと(^^;;;)...うーん,本当に25本全部出荷されるのだろうか...

シリアルNo.は2/25で,これがケースや文字盤ではなく尾錠に刻印されています.ストーヴァのロゴと搭載されたムーブメントを表す「Kalibar Omega 286」が印字されたシルバー製の文字盤で,それに三角錐のアップライトインデックスが入っています.針はドルフィン型で中央の折り目がきっちりとついていて,ドイツの時計らしくインデックスまでピシッと伸びています.

ケースもシャウアーさんが最終仕上げをしたらしく,かなり綺麗に磨きこまれています.全体的な雰囲気はかなりオーソドックスな感じですが,そこがまた魅力的だと思います(^^).

保証書は,シャウアーさんが直筆で書かれています.これを見ただけで感激しました(^^)!

ムーブメントは文字盤に刻印してある通り,オメガのCal.286です.いわゆる30mmキャリバーで,30 SC T6 PC AM とも呼ばれています(SC=センターセコンド,T6=改良6,PC=耐震,AM=耐磁という意味です).オメガお得意の赤金メッキ仕上げです.

ここにも書いた通り,センターセコンドムーブメントの中では,以前からかなり気になっていたムーブメントです.質実剛健な中で,出車とその受けの形状にそそられます(^^;;;).このムーブメントを搭載していることが,このエクシマを購入した最大の理由です.

聞くところによると,シャウアーさんはこのムーブメントを搭載する際,「ムーブメントはなるべくいじらない」という方針だったそうです.ですので,緩急針周りも特に手は入っておらず,ヒゲゼンマイも当時のままのブルースチール製が使われています.本当は30mmキャリバーのクロノメーターの丸型緩急計かスワンネック緩急計が採用されていればベストだったのですが,それでも,かなり美しいと思います.

いやぁ,この時計,デザイン・サイズ・ムーブメントすべてが私の好みのど真ん中でした(^^)!手巻三針は,この時計と,注文しているヘンチェル,それにモーリス・ラクロアのFHF29とエナメルがあればとりあえず十分,という気になりました!もちろん,他の手持ちの手巻三針時計も好きなので手放す気はありませんが,その中でもこの時計はずば抜けて素晴らしいと思います(^^)!結果的に,予定から1年遅れで入手しましたが,待ちに待った甲斐があったというものです.本当に満足しました.

おそらく,アンティーク好きの方は,この時計を邪道と感じると思います.オメガのムーブメントを他の時計の銘に入れるなんて,オメガのオリジナリティという観点からは逸脱しまくっていますからね(^^;;;)...ただ,この時計の価格はなんと900ユーロでした!ですので,アンティーク・オメガの30mmキャリバー搭載の時計とあんまり変わらない価格だったのです.しかも,最初からシースルーバックが楽しめる上,NOSムーブメントを搭載している,というおまけつきです.

オメガの30mmキャリバーの復刻としては,オメガ自身が出したスモールセコンドのルネッサンスがありますが,その価格が金無垢ケースとはいえ80万円近いことを考えると,センターセコンドの30mmキャリバーを搭載してのこの価格は,私にとってはかなり驚異的なものでした.それに,オメガ以外のメーカーからオメガのムーブメントを搭載した時計が出たこと自体,かなり珍しいことだと思います(少なくとも私はこのような成り立ちの時計を知りません).

それから,この時計を注文してから,やはり30mmキャリバーの情報が欲しいと思ったので,こちらのスペアパーツリストを入手しました.スペアパーツリストの方は2005年の11月に到着していましたから,「これが無駄にならないか?!」とやきもきしていました(^^;;;).ただ,現在,このスペアパーツリストは入手先ではすでに無くなっていましたから,これはこれでラッキーだったかも?!せっかくスペアパーツリストを入手したので,こういう写真も撮ってみました(^^).

そういうわけで,この時計は,私にとっては本当に魅力に溢れている時計です(^^)!(2006/11/7)


Universal Geneve / Tradition "69"
(ユニバーサル・ジュネーヴ/トラディション“69”)

Ref. 769.110/4.196.876
WGケース/革ベルト/ケース径34mm/厚さ9mm/自動巻き

1995年頃発表された,ユニバーサル・ジュネーヴ(単にユニバーサルと呼ばれることも多い)のゴールデン・クラシック「トラディション69」と呼ばれているモデルです.2006年に入手しました.

ユニバーサル・ジュネーヴは,長い間スイス時計業界の雄でしたが,クォーツショックで不振の時期を向えました.1980年代に復活の兆しが見え始め,1993年のフレッド・サンチ氏の社長就任で復活に拍車がかかりました.この時計は,そのときに出た時計になります.なお,日本では1998年ごろから代理店が無くなったため輸入されていませんでしたし,その後の経営もそれほど成功を収めたとは言えないようで,昨年経営者が代わり,それから新しいムーブメントを開発したりして今年から日本への輸入が再開しました.

この時計には,WG以外にYGケースもありました.日付付き中三針の時計で,3時位置に日付,6・9・12がアップライトインデックスでそれ以外がひし形のアップライトインデックスとなっています.針はドルフィン針で,秒針と分針は先端が曲げられています.日付のフォントはちょっと古めかしい感じです.

文字盤の12時位置にユニバーサル・ジュネーブの刻印とアップライトのロゴ,文字盤中央部には縦に,外周部には放射状に模様が入っています.この模様がかなり秀逸だと思っています.ただし,分インデックスが無いので,実用性は多少落ちます.一方,ケースはごくオーソドックスな作りです.

ムーブメントは,その名の通り Cal.1-69 というマイクロローター自動巻ムーブメントが搭載されています.このムーブメントは往年のポールルーターに搭載された Cal. 215-1(215のカレンダー付き)の後継である1960年代の Cal.69 のストックムーブメントだと思います.テンワは小さいですが,5振動です.マイクロローター搭載ですが,カレンダー付きのためそこまで薄くは無く,厚さは5.15mmです.

仕上げは,当時の Cal.215 とそれほど大差はありませんが,それでも,受けにはコート・ド・ジュネーヴが施されていますし,何よりマイクロローターを収納したムーブメントの見た目が堪えられません(^^)!使ってみたところではマイクロローターですが,巻き上げ不足と感じたことはありません.

日本版クロノスNo.4に,ブルーナー氏が寄稿した「マイクロローター対センターローター」という記事があります.それによると,1954年にビューレンがマイクロローター搭載の自動巻を開発し,その構造で特許を取得しました.この11ヵ月後にユニバーサル・ジュネーヴが似たような構造のポールルーター用のムーブメントを開発した際,ビューレンに使用許可を申請し,ムーブメント1個につき4スイスフランの使用料を支払うことになりました.両社は,1959年にこの特許の共同使用権を締結し,それによって完成したのがマイクロローター搭載の新たなキャリバー,ピアジェ 12P です.1972年にこの特許が期限切れになると,他のメーカーもマイクロローター・ムーブメントの製造を開始し,その中には,有名なパテック・フィリップの現行ムーブメント Cal.240 も含まれます.

ユニバーサルが開発したマイクロロータームーブメントは,ポールルーターの流れである日付中三針のCal.215(Cal.69やCal.72も含む)とシャドーの流れであるニ針のCal.66(Cal.2-66も含む)に大きく分けられると思います.それらのムーブメントは,1990年代に復刻されていました.Cal.72 は Cal.69 と構造が違うので,かなり興味がありますし,Cal.66 もスイッチング・ロッカー式の巻き上げ方式とその薄型ぶりをいずれは堪能してみたいと思っています(^^).問題は,1990年代の復刻は金無垢ケースがほとんどなので,値段的になかなか手が出づらいことですが(^^;;;)...

一方,この時計を買うまでは恋焦がれていた,パテック・フィリップの Cal.240 やショパールの L..U.C. を搭載した時計は,今となっては正直どうでもよくなりました(^^;;;).やはり値段が値段ですし,何より時計のサイズとデザインで「これは!」という時計が現行には全く無いことが原因です...個人的には,この時計は,特にサイズとデザインで,現行パテック・フィリップの Cal.240 搭載の時計やショパールの L..U.C. 搭載の時計と比較しても,私の中では全く遜色が無いどころか,最上の時計です(^^)!

上のストーヴァのエクシマとデザイン上は被っていますが,ムーブメントの違いから,どちらもかなりのお気に入りです!(2006/11/22)