ここでは,Archive に入れるには主観的過ぎる時計に関することなどを書いていくつもりです.つもりですが...気が向いたときだけです(^^;;;)...また,あくまで主観的な意見ですので,反論等はあるかと思いますが,まぁ,私の戯言だと思って御容赦ください.
2008/03/27 「ヘンチェルの画像が来ました!」
2007/11/07 「それでは組み立て(お遊び)」
2007/11/03 「針が来た!」
2007/09/18 「それはないよ...」
2007/09/05 「時計三昧の2日間」
2007/06/24 「最近...」
2007/06/08 「タグ・ホイヤーとボーム&メルシエは良心的?!」
2007/05/28 「バーゼル&SIHH2007:ベストウォッチ(暫定版)」
2007/04/18 「お知らせ」
2006/11/28 「10年前と比べて時計はどれだけ値上がりしたのか?」
2006/10/29 「実は...」
2006/10/27 「ノモスのタンゴマットは素晴らしい!」
2006/09/08 「ワールドウォッチフェアに行きました」
2006/08/02 「念願のエボーシュS.A.カタログ!」
2006/07/03 「バーゼル&SIHH2006:番外編」
2006/07/02 「バーゼル&SIHH2006:ベストウォッチ」
2006/04/15 「世界的な機械式時計ブーム」
2006/04/07 「やっと見つけた!」
2006/04/05 「困った・・・」
2006/03/28 「モーリス・ラクロアの新作」
2006/03/27 「世紀の駄作?パテック・フィリップ・5960」
2005/11/05 「ピラーホィール式クロノグラフはそんなに偉いのか?」
2005/10/30 「セイコー・スピリット・メカニカル」
2005/10/29 「日本版クロノス(垂直クラッチ)」
2005/07/16 「新作批評標語」
2005/07/09 「バーゼル&SIHH2005:ベストウォッチ(決定版)」
2005/04/19 「愛すべき20世紀末の時計たち」
2005/04/15 「旧LMHよ,どこへ行く?」
2005/04/14 「バーゼル&SIHH2005:ベストウォッチ(暫定版)」
2005/01/29 「最近気になる現行時計について」
2005/01/08 「シースルーバックという足枷,あるいは,歯止め」
2004/12/19 「この一年を振り返って」
2004/12/12 「内なるものから外なるものへ」
2004/12/07 「時計雑誌の良心はどこに?−フランク・ミューラー騒動を通して見えたこと」
2004/11/17 「魅惑のセンターセコンド・ムーブメント(2)」
2004/11/10 「魅惑のセンターセコンド・ムーブメント(1)」
2004/10/25 「5振動センターセコンドに酔う」
2004/09/23 「パテック・フィリップ:90年代のモダニズムと今世紀の堕落」
2004/09/13 「フレデリック・コンスタントの大躍進」
2004/08/29 「ユーロ・パッションへもの申す」
2004/08/22 「舵取りのいない旧LMH」
2004/08/01 「欲しい時計...」
2004/07/04 「入手順に並べてみました」
2004/07/01 「ちょっと前の時計雑誌」
2004/06/18 「記念撮影」
2004/06/04 「こんな時計が欲しい!」
2004/05/14 「私の時計の価格観」
2004/05/05 「雑談」
2004/05/01 「おもちゃ時計を買うくらいなら・・・」
2004/04/25 「ムーブメントブック」
2004/02/21 「文字盤と機能」
2004/02/07 「長い針・短い針」
2004/01/22 「スモールセコンドの位置とドクターズウォッチ」
HPの更新がすっかり滞ってしまいました(^^;;;)...理由は「webChronos」に常駐しているからです(^^;;;).実は,あちらでは公開したけどこちらではまだ公開していない時計が幾つかあります.4月はこちらのHPもぼちぼち更新しようと思っています(^^).
さて,今年の第一弾は,待ちに待っていた,40歳記念時計のヘンチェルの画像が遂に届いた,という個人的ビックニュースからです.
一番拘った部分は,こちらにも書いたように,針の形状です.ヘンチェルの文字盤に似合っていて,しかも,レギュラーのリーフ針とは異なる形状,ということで選んだ形状です.一応,金色と注文していたのですが,青色でした(^^;;;).でも,こちらでも十分魅力的,というか,こちらの方が魅力的です(^^)!秒針も,尻尾が楕円のものを装着してもらいました.
文字盤は,当初はレギュラーの文字盤で6の欠け字を除いてスモールセコンドダイアルを大きくするように注文していました.ところが,日本鶏友会に紹介された12が赤のシャンパンゴールド文字盤がこの満たす上,スモセコインデックスもこちらが好みだったので確認したところ,シルバーならば+500ユーロで変更可能,ということだったので,そちらに変更してもらいました.ですので,文字盤も外端がカーブしていて,風防もドーム状になっているはずです.
ムーブメントは5分割ブリッジで15石のAS1130です.+500ユーロでスワンネックを追加しました.本当は17石だと万々歳だったのですが,このタイプのAS1130の在庫がわずかだということを聞いて注文したので,これはしょうがない,と思っています. その代わり?チラネジ付きテンワとブルースチールヒゲゼンマイを選びました. ムーブメントは,ケースに合わせて金メッキ仕上にしました.
エングレービングは「40. Geburtstag (= 40th Anniversary)」,「Deutsche
Handarbeit (= Handmade in Germany)」,そして誕生日の記念である「1967
11.14.-2007 11.14.」,さらに(これは頼んでいないのですけど)「CUSTOM MADE
FOR HIRATA」と名前まで入っていました(^^;;;).エングレービングについては色々不備もあったのですが,今となっては,これでよいかな?と思っています(^^).
いやぁ,画像を見ているだけで惚れ惚れします(^^).今から到着が本当に楽しみです(^^).
針の画像が来,文字盤のサンプルもあるので,それでは,組み立ててみましょう(^^).
針の画像を切り抜いて文字盤にくっ付けただけですが,こんな顔付きになる予定(^^;;;)...まぁ,針は仕上げ前ですから,もう少しシャキっとしているでしょうけど...
ヘンチェルから,ようやく針の画像が送付されてきました(^^).一応,当初の予定の納期は10月から11月だったのですが(私の誕生日が11月14日なので,それに合わせて),どうも間に合いそうにないとのことです.
通常のヘンチェルの針はリーフ針なのですが,見ての通り,私が選んだ針は形が違います.オールド・オメガの懐中時計によく採用されている針の形状です.実は,注文当初はこの形状の針をヘンチェルさんは持っておらず,でも,注文から納期まで時間があるので探します,とのことでした.それが運よく見つかった次第です.
文字盤も注文しているのですが,基本デザインは下のものと同じです(違いはスモセコダイアルのインデックスくらい).ですので,パッと見た目はヘンチェルのH1と大差がありません.最も異なる顔付きがこの針になります.
見つかった針は金色ではなかったので,コーティングをしてもらいました.この後,磨いて仕上げるそうです.うーん,今から楽しみです(^^).#ただ,いつ手にできるかが?です(^^;;;)...来年3月くらいかなぁ?
本当に「それはないよ...」と言いたくなる大きなできごとが2つありました.
(1)今から三ヶ月ほど前,オーダーしているヘンチェルから時計の文字盤のサンプルを送付するという連絡がありました.それは封書で届いたのですが,その封書の上に以下の内容の紙が貼り付けてありました.
「大変申し訳ありませんが,大切な郵便物を当局で取り扱い中に誤って破損させてしまいました,誠に申し訳ありませんでした.なにとぞ,ご了承くださいますよう,お願い申し上げます.○○郵便局」
...この紙を見た途端,怒り心頭になりました.ですが,文句の窓口も書かれておらず,仮に文句を言っても弁償してくれるはずはなく,泣き寝入りです.郵便局は許せん!
で,気を取り直して封書を開けてみると,袋に入った文字盤が厚紙に貼り付けられているだけ?!うーん,これは送ったヘンチェルの方も鷹揚というか何も考えていないと言うか...もう少し考えて送って欲しかったです.ちなみに,これがそのときに送付された文字盤です.
6が青で消されているのは,そのように頼んでいたからです.本当はインダイアルのインデックスなど他にも変更箇所があるのですが,今回の送付は,文字盤のカーブ具合を確認するためのものでした.しかし郵便局の暴挙のせいで,肝心のカーブ具合は,想像するしかありませんでした(ToT)...
ちなみに,最近のヘンチェルはメールの返事が非常に遅い!時計の仕様に関する最終確認のメールが来たので,いろいろな箇所の修正の返事を書いたら,裏蓋側のエングレービングについては,「エングレービングは既にできてしまったので,変更前のものになってしまいました」との返事のメールが...何のための最終確認?とも思ったのですが,これはエングレービングはサービスということもあり納得することにしました.
しかし,このようなレスポンスが非常に悪い(1ヶ月に1度しかメールが来ない!)状態で,文字盤が注文通りにいかないときには,文字盤は別料金を払っていることもあり,主張を譲る気はさらさらありません.#書いていて腹立たしくなってきました(^^;;;).
(2)手持ちのオリエント・スター・ミレニアムの2年後無料点検の案内が6月初旬に来ました.有効期限は2ヶ月(要するに2ヶ月以内に時計を送る必要がある)で点検所用期間は1ヶ月.この時計は夏の主要時計なので,最初に出して残りの夏の期間に使うか,8月まで使った後出すか,の選択肢があり,とりあえず最初の考えで,6月末に時計を出しました.そして8月17日に点検終了の案内と共に,以下の連絡がありました.
「時計をお送りいただいた際に入れていただいていた化粧箱ですが,こちらの不手際により紛失してしまいました.誠に申し訳ございません.代替の化粧箱にて送付させていただきますので,何とぞご了承くださいますようお願い申し上げます.」
うーん,管理が甘い!本当であれば許されることではありません.ですが,今回はオリエントの紙箱で送付したので,それほど箱は惜しくなかったので了承し,時計を送付してもらいました.
その後,8月19日に時計が到着しました.箱はロイヤル用の立派なものでしたので,こちらはよしとして...不手際が二点ありました.
一つは,送付した際に付いていなかった傷が風防に付いているではないですか?!もう一つは,点検時に送付した保証書が入っていないではありませんか?!それはないよ...
その旨をその日のうちにオリエントの担当者に連絡したところ,その返事が8月24日になってありました.風防の埃はオリエントの方で確認するとのこと,保証書は化粧箱を紛失した際に一緒に紛失したと思われるので代替保証書を再度発行するとのことで,「お手数ですが再度着払いにて送付ください」とのことでした.で,8月29日にオリエントへ送付しました.
その後,10日以上経っても何の連絡もないので,痺れを切らして9月11日にどうなったのか質問のメールを書きました.次の日に返事があり,保証書は代替による再発行の手続きを行っているとのこと,風防の傷については除去不能なので交換で対応するとのこと.来週中には発送できるとのことでした.というわけで今年の夏や残暑が厳しい9月は,この時計を使うことがほとんどできませんでした(ToT).
今まで,オリエントの無料点検はかなりありがたいものだと思っていましたが,今回実際に無料点検に出してみて思ったことはいろいろとあります.
まず,オリエントは無料点検の案内をする際に,梱包材を送付すべきです.私は通販などで時計を買っていますからクッション材なども手元にありますが,そうでない人の方が圧倒的に多いはずです.そうすれば,今回のような箱の紛失なんてことも起こらないはずです.ちなみに,こうすると今まで無料点検のために時計を送付しなかった人の中でも送付するようになる人が増える可能性がありますので,現在のオリエント無料点検のキャパシティが本当に耐えれるのかは考えなければならないとは思いますが...
次に,本当に2年後でよいのか?ということは思いました.今回の対応を見ていると,どうも流れ作業的に無料点検を進めているという感想を持ちました.しかも,無料点検は90年代末から始めていますが,本当に今のような時計ブームを見越したものではないような気がするのです.ですので,オリエントのキャパシティをオーバーしているのでは?とも想像しています.
それだったら,2年後無料点検ではなく,5年後無料点検でも十分な気がしました.そもそも,オリエントの時計は丈夫なわけですし,私の場合も精度に問題は全くありませんでしたから...ちなみに,私が無料点検に出した理由は,裏のガラス面に傷か埃が入っているので,埃であればそれを除去して欲しいこと,それからワールドタイムリングが10分ほど遅れているのでそれを調整して欲しいこと,の2点でしたから...#結局,傷だったの除去不可,10分の調整も不可ということで,無料点検の意味はなかったのですが...
また,ロイヤル・オリエントができた今,無料点検はロイヤル・オリエントだけでも十分だという気がしました.対象機種を絞った上で,もっと丁寧な対応の方を望みます.
最後に,オリエントはメールの対応が遅すぎる!こちらは大事な時計を送付しているわけですから,受け取ったら即座に連絡すべきです.
とまぁ,こんな感じで,私としては,二度と無料点検に出す気はなくなりました.登録葉書を送らなければ,無料点検の案内も来ませんから,今後対象となる時計を買った際には,その葉書は出さずに取っておこうと思います.今は点検後の時計を待っている状況ですが,これで精度が以前より悪くなるようだと,さらに悪い印象になると思います.
すっかり更新が滞ってしまいました.原因は前にも書いた「webChronos」のせいです(^^;;;).まぁ,そのおかげで,9月1日にF.P.ジュルヌ・ジャポンで開催された「トゥールビヨン・サロン」なるものに参加することができ,戻ってくる際に2日まで開催されていた三越本店のワールドウォッチフェアへも行くことができました.本当に時計三昧の2日間でした(^^).
ワールドウォッチフェアで見た時計の感想は後で書くことにして,今回は,この時に得た貴重な体験から.
トゥールビヨン・サロンでお会いしたある方と意気投合し,2日の昼食を一緒に取ることになりました.その際,待ち合わせ場所を三越のワールドウォッチフェアの会場にしました.ちょっと時間に遅れていくと,その方がランゲのコーナーにいて時計を覗き込んでいます.見ると,その時計は「ダブル・スプリット」ではないですか!!
こんな機会は二度と訪れない,と思い,私も一緒になって覗き込みました.まずは,その余りにも美しいムーブメント...これぞ,人間が作った最も複雑なムーブメントの一つと言わんばかりに輝いています.ゼンマイを巻くと,その巻き味も極上です.
そしてクロノグラフをスタート.スプリットボタンをプッシュすることでスプリット秒針が停止し,しばらくするとスプリット分針が積算分針の影から「ポン!」と現れました(^^)!しかも,この時計はフライバック付きなので,リセットボタンを押すと,一瞬にして針が戻ります.
文字盤はダトグラフと異なり,ビックデイトはありませんが,その代わりにパワーリザーブ計が12時位置にあります.文字盤もうっすらと青みがかった黒文字盤という感じで,その顔付きから凄みが感じられます.
対応してくれたのはドイツ人の方で,何でも日本でのランゲのトップの方だとか...上手な日本語で,いかにランゲが素晴らしい時計を作っているのかを力説していただきました.
印象的だったのは,飛び飛びになっているクロノグラフの受けのコート・ド・ジュネーヴが,あたかも連続しているかのように施されている,と説明されたことです.なるほど,実物を見ても確かにそのようになっています.一方,テンワの下には磨きが入っていなかったのがちょっと気になりましたが,理由があるのでしょう,きっと(^^;;;).#質問し損ねました.
さて,三越のワールドウォッチフェアについてです.これは「webChronos」にも書いたので,ここでは若干趣を変えて書いてみようと思います.
印象に残ったモデルは?と聞かれれば,理想的にはJLCのデュオメトロとブランパンのル・ブラッシュ,現実的にはラドーのゴールデン・ホースとボーム&メルシエのリビエラSです.
JLCのデュオメトロはやはり素晴らしい時計だと思いました.展示の際にはフドロワイヤントが動きっぱなしでしたが,永久秒針とクロノ秒針が同一間隔でセンターで動いている様子は,あたかも2つのセンターセコンドがあるかのようでした(^^).これはこのモデルの特権とは言え,最初は少しぎょっとしました(^^;;;).ムーブメントもさすがはJLC!という感じでした.
一方のブランパンのル・ブラッシュは,写真で見た印象通り,「美麗」という言葉が当てはまる時計でした.特に針の仕上げがよかったです.デザインも私好みですし...こちらは,残念ながらムーブメントを覗くことができませんでした.
ただ,この両者とも,買える・買えないは別にして,径40mmを越えちゃうんですよね...「大きなドレスウォッチというのはありえない」と私は思っていますから,その点がマイナスです.
まぁ,総じて「大きい」「厚い」「高い」のオンパレードでしたね(^^).これが昨今の潮流とは言え,あまりにこればかりだとうんざりです.特にブランパンは,あのデザインが大きいのに似合うとはとても思えないので,「クォーツを作らない」という宣言と同じく「径40mm厚さ10mm以上の時計を作らない」くらいの宣言はして欲しいところです.そもそも,スウォッチ・グループという大グループに属しているブランパンですから,グループ内にデカ厚時計を作らないところがあってもよいと思うのですが...
一方,現実的に手にできる時計という意味では,まずはラドーのゴールデンホースでしょう!これは素晴らしい時計です.そのサイズ,そのデザイン,その価格,どれを取っても他の時計とは比較にならないくらい優れています.この時計に関しては,諸手を挙げてお薦めです.
それから,ボーム&メルシエのリビエラS.リビエラSだけに限らず,他の新作も十分魅力的だったのですが,これはドレス・ダイバーとしてなかなかよい選択肢だと思います.ベゼルがロイヤル・オーク似ではありますが,作りこみ・デザインはさすがにボームと思わせるものがあります(^^).
さて,それ以外のメーカーの時計の○と×を.
オメガ:アワービジョンはムーブメントだけが○.デザイン,価格,サイドシースルーは×.特に針が平板過ぎだし,この内容では高過ぎ.一方,ミュージアム・マリーンは,正直,個人的には○はなし.写真では「おぉ!」と思っていたのですが,実物には全然魅力的を感じず.
ジャケ・ドロー:あのエナメル文字盤は○.価格は×,サイズは特に×.とっととダウンサイジングして欲しい.
ジラール・ペルゴ:ヴィンテージシリーズのクラシックなデザインのものは,時計のできや雰囲気は○.サイズは△(もう少し小さく),価格は×.一方,スポーティなものはすべて×.
ボヴェ:私は大好きなので,デザインとムーブメントは◎.サイズは径38mmの方のみ○,42mmは×.価格は×,というより,これは買えませんよ(^^;;;)...
エベル:ようやく復活の兆しのエベルですが,とにかくサイズが×.ダウンサイジングを望む.それから,ヘキサゴンシリーズは没個性的で×.
モーリス・ラクロア:ル・クロノグラフは文字盤もオモチャっぽく,サイズも大きすぎて×.当然価格も×.マスターピース・レクタンギュラーはマスターピース・FHF29と比較してモダンなデザインになっているけど,そのデザインが△,価格は×.全体的に大き過ぎる時計が多い.残念.
ロンジン:新作のダイバーズ・クロノグラフは派手過ぎて×.作りはよさそうなのですが...デザイン的にも価格的にもあんまり売れなさそう.
さて,サロンではジュルヌの時計を始めとして参加者が持ってこられていた高級時計を,フェアでもダブル・スプリットを始めとする高級高額時計を山のように見ました.1本で私が持っている時計がすべて買えるような時計ばかりでした(^^;;;).
ただ,個々の時計のよさは分かりつつ,それでも「欲しい!」とは正直思えませんでした.仮に私が今の状態で大金持ちになったとして,どの時計を入手したいか,つまり,私の所有欲を満たす時計はどれか,となると,ラドーのゴールデン・ホースとボーム&メルシエのリビエラSダイバー,それからブランパンのル・ブラッシュと大好きなボヴェくらいでしたから...#JLCのデュオメトロは所有欲というよりも知識欲を満たす時計です.
上で書いたダブル・スプリットのときも,私の中でどこか冷めた部分があったことも事実です.例えば,この時計と手持ちのインデックス・モビーレを比較して,機能的には確かにダブル・スプリットの方が圧倒的に上だけど,それがその価格差ほどに上なのか,という問いが頭を離れません.また,今回はセイコー・ローレル・琺瑯文字盤を着けて行ったのですが,これと似た成り立ちのジャケ・ドローとを比較しても,やはりその価格差ほどに差があるのか,という問いが浮かびました.
なぜかと考えて,二点思い当たりました.一つは,このHPに挙げてあるように,私は時計をかなり集めていて,自分の中で時計を集める際の価値観が強固に確立されています.それは,貧乏臭いと言われようが「モノに対して価格がどれだけ適正か?」ということに尽きます.今回見た時計の価格は,私の中ではどれも適正価格とは思えなかったのです.中身に対して,あまりに価格が突出していると感じる時計ばかりでした.
もう一つは,昨今の時計は「あざとい」と感じることです.つまり,高価にすること自体が目的化していて,しかも,それを正当化することで市場が形成されていると感じているのです.一方で,価格を抑える努力を,価格を見ずに「手抜き」と頭から決め付けている,とも感じます.これは,例えば,機能的には何ら寄与しない磨きをありがたがり,見えないところまで磨かれていることが高級の証,見えるところしか磨かれていないのは手抜き,という論調が通っていることからも分かります.
昨年からの自社製自動巻クロノグラフムーブメントの隆盛も,各社とも技術的なチャレンジをしていると見せつつ,実は「本当にその機能が高級なのか?」ということが抜けています.誤解がないように言えば,自動巻クロノグラフはあくまで実用品なのです.これは,高級メーカーのラインナップの中で,最も高価なクロノグラフがほとんど手巻であることから明らかですし,三針でも高級なのは自動巻ではなく,故障リスクが少ない手巻であることからも明らかです.つまり,各メーカーが作っている自社製自動巻クロノグラフムーブメントは,高級ではなく高額な実用品を作っているのに過ぎないのです.
ちなみに,なぜ今自動巻クロノグラフなのか,ということを考えると,穿った見方をすれば,どうも中国製ムーブメントの影響ではないだろうか,とも感じています.中国製が出た後では,トゥールビヨンの高級の証はかなり失墜しました.手巻クロノグラフもそのようになる可能性があります.だから,差別化のために,中国では作ることができない「自動巻」クロノグラフの新ムーブメントがこれほど発表されているのでは,とも思っています.
さて,磨きや自社製自動巻クロノグラフは,「高級化を目指した時計作り」ではなく,「高価格化の言い訳としての時計作り」と,どうしても私は感じてしまうのです.しかも,これらの時計が「ミュージアム・ピース」としてではなく,量産する時計・売られる時計として作られています.つまり,高級と名乗る割りには,あまりに生産数が多いと感じるのです.それが,上で高額実用品と書いた所以です.
ですので,私は今の高級高額時計には魅力をほとんど感じないですし,そのような今の時計業界そのものの在り方にもかなり懐疑的です.
最近,クロノス日本版が開設した「webChronos」に常駐しています(^^;;;).そこで,ブログなんか書いています.
こちらのHPとの棲み分けをどのようにするか迷ったのですが,こちらで昔書いたメーカーについての記事の更新版やこの日記に書くようなことでマイルドなものをあちらに書くことにしました.こちらの日記は,もう少し過激なことも書くと思いますし,何より手持ちの時計について書くことになると思います.なお,画像,特に,持っている時計の画像は,基本的にはあちらでは披露せず,これからもこちらで披露するつもりです.
ただ,クロノスの読者層と私の嗜好ははっきり言ってかなり離れていますので,正直,孤軍奮闘中,という感じですが(^^;;;)...もしあちらで見かけたら,声を掛けてください.(HNは同じです.)
で,近況ですが,私は相変わらず,ウォッチ・ピープルの手巻はお気に入りです.これに取り付けるブレスを考えて,こちらに行き着きました(^^).これは大成功だったと自負しています(^^).本体3万円に対してブレスが2万円と,不経済この上はありませんでしたが,まぁ,これはしょうがないでしょう(^^;;;)...
2007年6月8日「タグ・ホイヤーとボーム&メルシエは良心的?!」
とりあえず,新作情報を収集するために,ウォッチ・ナビとクロノス日本語版を読みました.それによって下の情報も若干修正しています.やはり,時計の価格は高額になるばかり...本当に唖然とするほど高額で,100万円以下で魅力的な時計を探すのが一苦労という感じです.
個人的には,それでも10-20万円前後の価格帯であれば,私が大好きなエポス,オリス,レビュー・トーメン,オーガスト・レイモンドといったスイス勢やストーヴァ,アルキメデ,アリスト,リメスなどのドイツ勢,それに我が日本のセイコーやオリエントなど,まだまだ魅力的な時計はあると思います.ただ,以前はその上の価格帯に位置した,IWCやJLCやゼニスはご存知の通り高価格化街道まっしぐらですし,さすがのオメガも少し値上がり気味です.そんな中で,タグ・ホイヤーとボーム&メルシエは,この価格帯で,デザイン・中身とともに素晴らしい時計になっていると感じました!
まずはタグ・ホイヤーです.正直,今までそれほど興味を引かれていたメーカーでは無く,どちらかと言えばデザイン時計と思って敬遠していました.今年,リンクが一新されましたが,その価格を見てびっくり!自動巻の三針で26-30万円くらい,自動巻クロノグラフで37-40万円くらいです.絶対的には高いですが,この価格の時計は,上に挙げたIWC,JLC,ゼニスなどには存在しません.オメガの価格と同程度といった感じでしょうか?
さらに,今年の白眉は,革新的なクォーツ・クロノグラフのリンク・クロノグラフ・キャリバーSです.これがまた素晴らしい!クォーツだったことから下には加えませんでした(私はクォーツ時計を買っても使わないことが分かっているので,買うことを前提とする場合は,どんなに時計のできがよくても選びません^^;;;)が,できはかなりのものだと思います.通常は三針表示,しかも日付はクロノグラフの積算計をうまく使った針表示ですが,リューズをプッシュすることで1/100秒クロノグラフを呼び出すことができます.バリエーションとして,1/10秒クロノグラフにカウントダウンタイマーを追加したレガッタタイマーを搭載したニュー・アクアレーサー・クロノグラフ・キャリバーS・レガッタもあります.どちらの時計もエレガントなクロノグラフというデザインで,しかも30万円前後という価格でした.
正直,これらのタグ・ホイヤーの時計と,例えば,IWCやJLCの時計って,自社製ムーブメントか汎用ムーブメントか,という以外にどれほど差があるのでしょうか?デザインだけで言えば,タグ・ホイヤーの方が洗練されていると思いますし,ネームバリューも,一般人にはタグ・ホイヤーの方が上でしょう.また,確かにタグ・ホイヤーは自社製ムーブメントは持っていませんが,一方で技術的には今回のキャリバーSだけでなく,1/100秒クロノグラフや革新的なV4なども開発しています.そういうことを知ると,タグ・ホイヤーって,かなり魅力的な時計だと感じます.ただし,オメガと同じくメジャー過ぎる,雑誌などのメディアが煽り過ぎている,という欠点はあるかもしれませんが(^^;;;)...
次いで,ボーム&メルシエです.私はボーム&メルシエのデザインは素晴らしいと思っていますし,時計もかなり魅力的だと感じます.ただし,私には似合わないと思っているので,購入するまでにはなかなか到りませんが(^^;;;)...今年の新作も,リビエラ・S・ダイバーやリビエラ・S・マグナムは,リビエラらしく押し出しは強いけど洗練されたデザインだと思いますし,ハンプトンとクラシマ・エグゼプティブに追加されたウィリアム・ボーム・コレクションも,レトログラード日付・曜日・パワーリザーブ計をうまく配置した,なかなかのデザインだと思います.しかも価格もリシュモンのボトムを受け持つだけあり,50万円前後のものが多いです.この価格はさすがに以前に比べると上がりましたが,デザインが素晴らしいことを考えれば,周りの時計の値上がりほどには値上がり感は無いと思います.
今年の新作の問題は,私にとってはあまりに大きくなり過ぎたことです.ですから下では選びませんでした.ただ,ボーム&メルシエは,昨年当たりからダウンサイジングを進める意図も見受けられましたし,上のリビエラ・S・マグナムも大きいは言っても43mm径です.ですので,むやみに大きくしているわけではないので,このメーカーには今後に期待しています.
さて,タグ・ホイヤーとボーム&メルシエ,その両社の共通点は,「洗練された時計」「都会的な時計」「エレガントな時計」という形容詞が当てはまることだと思います.それに比べれば,ゼニスは派手路線まっしぐら,オメガはよく言えば保守的,悪く言えば野暮ですし,JLCやIWCも洗練には程遠いイメージに感じます.少なくとも,スーツに合わせたとき,これらのメーカーの中では,タグ・ホイヤーやボーム&メルシエの時計が一番相応しいと感じます.
タグ・ホイヤーに関しては,上にも書いた通り雑誌などで煽っていますから,ことさら私如きがいろいろと述べる必要は無いと思います.ただ,今回は本当にその価格に改めて気づいて感心した次第です.ただ,ゼニスが高価格路線なのに対して,タグ・ホイヤーをエレガント・スポーツ路線として価格帯も少し下げているというLVMHの戦略なのかもしれませんが,それもなかなかのものだと感心します(^^).そういう意味では,エレガントということで衝突するエベルをLVMHが売却したのも分かるような気がします.
一方,ボーム&メルシエは,もっと多くの人がそのよさに気づいて欲しいと思います.本当に魅力的な時計を作っていると感じます.現行品を持っていない私が言っても説得力に欠けますが(^^;;;)...
2007年5月28日「バーゼル&SIHH2007:ベストウォッチ(暫定版)」
バーゼル&SIHH2007が終わってから1ヶ月以上経ち,ぼちぼちと雑誌などで新作情報が分かるようになりました.そこで,これまでの情報から私にとって気になった時計を書いていきます.
今年はあまりに時計が高価になり,価格を考えると実際に買える時計はほとんどありませんでした.特に下の区分C)の時計は,例年は実際に購入したいことを念頭に置きながら考えるのですが,今年に関する限り,中身と価格を考えて「実際に買いたい」と思うほど魅力的な時計はほとんどありません.ですので,区分C)だけは順不同にしています.また,サイズも相変わらず大きいままなので,40mm径オーバーの時計に魅力を感じない私としては,はやくダウンサイジングに向って欲しいと思いました.
A) 工芸品(1000万円オーバー & 少量生産)
(1) マルク・ブログシッター/コンスタント・フォース(Ref.2166)
今年,突如としてデビューした(と思われる),マルク・ブログシッター(Marc
Brogsitter).詳細は不明ですが,クロノス日本語版によると,どうもドイツの時計店の名称のようです.径17mm以上の大振りのテンプを備えた角型コンスタントフォースと角型トゥールビヨンという2種類のムーブメントを,RGケースもしくはWG(もしくはプラチナ)ケースに入れた,都合4種類のモデルを発表しました.コンスタントフォース+RGケースがRef.2166に当たります.往年のレクタンギュラー・トゥールビヨンを髣髴とさせるこの時計には正直参りました(^^).なお,こちらにHPがあります(ただし,現時点ではほとんど情報はありませんが...).
(2) ヴァシュロン・コンスタンタン/メティエダール「マスク」
いやぁ,私は大好きなんですよ,ヴァシュロンの非三針時計(^^).やはり,この手の時計はヴァシュロンの独断場と思います.しかも,文字盤の真ん中に立体的なマスクのオブジェを入れるなんて,ぶっ飛んでいます.こんな時計は,他のメーカーではまずお目にかかることはできないでしょう(^^).これも,一昨年のメティエダールで非三針で四隅で時刻表示ができるムーブメントを開発したので,その利点を最大限に生かしたものだと感じました.4本セットで5460万円と,価格もぶっ飛んでいました(^^;;;).
(3) カリ・フォウティライネン/オブザーバトリー
NOSのプゾー製クロノメーターを搭載した三針時計.ムーブメントもしっかり仕上げられていますし,文字盤は少しモダンな趣ですが,個人的には好みです.ただ,この時計,フィリップ・デュフォーのシンプリシティよりも高価で,何と700万円!うーん,という感じです...ただ,このメーカーにも代理店が付いたようです.昨年発表されたクロノグラフ「マスターピース25C・クロノグラフ」は予定価格1500万円とのこと...
(4) ヴァーネイ・ハルター/クラシック・ジャンヴィエール
イクエーション機能を持つヴァーネイ・ハルターのクラシック・ジャンヴィエール.このケースの三針はクラシックとして既に販売されていますが,何よりもこのケースには三針よりもこのような複雑機能の方が良く似合うと思います.表はハルターらしい文字盤にイクエーションの針がセットされ,裏には月齢と季節を表す針がインデックスと共にセットされています.
B) 高額品(100万円オーバー)
(1) ジャガー・ルクルト/デュオメトレ・クロノグラフ
今年の新作の中で,最も機能的に面白いと感じた時計です.また,近年のJLCの中でも屈指の傑作だと感じました.センターに二本の針がありますが,金色の針が永久秒針,ブルースチールの針がクロノグラフ針,と,通常のクロノグラフとは異なり永久秒針とクロノグラフ針が同軸になっているところに驚きました.径42mmと少し大振りなところが残念ですが,時計とクロノグラフで香箱を別々に備えた,いわゆる「ダブルクロノグラフ」で,それぞれの香箱にパワーリザーブ計を備えています.また,クロノグラフは1/6秒が計測できるフドロワイヤント式です.ムーブメントも美しいのですが,私は何よりそのダイアルレイアウトが秀逸だと感じました.
(2) パテック・フィリップ/クロノメトロ・ゴンドーロ(Ref. 5098)
昔のクロノメトロ・ゴンドーロの復刻版です.ムーブメントのCal.25-21RECは,ラウンドのCal.215の地板と受けを縦長に伸ばしただけだと感じましたが,ギョーシェ文字盤といいケース形状といい,なかなか魅力的だと思います.それに,例えCal.215の使い回しだとしても,トノー型のケースに合うようにムーブメントを改良してきたところには好感を持ちました.
(3) ブランパン/ル・ブラッシュ・8デイズ
正直,サイズを40mm以内にしてくれれば,言うことはなかったのですが...新しい8日巻きムーブメントのCal.13ROを搭載していて,これもかなり見せることを意識したと思えるムーブメントで,実際に画像を見るとなかなかそそられます.でも,この時計の一番の魅力は,本当に「美麗」という言葉が相応しいところだと感じます.
C) 通常品(100万円以下)
ショパール/L.U.C・マークIII
今まで貴金属ケースを纏ったドレスウォッチかSSケースを纏ったスポーツウォッチにしか搭載されなかったL.U.Cムーブメントが,ようやくSSケースのドレスウォッチとして登場しました.予定価格は68万円.正直,この価格は貴金属ケースを選ぶか微妙な線かもしれませんが,個人的には歓迎したいと思います.文字盤も昨年のピンストライプを引き継ぎつつスモールセコンドと日付をレイアウトしているので,間延びしている感じはかなり薄れているように感じました.このデザインもなかなか好みです.
ユニバーサル・ジュネーヴ/マイクローター・UG101
こちらも,昨年金無垢ケースで出ていたマイクローターのSSケース版です.55万円弱という価格でマイクロローターのムーブメントが手に入るということに敬意を表して選びました.ただ,この時計,金無垢は実物を見たことがありますが,巨大なんですよね...ですから,せめて40mm径は切って欲しいのですが...実際,このケースサイズのせいで,日付も内寄りになってバランスが悪いですし...
エポス/3383
エポスの新作の中で最も魅力的だったのが,縦型ビックデイトを搭載した3383です.ETA/ユニタス6497ベースで,リューズを12時位置にし,ラグの形状が少し凝っています.スモセコが3時位置,縦型ビックデイトが9時位置に配置される文字盤レイアウトもなかなか興味深いものです.予定価格も16.8万円と今までのエポスの中では高額になってしまいましたが,他のメーカーがあまりに値上げしている現状では,手頃にも感じました.
ヴァルカン/ゴールデン・ハート
正直,デザインはそれほど好きではありません.ですが,史上初のスケルトン・クリケットを作ったことに敬意を表したいと思います.しかも,40万円弱とその価格も今となってはかなり良心的だと感じました.
ロンジン/レジェンドダイバー
過去の復刻版ですが,このデザインはなかなか魅力的だと感じました.サイズももともと大きめのダイバーズだったようなので,そうであれば42mm径も許せます(^^).価格も24万円強とこのデザインであれば納得できる価格だと思います.
ジラール・ペルゴ/リシュヴィル・デイ&ナイト
24時間リングが回転することで時を表示する変形レギュレーター.9時位置に永久秒針,5時位置にパワーリザーブ計がレイアウトされています.サイズもそれほど大きくないですし,なかなか面白い時計だと思いました.そもそもジラール・ペルゴはこの手の小振りなドレス系ウォッチのデザインは秀逸だと思うので,数多あるデカ厚時計を追従するのではなく,このような小振りな時計に一刻も早く回帰して欲しいと思います.
ペルレ/ニュー・ビック・セントラル・ルナフェイズ
一昨年当たりから「ペルレらしさ」がなくなっていたペルレですが,そのようなペルレという看板の曖昧さを除けば,時計としては魅力的だと感じました.特にセンターに鎮座しているムーンフェイズがなかなか秀逸だと思います.ただ,60万円弱という価格は少し強気すぎる気もしますが...
他にも気になった時計はあります.主に悪い意味でですが...
オメガ/デビル・アワービジョン
オメガ自社製のムーブメントCal.8500を搭載した新作時計です.ですが,正直デザインが魅力を感じません.アワービジョンは予定価格67万円ということですが,今後はCal.8500は量産するということなので,量産効果による価格の低下が期待できそうです.実際に雑誌のインタビューで,トップの方もそのように仰っていましたし...
ハインリッヒ・モーザー/モナード
モーザーの新作モナードは,IWCのCal.89を髣髴とさせるインダイレクト・センターセコンド・ムーブメントを搭載した時計です.文字盤のファニー感は相変わらずですが,でもなかなか美しい時計だと思います.ただ,日本代理店がようやくついたのですが,その価格が予想していたとは言え,少し残念でした.三針のマユで150万円弱,モナードで197万円と,並行輸入時の価格から考えるとかなり高価になりました...
セイコー/スプリング・ドライブ・クロノグラフ
今年のバーゼルでは,セイコーからスプリング・ドライブ(SD)のクロノグラフが発表されました.グランド・セイコー,ガランテ,それにインターナショナルという三種類もモデルです.GSはあのプッシャーがあまりに巨大で不恰好だと思いました.一方で,デザイン的には,アバンギャルドなガランテにはSDクロノグラフという機能は似合っている気はします.ただ,SDクロノグラフというモノ自体,「機械式クロノグラフに成りたがっているクロノグラフ」という印象を拭い去ることができません.デビュー時のキネティック・クロノグラフが,今までのクロノグラフの概念を覆す独立多眼式クロノグラフとして発表されたことは雲泥の差に感じました.
モーリス・ラクロア/マスターピース・レ・クロノグラフ
昨年発表された自社製クロノグラフムーブメントCal.ML106を搭載したレ・クロノグラフのSSケース版.ですが,ムーブメントをPVD加工したり針を円盤状にして遊んだりと,金無垢との差別化に躍起になっているのか,SSケースのデザインにはそれほど魅力を感じませんでした.しかも予定価格157.5万円...100万円オーバーは予想していたとは言え,あまりに高価なのでは?と思いました.また,モーリス・ラクロアは今年からスローガンを「Tomorrow's
Classic」から「Manufacture Horlogere Suisse」に変更して,マニュファクチュールを前面に押し出してきました.もう,私が好きだった2000年頃のエタブリスールの雄としてのモーリス・ラクロアとは別会社だと思った方がよさそうです(TT)...
IWC/ダ・ヴィンチ・クロノグラフ
IWCのダ・ヴィンチがトノー型ケースを纏ってリニューアルしました.自社製ムーブメントを搭載して,6時位置に永久秒針,12時位置に同軸の分時積算計というレイアウト自身は悪くないと思いますが,その予定価格が何と154万円!上のモーリス・ラクロアのクロノグラフもそうですが,本当に強気な価格だと思います.150万円オーバーとなると,ロレックスのデイトナやオメガのコーアクシャル・クロノグラフと比較してもかなり高額ですし,オーデマ・ピゲのロイヤル・オーク・クロノグラフやヴァシュロン・コンスタンタンのロイヤル・イーグル・クロノグラフといった三大メーカーのスポーツクロノグラフとそれほど遜色が無い価格です.価格を上げることでメーカーの価値を上げようとしていることは分かるのですが,この価格はいくらなんでも短絡的過ぎるのでは?という思いを強くしました.
クロノスイス/インペラトール&インペリアル
デジターのケース形状を利用したメンズのインペラトールとレディースのインペリアル.時計の出来はともかく,予定価格が金無垢で147万円と126万円とは驚きました.一昨年のNOSムーブを搭載した魅力的なデジターよりも高額になるとは(TT)...ちなみに,SSケースも62万円強(インペラトール)!と,レギュレーター,デルフィス,オレア当たりと比べると格段に高価でした...
昨年・一昨年と同じく,やはり12-3月は職業柄,業務が非常に忙しく,更新が全くできませんでした(^^;;;)...おそらくこの傾向は今後も続くと思われます.これ以外の期間では,ぼちぼちと更新していこうと思っています.
今後の更新ですが,ここに書いた4つの時計のうち,前回までで3つまでUPしました.順番から言えば残りの1つをUPすることでしょうが,その後,少し時計を入手したので,おそらく若干順番が変わります.
ただ,今もまだ忙しいので,新しい時計のUPはおろか,昨年のように新作情報についてあれこれと書く暇がありません(^^;;;).ですので,一言だけ.
最近の時計は高価格化・デカ厚化・デコラティブ化がかなり進んだような気がします.まぁ,時計のデカ厚化に伴って文字盤が大きくなり,既存のインデックスや針では文字盤が間延びするので,それを防ぐためのインデックスや針の巨大化が原因だと思います.それでも,ロレックスやオメガやオリスのように,サイズ違いのモデルを用意してくれればまだ良いのですが...(と言いつつ,最近はオリスもサイズ違いをあんまり準備しなくなりました).
どこか,ブランパンの「私たちはクォーツ時計を作りません!」と同じような感じで,「私たちは,径40mm以上の時計を作りません!」と宣言してくれれば痛快なんですけど(^^)...
それから,高価格化は,円安も原因の一つかもしれませんが,どのメーカーも規模・生産量の拡大路線を突き進んでいるのが原因のような気もします.今は全世界的に見ても機械式時計ブームのようですから,「時計が売れるうちに売ってしまえ!」ということをどうしても感じてしまいます.ですので,この先も各メーカーがこの傾向を続けていって,時計業界は本当にやっていけるのか一抹の不安は感じます.
2006年11月28日「10年前と比べて時計はどれだけ値上がりしたのか?」
今回は,10年前の時計の価格と現行の時計の価格を比較してみます.ただ,10年前に製造されていて今も製造されている時計というのは種類が少ないので,同じような成り立ちであればその後継と考えています.
まずは,下をご覧ください.これは1995-6年,2000年,および2006年の時計の価格です(書かれていないのは分からなかったものです).なお,特に言及しない限り,SSケース・革ベルトです.
ブライトリング
(1995-6)オールド・ナビタイマー:30万円 ⇒ (2000)32万円 ⇒ (2006)ナビタイマー(SSブレス):59万8500円
(1995-6)クロノマット:29万円 ⇒ (2000)35万円 ⇒ (2006)クロノマット・エボリューション:48万8250円
カルティエ
(2000)タンク・フランセーズ:34万円 ⇒ (2006)46万8000円
クロノスイス
(1995-6)レギュレーター:26万円 ⇒ (2000)30万円 ⇒ (2006)36万7500円
IWC
(1995-6)マークXII:27万円 ⇒ (2000)マークXV:37万円 ⇒ (2006)マークXVI:38万8500円
(1995-6)メカニカル・フリーガー・クロノグラフ:33万円 ⇒ (2000)42万5000円
⇒ (2006)パイロット・ウォッチ・クロノ・オートマチック:47万7500円
(1995-6)ポルトギーゼ・オマージュ(Ref.5441):75万円 ⇒ (2006)ポルトギーゼ・FAジョーンズ:111万3000円
JLC
(1995-6)マスターデイト:40万円(ムーンフェイズ無し) ⇒ (2000)45万円:マスターブラックムーン:50万円
⇒ (2006)マスターカレンダー:92万4000円
(1995-6)マスターコントロール1000:32万5000円 ⇒ (2000)ビッグマスター:37万5000円
⇒ (2006)マスターコントロール:54万6000円
(1995-6)マスターウルトラスリム:27万5000円 ⇒ (2000)39万円 ⇒ (2006)63万円
(1995-6)ビッグ・レベルソ:48万円 ⇒ (2000)45万円 ⇒ (2006)66万1500円
モーリス・ラクロア
(1995-6)ファイブハンズ(GPケース):15万円 ⇒ (2000)19万5000円 ⇒ (2006)30万4500円
(2000)ジュール・エ・ニュイ:27万5000円 ⇒ (2006)38万8500円
オメガ
(1995-6)スピードマスター・プロフェッショナル:22万円 ⇒ (2000)25万円 ⇒
(2006)33万6000円
パテック・フィリップ
(1995-6)カラトラバ(Cal.240)・Ref.5000(YG・革ベルト):158万円 ⇒ (2006)Ref.6000(WG・革ベルト):191万1000円
(1995-6)カラトラバ(Cal.215)・Ref.3796(YG・革ベルト):170万円 ⇒ (2000)Ref.3796(RG・革ベルト):127万円
⇒ (2006)Ref.5196(YG・革ベルト):150万1500円
(1995-6)カラトラバ(Cal.315)・Ref.3802(YG・革ベルト):180万円 ⇒ (2000)Ref.5107(WG・革ベルト):143万円
⇒ (2006)Ref.5127(YG・革ベルト):184万8000円
ロレックス
(1995-6)エクスプローラー(SSケース&ブレス):36万円 ⇒ (2006)43万8900円
(1995-6)サブマリナー(SSケース&ブレス):38万円 ⇒ (2000)39万8000円 ⇒
(2006)43万5000円
(1995-6)サブマリナーデイト(SSケース&ブレス):46万円 ⇒ (2006)51万2400円
(1995-6)シードゥエラー(SSケース&ブレス):52万円 ⇒ (2006)52万5000円
いやぁ,比較的値上げをしていない,と感じていたオメガですら,10年前と比べると10万円ほど値上げされていました.クロノスイスもだいたいこのオメガの基準に当てはまります.
一方,ブライトリングやカルティエは少しこの基準より上で,JLCやモーリス・ラクロアは,ここには挙げなかったゼニス同様,この基準を超えたもの凄い値上げ幅だと感じます.特に2000年から2006年の間の値上げが顕著です.これはJLCの場合は日本法人になったこと,ラクロアの場合は経営が変わったことが原因だと思います.同じ日本法人になったIWCの場合は,普及モデルは比較的値上げを抑えているという印象です.
パテック・フィリップは,一度値下げして値上げしている感じですが,これは代理店が一新時計からパテック・フィリップ・ジャパンに変わったのが2000年頃で,そのころから国際的に同一価格にするようになり,今年はたまたま10年前の価格と同程度の価格になっているということだと思います.
驚いたのは,ロレックスです!ほぼ10年前の価格を維持しています.どうりで最近,ロレックスが手頃な価格だと感じるようになったわけです...値下げしているのではなく,単に周りが値上げしていただけ,ということがよく分かると思います.
今回は,1995-6年の価格は時計図鑑から,それ以外は手持ちの雑誌をひっくり返して価格を調べたのですが,意外と昔の価格を調べるのは難しかったです...
ただ,いくら嗜好品とはいえ,この10年間で価格がこれほど上がったような製品はまずありません.だいたい,工業製品は売れるほど安くなるものです.今の日本の景気を反映しても,これはいくらなんでも,と感じます.まぁ,そういう部分が工業製品ではなく工芸品・ブランド品と位置づけられている時計だからこそなのでしょうけど...
毎回書いていますけど,これだけどんどん時計を値上げして,時計メーカーはやっていけるのでしょうか?ほとんどのメーカーが,高級(高額)メーカーを志向しているところも気になります...
(1) ヘンチェルのH1を4月に注文しました(^^)!
ヘンチェルの存在は以前から知っていて,特に,5分割ブリッジ版のAS1130を搭載したH1はいつかは欲しいなぁ,と思っていました.ただ,正直,私にとってはかなり高価な時計の部類に入るので,ここの最後に書いた通り,かなり長期計画の予定でした.また,途中でいろいろと時計を買ったので,なかなか注文できるまでの貯金ができませんでした(^^;;;)...
ところが,3月にこの5分割ブリッジ版のAS1130の在庫がほとんどない,ということを聞き,居ても立ってもいられなくなりました.そして,来年40歳になることを記念し,ヘンチェルに「支払いが今年末と来年になるけども,今(4月に)注文しても大丈夫でしょうか?」と聞いたところ,快諾していただけたので,注文することを決心しました.40歳の誕生月である来年11月に完成する予定です.
それからは,文字盤の仕上げ,針,ムーブメントの仕上げ,ケース裏の刻印などについて,色々と私好みのオーダーをし,この9月にようやく仕様が固まり,今は文字盤のサンプルを待っている状態です.このオーダーのメールのやり取りが,なかなか難しかった(特に時計用語.日本の言葉とドイツの言葉でずれがあるので...針の形状などを伝えるのも苦労しました)ですが,それでも自分の好み通りの時計を作っていく感覚で,非常に面白かったです(^^).
ただし,オーダーと言っても本当に細かいことばかりです.ですので,パッと見は普通のH1とあんまり変わらない外観です.まぁ,そういう部分が私のこだわりだったりしますけど(^^;;;)...
注文した後で,日本に正規輸入されることになり,9月から代理店である共栄産業が輸入を開始しました.6月の時点で,ヘンチェルから「代理店にサンプルを送ったので,機会があれば見てください」との案内があり,ちょうど東京出張が入ったのを幸いと実物を見に行きました.実物を見たのはこのときが初めてでしたが,実物を見て,「今回のヘンチェルの注文は大正解!」と確信しました.それほどまでに魅力的な時計でした(^^)!
ただ,日本鶏友会によると,ヘンチェルが発注していた文字盤メーカーがスウォッチグループに買収されたらしく,文字盤の製作の速度が遅くなっているようです...うーん,大丈夫かなぁ...
(2) まだHPで紹介していない時計が4本あります.
すべてシースルーバックの時計です.しかも,いろいろと面白いムーブメントを搭載しています.特に,私にしては珍しく,自動巻が3本あります.最近は,自動巻にかなり傾倒していました.ですので,下のタンゴマットもかなり気に入った次第です.一方,手巻の方も,珍しい上,かなりのお気に入りです(^^).
今のHPのカテゴリーでは,これらの時計は,「Antiques 3」と「Others 1」に分類されるのですが,それだと何となく気に入らなかったので,新しくページを作ることにしました.ですので,これらの時計は,何本か時計が集まるまでUPをしませんでした...
これらの時計は,来月から少しずつ紹介していく予定ですので,期待していてください(^^)!
2006年10月27日「ノモスのタンゴマットは素晴らしい!」
先日,東京のお店でノモスの新しい自動巻「タンゴマット」をじっくりと見てきました.もちろん,一番の目的は,ラング&ハイネを興したミルコ・ハイネ氏が開発した,ノモスの新しい自動巻ムーブメント「Cal.ε」です.
手巻のノモスと一緒に置いてあったので,第一印象は「大きい!厚い!」でした.といっても,現行のデカ厚時計たちと比べるのも野暮なくらい小さいですけど,さすがに手巻のノモスと比べるとその大きさが目立ちました.文字盤は,手巻のタンジェントをそのままスケールアップした感じです.スモールセコンドもケース・文字盤のサイズに合わせて大きくなっていました.
さて,タンゴマットをひっくり返してちょっと振ります.すると,その中のローターがものすごいスピードで回転します.これには驚きました.ほんのちょっとの力でもどんどん巻き上げられていくことが見ていて分かりました.これは相当な巻き上げ効率だろうな,と思いました.
Cal.ε の巻き上げ方式は,オーデマ・ピゲのCal.3120やJLCのCal.889にも採用されている,遊星歯車を用いた「スイッチング・ロッカー式」と呼ばれるものです.この巻き上げ方式は,歯車を二つくっ付けたような遊星歯車を用いて,両方向巻上げを実現する仕組みです.今回のCal.ε
は,この遊星歯車をシースルーバックから眺めることができます.ですので,これは凡百の言葉で説明するよりも,実際に見てもらえば一目瞭然だと思います.
しかもこのタンゴマット,これだけのムーブメントを搭載していて定価30万円以下!とコストパフォーマンスも抜群です.その秘密は,手巻のETA7001をベースムーブメントにして部品を共有化しているからだと思います.実際にテンプ・香箱・丸穴車の位置もETA7001と同じで,輪列周りはそのまま流用しているそうです.しかしながら,Cal.ε
を裏から見ても,そんなことは感じさせないくらい改良されています.テンプ受けを始めとした受けの形状は全く異なりますし,当然ローターが付いていて,しかも,Cal.ε
の方が圧倒的に審美性が高い!
しかも,バーゼルでの発表は昨年でしたが,その後,ローターの回転音が大きい,ということで,ローターの重量を落としつつ,回転効率との妥協点を探り,なおかつ一部の厳選された販売店とジャーナリストにサンプルを渡し,半年間の装着テストをしてから問題を洗い出し,ようやくこの10月に販売開始,という念の入れようです.ですので,心待ちにしていた人も多いと思います.でも,そのような方も,きっと待った甲斐があったと思います.何とも素晴らしいムーブメントだと思います.おそらく,50万円以下の現行時計の自動巻ムーブメントの中では,最良のムーブメントだと思います.個人的には,IWCのCal.5000やJLCのCal.975,889あたりよりも好ましく感じます.
ただ,私自身がタンゴマットを買うか,というと少し微妙です.少なくとも,個人的な事情から今すぐは買いません(買えません,と言った方が正しい^^;;;).そして,どうせ待つならば,タンジェントのケースに白のオリオンの文字盤でブルースチール針のモデルが出るまで待とうと思っています.こういうモデルが出ると嬉しいのですが(^^;;;)...最近,手巻ではタンジェント・スポーツ・インデックスという,タンジェントのケースに黒のオリオンの文字盤が出ましたから,このような顔つきのタンゴマットが出ないとも限らない...そうなると,白文字盤も出るかも?!という妄想を膨らませています(^^).
正直,ここまで魅力的なムーブメントだとは思いませんでした.自社製ムーブメント大流行の現在ですが,このCal.ε
は厳密な意味では自社製ムーブメントとは言えないかもしれません.ですが,そんなことは関係なく,素直に「素晴らしいムーブメントだ!」と思いました.しかも,時計は手巻タンジェントと同じテイストですし...やっぱり,手巻ムーブメントも地味に改良してきたノモスの実力はさすがだと思います.
ノモスのタンゴマットは,今年販売になった時計の中でも出色の時計だと思います!
東京出張から帰る日にたまたま時間ができたので,ちょうど三越で開催されていたワールドウォッチフェアに初めて行きました.
まず驚いたのはその規模です!福岡でもフェアはあるにはありますが,それらは従来の時計売り場で行う規模です.東京では,まさかあれほど広大なところで時計メーカーが新作を発表しているとは思いもしませんでした.まずはそのことに圧倒されてしまいました.金曜日の夕方に行ったのですが,それでも人が少なからずいるところは,さすがは東京!とも思いました(^^;;;).商談しているような感じの人までいましたし...
さて,フェアを見た第一印象は,とにかく「時計が大きい!」です.ショーケースに入っている分は大きい方が見栄えがよいとは思いますが,実物を腕にはめることを考えると,とてもじゃないけど着けることができない,というサイズの時計で溢れていました.私は気弱なので,実際に出してもらって腕に乗せるまではしませんでしたが(^^;;;)...また,時計がどれも高い!貧乏人の私には,「うーん,まいった...見るだけで,とても買えません」という感じでした.
それでは,雑感を少々.
新作で最も惹かれた時計は,ボヴェのフルーリエのムーンフェイズ.これはケース形状・文字盤ともに本当に美しかったです.ボヴェは,ミニッツリピーターといい,半円状のジャンピングアワーといい,非常に私好みの時計が多いと感じています.値段はもの凄いですが(^^;;;)...
ブレゲのアラームも初めて見ましたが,これもなかなかのものでした.逆にクラシック・ブレゲ・トラディションは,「無機質」というか「冷たい」という印象を持ちました.製品の意図は素晴らしいと思うのですが,それを現代的に実現するとこうなるのかなぁ,という感じでした.
セイコーのガランテも初めて見ましたが,私にとっては単なるデコラティブウォッチでした...現行のセイコーならば,クレドールのプラチナ製スケルトン・クロノグラフが最も魅力的だと思いました.ただし,こちらはもの凄く高いですけど(^^;;;)...
ショーメのダンディは意外と魅力的でした.これは雑誌などを見ても全く気にならなかったのですが,実物はなかなか素晴らしいと思いました.
下で挙げたショパールのピンストライプも見ましたが,薄く小さい時計を志向することは大賛成ですが,これでも径はまだ大きいと感じます.ムーブメントもそれほど大きくないわけだから,個人的にはもう少しサイズを絞って欲しいところです.
リシャール・ミルも初めて見ました.こちらは思っていた通りのイメージで,私の感覚ではあれは「玩具」です.私はこの時計を買う人の気持ちは未だに理解できません...JLCのレベルソ・スクアドラも笑ってしまいました.レベルソにあんな大きな自動巻ムーブメントを入れるなよ,と思ってしまいました.スクアドラは以前のレベルソへの冒涜とさへ感じました...
オメガのプラネット・オーシャン・クロノグラフは,なかなかかっこよかったです.エベルの時計も,モバードグループに変わった後のやる気を感じました.
冒頭に書いた通り,とにかく時計が大きかったので,パテックのカラトラバ,オーデマのジュール・オーデマ,ランゲの1815が本当に可愛く見えてしまう感じでした.個人的には,現行三針では,この三つがベストかなぁ,という感じです.ランゲ以外は初めて見ましたが,カラトラバの5296はデザインが素晴らしかったです.それにジュール・オーデマもなかなか魅力的ですし...
でも,一番魅力的だったのは,新作ではなく,特別展示されていたオメガのオリンピックに関連したヒストリカルウォッチの数々です(^^;;;).新作よりも,断然こちらの方に惹かれました.中でも,エナメル文字盤のワンプッシュクロノグラフやCal.321以前のムーブメントを搭載したクロノグラフに心惹かれました(^^)!
しかし,会場が広かったことと少々舞い上がっていたことから,一番の目的だった,モーリス・ラクロアを見損ねていることに会場を出た後に気づきました(ToT)...これは今後のお楽しみとしておきます.
Recommended Books に掲載したように,念願だったエボーシュS.A.のカタログを入手しました(^^)!エボーシュS.A.大好きな私にとっては,凡作の時計よりもよほど価値がある宝物です.
そもそも,きっかけは「ムーブメントブック」でした.この本には,エボーシュS.A.が,パーツリストと共に紹介されています.これを見たとき,その元となった情報(カタログ)を何とか入手したいと思いました.そして最初に入手したのが,「Official
Catalogue of Swiss Watch Repair Parts Catalogue」の1948年版と1955年版です.ところが,これらには,自社製ムーブメントの情報は充実していてかなり楽しめる上,エボーシュS.A.の情報もかなり掲載されているのですが,残念ながらパーツリストは載っていませんでした.
次に入手したのが「BESTFIT」の#100と#111です.ところが,こちらはムーブメントの紹介というよりもパーツの互換表なので,パーツリストはほとんど掲載されていませんでした.
そして遂に...念願のエボーシュS.A.のカタログを入手!今回入手したカタログは1976年版だったため,手持ちのムーブメントのパーツリストもかなり掲載されていました.特に,大好きなユニタスの情報がかなり満載だったことが非常に嬉しかったです(^^).
ちなみに,手持ちのムーブメントで掲載されていたものは,ユニタス6300,ユニタス6325(カタログではユニタス6326に該当?),ユニタス6425,AS1727(カタログではAS1726に該当?),ETA2512,ETA2660,ETA2671,ETA2824,ETA2892,FHF371,FEF6680,プゾー7046,それにバルジュー23です.それから,おそらくユニタス6376はカタログのユニタス6326の後継,ユニタス6580は同じくカタログのユニタス6480の後継だと思います.ただし,どちらもクリックがカタログとは異なります.これは想像ですが,ユニタス6376とユニタス6580のクリックはプゾー7046のクリックと似た形状ですから,合理化のために部品を共通化したのかもしれません.
エボーシュS.A.のムーブメントは,この時期,番号が振り直されているらしく,その規則も分かりました.ASは古いものはそのまま(1130から2186まで)で新しいものを5001からの5000番台,FHFはおそらく古いまま(三桁以内),ETAもおそらくそのまま(2412-2982),ユニタスが6300からの6500まで,FEFが6600から7000まで,プゾーが7000から7100まで,バルジューが7720から7770,EBが8000番台,ESAが9000番台,という感じです.それまでは,各社で同じ番号のムーブメントもありましたが,70年代以降は統廃合が進んだこともあり,ムーブメントの番号の重複を除いていたのだと思います.
なお,EBとは Fabrique d'Ebauches Bettlach S.A. のことで,ピンレバー・ムーブメント(Roskopf
movement)を製造していました.また,ESAとは文字通り Ebauches S.A. の略で,エレクトリック・ムーブメントが該当します.
ユニタスの情報以外にも,個人的には,バルジュー7733系の情報が満載だったのもよかったです.というのも,上の「Official Catalogue」は,こちらに掲載したように,クロノグラフだけは表と裏の情報がある上,「Chronograph Wristwatches: To Stop Time」にも巻末にその手の情報は載っていました.さらに,「オンリー・アンティークス」をはじめ各種雑誌にも,古いクロノグラフの情報は意外とあります.ところが,クォーツショック間際にできた7733系は,あまりに安手のためか,あんまり詳しい情報がありませんでした.今回のカタログには,これらがパーツリストと共に掲載されていました.これが個人的には嬉しかったです.
ただ一つ,気になる点が...それは,今回のエボーシュS.A.のカタログに載っているものと,「ムーブメントブック」に載っているパーツリストには,実はほとんど重複がありません(^^;;;)...つまり,後者は今回のカタログよりも古い年次のカタログを元にしていることが推察されます.ということは,次の目標は,1976年以前のカタログ!ということになります(^^).
ただ,手持ちのムーブメントがかなり掲載されていたので,このカタログ自体には非常に満足してます.今回は,知人の手を借りて,eBayから入手しました.ですので,この場を借りてお礼を申し上げます
m(_"_)m.なお,このカタログの中身については,おいおいHPに掲載していこうと思っています.乞うご期待(^^)!#って,誰も期待していないかもしれませんが(^^;;;)...
P.S. ずっと気になっている洋書「Automatic Wristwatches」もそろそろ買わなければ(^^;;;)...
今年の新作では,特にその大きさ,もしくは,そのあまりの高価格から,下のベストウォッチには選ばなかった時計がいくつかあります.なお,価格については個人差があるでしょうが,私の価格観はかなりシビアです.ここでは,それについて書いてみます.
(1) パテック・フィリップ/5130
この時計は,5110と比較してサイズが大きくなりました.これがすべてをダメにしていると思います.5110は個人的には現行パテックで最高の時計だと思っていましたが,5130はそうは思えません.例え針の形が好ましくなったとしても,39.5mm径というサイズがすべてをだめにしていると感じます.この時計単体だとそこまでは感じない(39.5mmは絶対的には大きくはないですし)のですが,小さなサイズ(37mm径)の5110をディスコンにして大きな5130を出した,その点がものすごく私には引っかかっています...
(2) モーリス・ラクロア/マスターピース・レ・クロノグラフ
モーリス・ラクロア自社製の手巻クロノグラフ.ムーブメントであるML106の意匠はかなり魅力的です.ですが,この時計の最大の問題点は,そのサイズだと思います.そもそも専用ムーブメントが36.6mm径!今時,新規ムーブメントとして昔の懐中時計ムーブメントと同サイズのムーブメントを作る神経がよく分かりません(もしかしたら,ETA6498がベースなのかもしれません).したがって,ケース径も45mmと巨大な時計です.価格は250万円...同じく新作のマスターピース・ファイブハンズ5daysは,テクノタイム社製ムーブメントを搭載しているとはいえ,SSケースで43mmと巨大でしかも価格は70万円弱です.さらに,マスターピース・レクタンギュラー・スモールセコンドは,1999年発表のマスターピース・FHF29(当時の定価40万円弱)と似たような意匠でラ・ジュー・ペレ社(旧ジャケ736)の角型ムーブメントを搭載し,何と60万円弱...昔のラクロアは手頃な価格のメーカーでその価格帯は50万円以下でしたが,今のラクロアは,50万円以上の時計を平気で出す,ただの時計メーカーに成り下がってしまいました(ToT)...
(3) ユニバーサル・ジュネーブ/マイクローター
ユニバーサル,新しく製造したマイクロロータームーブメントCal.UG100と共に復活しました.このムーブメントは現代風に8振動で,意匠的にも新造であることが伺えます.マイクローターという昔の名前で復活したこの時計,なぜかサイズが43mmもあります...価格は155万円強...ユニバーサルって,昔は高価なメーカーというよりは,コストパフォーマンスが高いメーカーというイメージだったのですが,一気に高価なメーカーとなって日本に入ってくるようです...
(4) ジラール・ペルゴ/ヴィンテージ1966
この時計はまずはサイズが残念です.38mm径は絶対的には大きくないのですが,日付が内よりになっているところが個人的には惜しい!もともとムーブメントはそれほど大きくないようなので,やはり35mm径くらいで出して欲しかったです.それか,いっそのこと日付を除くか...価格は金無垢で100万円程度...金無垢ケースの自社製ムーブメントとはいえ,三針でこの価格はちょっと高いかなぁ?時計自身は,シンプルなデザインの中にも気品がある時計と感じますから,個人的には魅力的な時計だとは思いますが...あと,同じく今年の新作であるヴィンテージ1945トリプルカレンダーも縦34.5mm横32mmはやっぱり少し大きすぎのような気がします.
(5) ピエール・ドゥ・ロッシ/スプリット・ロック・クロノグラフ
いやぁ,このムーブメントが面白い!です(^^).上方向にETA製の小さな自動巻ムーブメントを置き,下方向にクロノグラフモジュールを配置するというアイディアは素晴らしいと思います.そのせいで,かなり希少な角型クロノグラフムーブメントになっていますし...この時計は,やはりSSケースで100万円オーバーという価格がやっぱり気になります.サイズも結構大きそうですし...あと,デザインが少しモダンよりなので,もう少しクラシックよりにしてくれると個人的にはベストですが...
上は今,パッと思いつく限りで書きましたが,これに該当する時計は,じっくり考えるとまだまだ出てきそうです...今回のバーゼル&SIHHでは,そう思える時計が本当に数多くありました.
それから,メディアでは「シンプルウォッチへの回帰」とよくあります.確かにその萌芽は感じられます.ただし,そこには,径が40mm近いかそれ以上の薄型時計,という,私にとっては何ともバランスが悪い時計が数多くあるように感じます.薄型志向は個人的には大歓迎ですが,それに伴って,やっぱりケースサイズも35mm前後にして欲しいと思います...
2006年7月2日「バーゼル&SIHH2006:ベストウォッチ」
下では,「月に一回の更新を」と言っていたのに,すっかりご無沙汰で申し訳ありませんでしたm(_"_)m...多少言い訳をすると,5月は新作が雑誌で出てからその批評をしようと思っていて更新をサボってしまい,6月は毎週出張で東京,北海道,東京,大阪と渡り歩いていたので,更新がすっかり滞ってしまいました(^^;;;)...この間,ユーロパッションの展示会にも行って,早速新作を見てきました.
さて,昨年同様,今年の「バーゼル&SIHH2006:ベストウォッチ」です.ですが,正直言って,メディアが言うほどには魅力的に感じる時計がなかったです...
A) 工芸品(1000万円オーバー & 少量生産)
(1) ヴォーティライネン/クロノ25
理由は下に書いた通りです.何と,すでにシェルマンから輸入されることが決まったようです.ちなみに,スイスでの価格は14万5千スイスフラン(=約1350万円).
(2) クレドール/ノード・スプリングドライブ・ソヌリ
やはり日本人としては,クレドールが作ったこの時計は誇りだと感じます.詳細はメディアでいろいろと紹介されていますので省略しますが,スケルトン仕様なのにはっとする美しさを纏っているのはさすがだと思います.ちょっと大きすぎるのが難点(43.2mm径)ですが,機能も併せて,これはもう芸術品の域に達しているといってもよいのではないでしょうか?価格は1575万円...なお,今年はセイコーは12振動モデルも出しましたが,こちらには個人的にはあんまり興味はありません.こちらは市販されるらしく,800万円くらいになるようです...
B) 高額品(100万円オーバー)
(1) ラング&ハイネ/キング・アルバート・オブ・サクソニー
ETA6498をベースに製作された,積算計をセンターに持つ手巻クロノグラフ.ベースは例えETA製ムーブメントでも,それとは全くの別物とも言える処理が施されていて,その上に載るクロノグラフ機構もパーツ類はしっかり磨かれていて,ムーブメントを見ているだけでため息が出ます.惜しむらくはそのサイズで,44mm径はベースがETA6498だからしょうがないとは言え,やっぱり大きすぎます...それに価格もかなり高価ですし(ただし,この高価さは,憧れの時計という意味で許容できる範囲ですが)...それでも,素晴らしいムーブメントといい,古典的な文字盤の意匠といい,かなり魅力的な時計だと思います.
(2) フランク・ミューラー/マジック・タイム
時分針は常に12時を指していて,リューズを押すことで現在の時間が分かるという不思議な時計.この時計,正直言って,機能的には大したことはないと想像していますし,その機能の割には高いとは思います.ただ,これは本当にフランクの時間に関する哲学が感じられる時計だと思います.これと似た「クレイジー・アワー」と比較すると面白いと思います.「クレイジー・アワー」はあの針の動きは面白いとは思います(実物を見たいことがないので断言はできませんが...).ただ,それがどうしても一過性に感じます.それに対して,今回の「マジック・タイム」は,パッと見て「?」で,リューズを押して「!」,そしてじっくり考えて「ほう!」という感じです.ですので,久しぶりに(値段に関係なく)フランクの「作品」を見せてもらった,という感じでした.複雑機能てんこもりの「エテルニタス4」よりも,よっぽど感心しました.
(3) ランゲ&ゾーネ/リヒャルト・ランゲ
世間での評判はずいぶん高い時計です.確かに,ランゲが渾身の力を注いで作った,自由振動ヒゲ採用の初の中三針ですから,それもよく分かります.ムーブメントの仕上げも凄そうですし,精度にも注目し,デザインも古典的で...ただ,この時計,41mm径というのがどうにも腑に落ちません.36-38mm径で出してくれれば私の中ではベストの時計になったのですが,すべてはこのサイズが台無しにしています.
(4) カルティエ/CPCP・タンク・アシンメトリック
やっぱりカルティエのデザインはさすがです.デザインだけであればラドーニャ,機能的にはCPCP・ロトンド・ドゥ・カルティエ・デイ&ナイトもなかなかだと思いますが,今回の新作で私が最も魅力的だと感じた時計は,やはり王道のタンク・アシンメトリックです.何より文字盤のデザインとケースデザインがバランスが取れていて素晴らしいですし,以前のアシンメトリックと比べて,中央にも足が出ているラグもなかなかだと思います.
(5) ショパール/ピンストライプ
今,この時代に敢て薄型を志向した時計を作っている,その心意気を評価しました.個人的に,YGの白文字盤デザインは針がインデックスに乗っていないので今一つだと感じますが,インデックスがないWGの紺文字盤はなかなかシックだと思います.できれば,この薄さを保持したまま,シースルーバックであれば言うことはありません.あとはサイズ(39.5mm)も少し絞って欲しいですね.
C) 通常品(100万円以下)
(1) エポス/3378&3379
今年の新作の中で最も私を魅了している時計です(^^).3378はパワーリザーブ・ムーンフェイズ,3379は分針がレトログラードになった変形レギュレーターです.3378は18万6900円,3379は10万5000円の予定です.3378はデザインが抜群です.これほどコストパフォーマンスが高くデザインが優れたムーンフェイズは現行品ではなかなかないのではないでしょうか?3379はその独特の機能が面白いのもそうですが,レトログラードで10万円ちょっとという価格がなにより凄いと思います.どちらも,ムーブメントがETA6498ベースのため,ケース径が41mmありますが,これはこの価格であればしょうがないかなぁ,と思えますし(^^;;;)...なお,エポスはエモーションシリーズの自動巻ムーンフェイズが3191から3353に変更になり,針がすべてブルースチールに代わりました.これも個人的には朗報でした.
(2) ロンジン/ベッレ・アルティ
今年から主にレディース用として加わった「ベッレ・アルティ」.その中に,ロンジンの昔の手巻ムーブメント(L520)を搭載した限定品が出ます.それがなかなか雰囲気がよい時計だと思います.カーベックスタイプの角型で,ケースサイドにも模様が入っているという凝り様です.古典的で落ち着いた顔つきといい,横24.6mm縦49.2mmというサイズもかなり好印象で,価格も28万円強.この時計はなかなか気に入りました.
(3) クロード・メイラン/ラ・プリンセス
バルジュー89を搭載したトリプルカレンダー・ムーンフェイズ.名前から推察できるように,レディース時計で,ケース径は34mm...って,これだと私には十分許容範囲です(^^).バルジュー90を搭載した同じクロード・メイランのトリプルカレンダー・ムーンフェイズがシェル文字盤(径36mm)ということもあり,ラ・プリンセスの文字盤の方が私は好みです.どちらもよい時計なんですけど...
(4) ジャッケ・エトアール/ビディネイター
ジャッケ・エトアール創業10周年を記念して発表される予定の時計です.現在は試作品と思しき時計が公式HPに掲載されています.この時計の特徴は,何といっても,世界初の両方向自動巻ムーブメントである「フェルサ690=ビディネイター42」を搭載していることです.このムーブメントはなかなか面白そうです.文字盤の雰囲気もなかなかよさそうです.ただ,価格が50万円弱とかなり高めなのが少し残念です.
(5) ヴァルカン/ゴールデン・ヴォイス
音ではなく振動で時間を伝える「サイレント・アラーム」を搭載した時計です.ラウンド型のロンドと角型のキャレがあります.キャレはちょっと大きすぎる(横34.9mm縦47.8mm)のが難点ですが,こちらのデザインはなかなかだと思います.ロンドは39mm径ですが,こちらもなかなか好ましい顔つきです.アラーム針をヴァルカンのロゴにしたりと,なかなか凝っていると思います.しかも,価格がロンドで30万円弱,キャレで30万円強と,ヴァルカンにしては意外と?!手頃です.
今回のバーゼル&SIHHで他に気になったメーカーは,ハミルトン,ボーム&メルシエ,それからハインリッヒ・モーザーです.
ハミルトンは,相変わらず魅力的な時計を素晴らしい価格で提供しています.他のメーカーが軒並み値上げしているので,ますますコストパフォーマンス(CP)の高さが際立ってきました.
ボーム&メルシエも相変わらずおしゃれな時計を作っていると思います.そういえば,今年の新作として,ブライトリング(ベントレー・フライングB),ボーム&メルシエ,ペルレからドクターズウォッチ風のジャンピングアワーが発表されました.この中では,やっぱりボーム&メルシエのデザインが一番よいと思います.ところでブライトリングのベントレー・フライングBのSSケース,何と昨年のロレックス・プリンス(金無垢・158万円)よりも高価です.これはかなり強気だと感じます.
ハインリッヒ・モーザーは,単なる三針のマユに興味があります.40mm径というサイズをもう少し絞ってくれれば言うことありませんが,妙に丸みを帯びたデザインは最初はぎょっとしましたが,見ているうちにだんだんと魅力的に感じてきました.現行品では最も気になる時計の一つです(^^).ドイツでは7500ユーロで売られているようです.日本代理店はまだ決まっていませんが,さて日本に入ってくると,いくらになるか,少し興味があります.
しかし,今年もさらに時計が高くなりました(ToT)...ここ数年の時計の値上がりの仕方は半端ではありません.この価格で今後も時計メーカーはやっていけるのか,心配になりました...
まずは以下のグラフをご覧ください.
これは,「BASELWORLD 2006 Swiss Exhibitors' Guide」の10-11ページに紹介されたものをExcelで打ち直したものです.青色が機械式時計,桃色がクォーツ時計の,スイス時計の輸出高の年次推移です.今日(2006年4月15日)現在で,1スイスフラン=91.4円です.
これを見ると,2000年代に入って機械式時計とクォーツ時計の売上が逆転し,クォーツ時計がほぼ横ばいなのに対して,機械式時計の売上がぐんぐん伸びていることが分かると思います.ですので,2000年以降の機械式時計ブームは,日本だけではなく全世界的なものだということが分かると思います.
また,1999年はLVMHがゼニス,エベル,タグ・ホイヤーを買収した年であり,2000年は,リシュモンがLMHグループ(ランゲ&ゾーネ,ジャガー・ルクルト,IWC)を買収した年です.そのころから,明らかにブランドとしての機械式時計の販売が始まったとも言えるかもしれません...
さらにこれは,同じ冊子の14-15ページに紹介されていた2005年の国別輸出高です.上位五カ国のうち,前年比の伸び率は日本(15.7%),アメリカ(14.5%),イタリア(8.4%),フランス(8.1%),香港(7.7%)となっています.したがって,売上高で第3位で前年比伸び率が第1位の日本は,おそらくスイスのメーカーにとってはかなり重要な市場なのだと思います.昨今の国内の時計価格の相次ぐ値上げも,この当たりのことと無関係ではないような気がします...
ちなみに,地域別の割合で見ると,アジアが42.9%で最高です(前年比11.5%増).次いでヨーロッパの30%強,その次がアメリカの20%強です.日本以外にも,中国,台湾,韓国で売上が増加しているとのこと.こちらも今後はスイス時計の重要な市場になると思われます...
まぁ,下世話な言葉で言えば,アジアはスイス時計の「かも」にされている,とも言えますが(^^;;;)...
一昨日は「困った・・・」と書きましたが,やっぱりありました(^^)!もろに私好みの時計が!
それは,Voutilainen!と書いても,分からないと思います.実際私も初耳でした(^^;;;).Kari
Voutilainen というAHCIの候補(というのかなぁ?AHCIのHPにはcandidateとありました)であるフィンランド人の独立時計師です.HPはここです.
今回のバーゼルで発表になった時計は,クロノグラフです.いやぁ,このダイアルレイアウトにまずノックアウトされました(^^).多少デザインはファニーですが,6時位置の時分針,センターはクロノ針,そして,11時位置に永久秒針・3時位置に30分積算計,オフセンターダイアル好きな私はかなり気に入りました.しかもケース径39mm,厚さ12.7mmというサイズは,今のデカ厚ブームの中ではかなりしっくりきます.ティアドロップラグもなかなか泣かせます(^^).
特筆すべきはムーブメントです.Voutilainenが開発した,Calibar 25 という手巻クロノグラフムーブメントを搭載しています.これが本当に古典的な意匠で,キャリングアーム周りの作りはヴィンテージパテックを髣髴とさせる素晴らしいものだと思います.さらに,このムーブメントはテンプ周りだけは異質です.なんと水晶製のテンワで,そのテンワにミーンタイムスクリューのようなものを配置しており,テンプ受けもアームで支えるという斬新なものです.このテンプ周りは,Carbontime社から提供されたもので,この時計がその第一号だとのことです.
モーリス・ラクロアやラング&ハイネの新しいクロノグラフムーブメントもよいですが,このCal.25はサイズ的にも意匠的にもかなり魅力的だと思います.私の中では,今のところ,今年発表された時計のベストウォッチです(^^)!でも,きっと想像もできないくらい高いんだろうなぁ(^^;;;)...
実はこの時計の存在は,いつもメールのやりとりをしているAntonさんから教えてもらいました.Antonさん,どうもありがとうございます
m(_"_)m.
まず,下のラクロアの新キャリバーはどうも新規開発のようです.というのも,クロノス最新号に,アンドレアス・ストレーラ氏が開発したとありました.氏はクロノスイスのクロノスコープも開発した独立時計師です.
現在,バーゼル&SIHH2006が開催されており,速報も色々なところから入っていますが,今のところ,今年の新作で惹かれる時計がありません(^^;;;)...確かにクレドール・スプリングドライブ・ソヌリはかなり魅力的な時計だと思いますが,年産5本ですでに今年の分は完売,しかも価格も1500万円と超絶らしい...ジャッケ・エトアールの10周年記念モデルはBidynator
42(Felsa 410, 415)という最初期(1942年デビュー)の両方向巻上げ自動巻ムーブメントを搭載していて,このムーブメント自身は面白いと思いますが,肝心の時計(ルナマチックCS)は今一つに感じます.これは後から追加モデルがあるかもしれないので,そちらを期待しています.
ジラール・ペルゴやロジェ・デュブイは新キャリバーをいくつかデビューさせたようですが,それもあんまり興味をもてません.まぁ,どちらも私にはかなりの高嶺の花ということもありますが(^^;;;)...また,JLCの四角いレベルソを見ると,「JLCはもうどこか遠くへ行ってしまった・・・」という感じで,JLCに(私が思う)よい時計は作らなくなったんだなぁ,と思いました.
パテックの新作も自動巻クロノグラフ(下参照)以外にもワールドタイマーの新作5130と年次カレンダーの新作5396が出ましたが,5130は何よりその巨大なサイズと針の形状を含めたデザインが今一つ,5396も敢て「窓式日付にムーンフェイズ+24時間計の6時位置インダイアル」というレイアウトがすべてをダメにしている気がします...まぁ,シリコン製のヒゲゼンマイである「スピロマックス」にはちょっと興味があります.
あと,紹介されている時計のほとんどすべてが40mmオーバー...ジンの6100レギュレーターはなかなか美しいと思ったのですが,44mm径というあのサイズが私はだめです(^^;;;)...まぁ,まだバーゼル&SIHHの全貌が分かったわけではないので,あくまでも今のところです.
ところで,セイコーは上に挙げたSDソヌリだけではなく,12振動機械式とGSの3日巻きも発表しています.噂では,4Sの後継ムーブメントである4Lもデビューするらしいですし,海外では,6R系の振動数を上げて指針式デイデイト・パワーリザーブ計を追加した6R20を搭載した時計も出るようです.ただ,セイコーの発表は,セイコーの開発力は感じるのですが,「ほら,我々もやればできるんだよ」というデモンストレーション的なものを少なからず感じてしまいます.それでいて,SD以外のクォーツに関しての技術革新を忘れているような気もします...
セイコーに対して,シチズンはエコドライブの集中化が今年のテーマのようです.パーペチュアルカレンダー付きエコドライブ・ミニッツリピーター,エコドライブのカンパノラ,フルチタンケースのエコドライブ電波時計が発表されています.こちらはまさに正常進化という趣です.
このように,現在は新作時計で興味がある時計がありません.強いてあげれば,ランゲ&ゾーネのRichard
Lange(リヒャルト・ランゲ?)モデルはなかなか魅力的だと思うのですが,できれば40.5mm径を36-38mm径にして欲しかったです...あとはショパールのピンストライプも面白そうです.
現時点で,モーリス・ラクロアの新作として,新しいファイブハンズと手巻クロノグラフ「Le
Chronographe」が発表されています.どちらも妙にモダンに振った文字盤デザインで,しかもそれが成功しているとは言い難く,個人的にはかなり残念でした.また,「Le
Chronographe」は径45mmと巨大な時計です.
新しいファイブハンズはテクノタイム製ムーブメントCal.738TTベースのML120を搭載し,パワーリザーブ120時間となっています.時計のサイズが不明ですが,何となく40mmを越えていそうな気がします...それに価格もかなり高くなりそうな気がします...ただ,テクノタイムのムーブメントを搭載した時計が出てきたことは朗報だと思います.今年のバーゼルではテクノタイム搭載のメーカーが増えるのかもしれません.
一方,「Le Chronographe」には自社製クロノグラフムーブメントのML106が搭載されています.ですが,本当に自社製なのかなぁ?と思い,ラング&マイス本をひっくり返しました.すると,ミネルバ17-29CHとかなり意匠がそっくりです.もちろん,クロノグラフブリッジからピラーへ延びる部品やキャリングアームの造形はミネルバとは異なります.ただ,香箱が裏から見える意匠,ピラーの位置,ピラーの6枚歯など,ミネルバにかなり酷似しています.ですので,おそらくベースはミネルバだと感じました.
ある意味,これだと納得いくのです.というのも,いかにデカ厚ブームとはいえ,45mm径のケースに収まりがよい手巻クロノグラフムーブメントをラクロアが一から新造するとはかなり思いづらいからです.一方,上のミネルバはムーブメント径37mmなので,それだとこのサイズのケースになるのが納得できますし...さて,ミネルバベースということは当たっているか否か?なお,画像はTZもしくは小柳時計店のDiary(3/2,クロノグラフのみ)にあります.
でも,正直,今のラクロアの時計には個人的にはほとんど魅力を感じません.現行で気になっているのは,ジュール・エ・ニュイと日本限定ムーンフェイズくらいかなぁ?ただし,前者は私には少し大きいですし,後者は少し高価だと思いますが...ただ,過去のモデルでは欲しいものはいくつかありますし,決して嫌いではなくむしろ好きなメーカーだったのですが,最近はコストパフォーマンスという言葉やエタブリスールとしての誇りも忘れてしまっているようです.
2006年3月27日「世紀の駄作?パテック・フィリップ・5960」
昨年末から3月まで非常に忙しかったこと,それからサイトの変更があり,これまで更新が延び延びになってしまいました(^^;;;)...そのおかげで,少し時計やネタを仕込む(?!)こともできましたので,今後は月に1度くらいのペースで更新を進めていきたいと思います.
さて,今年最初(だったんですね)の話題は,パテック・フィリップ・5960についてです.かねてから噂があった,パテック・フィリップ自社製の自動巻クロノグラフにアニュアルカレンダーを追加したモデル,その内容は個人的には「!?」でした.まず,何といってもあのデザインがいただけません.時分針に夜光を入れたり,安っぽい青と赤の針を使ったりとパテックらしさが微塵もありません.
自動巻クロノグラフムーブメントは,垂直クラッチ式でした.まぁ,昨今の流行,というより,FP,JLCと高級自動巻クロノグラフは最近は垂直クラッチにすることが多いので,これは時代の潮流かなぁ,とも感じますが,これは審美性が今一つだと思います.まぁ,自動巻ムーブメントの場合,審美性を求めるためには,マイクロローターにするくらいの必要がありますが...
さらに,ムーブメント(時計)の技術的優位性が「クロノグラフ針をセンターセコンドと同じように動かしても耐久性が保証できる」ことらしいのですが...これに価値を見出す人はどれくらいいるのでしょう?個人的には,このようにクロノ秒針が動いている時計を見るとかなりの違和感があります.
また,これは最近知ったのですが,5960はあくまでアニュアルカレンダーと組み込まれているからコンプリケーションと分類されているらしいのです.これは工程の問題で,ムーブメントの組み上げ後一旦分解して再組み上げするものがコンプリケーション以上,そうでないものがプチ・コンプリケーション以下,ということに由来しているそうです.(パテックだったら,どんな時計もすべて再組み上げしているかと思っていました...いや,そうすべきだと思うのですが...)ちなみに,昨年の傑作5959の後,レマニア製の手巻クロノグラフが継続するのかどうか心配でしたが,こちらは継続されるそうです.上の分類だと5959がグランド・コンプリケーション,レマニア手巻クロノグラフがコンプリケーションに当たるそうです.
5960の価格は550万円.これだったら,ランゲの1815クロノグラフやダトグラフの方が,時計としても価格としても魅力的だと思うのですが...
正直なところ,パテックの自動巻クロノグラフは,古典的なクロノグラフ+自動巻,もしくは,マイクロローター+クロノグラフだと思っていただけに,今回の5960は肩透かしを食ったというか,残念でなりません...また,デザインも,古典を外そうとして,外し過ぎたという印象です.
5960はどのような人に購入してもらおうとして作った時計なのでしょう?もしかしたら,「パテック・フィリップ」という銘が入った時計を求める人たち向け?それであれば,敢て価格的にも機能的にも中途半端な時計など出さず,しっかり腰を据えて自動巻クロノグラフを作って欲しかったと思います.
2005年11月5日「ピラーホィール式クロノグラフはそんなに偉いのか?」
まず最初に,私もピラーホィール式クロノグラフは大好きです.一方,カム式クロノグラフも,特にランデロンやレマニア1872あたりは好きです.どちらかと言えば,ピラーかカムかよりも,キャリングアーム式かどうかの方で好みが分かれます.ですので,ランデロン48やランデロン185は,カム式とはいえキャリングアーム式なので造形(見た目)は大好きです.
カム式クロノグラフ,特にランデロンは日本を始め,世界的に評価が低いムーブメントだと思います.実際,アンティークショップなどでも二束三文で(5桁で)売られていますし(これにはヴィーナス188も含まれます)...それでも,その成り立ちを考えれば,そんなに簡単に無視すべきものでもないと思っています.
ここからは,主に歴史的なことを書いていきます.元ネタは,DADA氏のHP「時計猿の小部屋」,それにDADA氏が執筆した,ウォッチ・ビートVol.2からVol.5の「オールドムーブメントの小部屋」です.
1924年 | ヴィーナス社,ランデロン社創業 |
1925年 | ランデロン社,エボーシュS.A.に参加 |
1928年 | ヴィーナス社,エボーシュS.A.に参加 |
1935年 | ヴィーナス140を製造開始 |
1940年 | ヴィーナス150,170を製造開始 |
世界初のカム式クロノグラフであるランデロン47を製造開始 | |
1940年代 | ヴィーナス175,178を製造開始 |
1944年 | バルジュー社がエボーシュS.A.に参加.エボーシュS.A.内の棲み分けにより,高級ムーブメントをバルジュー社とヴィーナス社,普及ムーブメントをヴィーナス社とランデロン社が受け持つ. |
1945年 | ランデロン48を製造開始.ランデロンはピラー式よりもカム式の開発へ. |
1948年 | ヴィーナス188を製造開始 |
1950年代 | ランデロンは電気腕時計用のムーブメント開発へ. |
1960年 | スイス初の電磁テンプ時計ムーブメント,ランデロン4750を開発. |
1960年代中頃 | クロノグラフの需要が急速に落ち込む |
1966年 | ヴィーナス社倒産 |
1970年 | ランデロンはマーランに移り,組織改変と共にEEM(エボーシュ・エレクトロニクス・マーラン)創業. |
1940年に製造開始されたヴィーナス150と比較すると,それまでのランデロンのピラー式クロノグラフは機構が複雑で非常に手間がかかっており,そのため製造コストも割高で,時計の価格もヴィーナス150と比較すると1.5倍近く高価だった.そこで ヴィーナス150のシェア拡大と共にランデロンのピラー式クロノグラフの販売数は急激に減少した.
さらに,1944年のバルジュー社のエボーシュS.A.への参加により,エボーシュS.A.内での棲み分けができ,ランデロンは生産性の高いカム式クロノグラフを開発する必要に迫られた.その結果,1945年にランデロン48が完成した.このランデロン48は,生産性が高いだけでなく,ピラー式の高級クロノグラフと比較しても遜色が無い作りであり,さらに,50,51,53など,派生ムーブメントが次々と開発された.
一方,この時点でヴィーナス社は,高級ムーブメントではバルジュー23や72に負け,普及ムーブメントではランデロンの攻勢に遭い,危機感を募らせていた.それまでのヴィーナス社には,普及ムーブメントとしてはヴィーナス170しかなく,これだけではランデロンには太刀打ちできない.そこで,ランデロンの特許に抵触せず,それでいて製造コストが低いムーブメントを開発に着手し,その結果,1948年,ヴィーナス188を世に送り出した.
ヴィーナス188が世に出てから,ランデロンはさらなるムーブメントの改良に着手した.その結果,プッシャー位置を改良したランデロン新48,新49,148,149などを開発した.
1950年代はヴィーナス188とランデロンの成功により,機械式クロノグラフの春とでもいうべき時代だったのでは,と推察しています.
さて,このような時代背景を踏まえた上で,単にコストがかかっていないから,という理由でカム式クロノグラフを冷遇するのはいかがでしょう?それは,一方で技術の進歩に目をつぶっているということはありませんか?
確かに,カム式クロノグラフは状態が酷いものが多いと感じます.ですが,それは本当にクロノグラフとして実用的に使われていたからであり,実用的には使用頻度がカム式に比べれば低かったであろうピラー式と状態を比較するのは,あまりにも不公平だと感じます.
機械式クロノグラフを実際に手に届く範囲にしたのは,間違いなくカム式クロノグラフだと思います.その状況は実は現在も変わっておらず,ここまで現在のクロノグラフが発展した理由は,間違いなくETA7750のおかげでしょう.
一時計ファンとして,「ピラーが好きだ」ということは全く問題ないと思います.ですが,メディアで公に話をしている評論家がこぞって「ピラー式がよい」という図式はいかがなものでしょう?最近,ラ・ジュー・ペレ社(旧ジャケ社)がETA7750をピラー式に変更したムーブメントを製造しましたが,評論家たちは,あれをどう評価するのでしょう?それから,JLC752やフレデリック・ピゲ,セイコー6S系,フランク・ミューラーのFM3200などは?
ちなみに,私はETA7750はあんまり好みではありませんし,実際に持ってもいません.理由はずばり見た目です.それは,キャリングアームがない上に,手持ちのクロノグラフムーブメントにはある「部品がぎゅっと詰まっている」という稠密性が7750からはほとんど感じられないからです.ですので,上記ムーブメントのうち,JLC752やフレデリック・ピゲやセイコー6S系も好みから外れます.FM3200もそれほど見た目が好みというわけではありません...
さらに,評価の高いJLC752やフレデリック・ピゲですが,見た目という点ではやはり往年のクロノグラフムーブメント(ランデロンやヴィーナス188も含めて)には劣ると思います.垂直クラッチは自動巻のためのスペース効率を高める方法ですので,手巻にするとほとんど無意味ですし,そもそも見た目がもよくないと思います.高級クロノグラフというと,やはり手巻をどうしても意識する私としては,あのムーブメントは今一つの感じです.あれだったら,まだエル・プリメロの方がましです.私自身はエル・プリメロの見た目もあんまり好きではないのですが(^^;;;)...
一方,最近の中国製ヴィーナスについてです.これはおそらくロシア(ソ連)で製造していたヴィーナス150(いわゆるロシアンヴィーナス)が元になっているのでは?と推察しています.これらの時計については,フェイクは論外としても,ムーブメント云々よりも,時計の出来が決定的に悪過ぎると思います.あれだけお金を出すんだったら,少し我慢すれば,アンティークのランデロンやヴィーナス188を搭載した雰囲気たっぷりの時計がいくらでもあります.これらの中国製の時計については,今のところメディアではグレイゾーンのような扱いですが,ムーブメント至上主義を貫くと,あれは絶賛されるものだと思うのですが...
まぁ.いろいろと書きましたが,結論としては...ランデロンも面白いですよ(^^),ということで...特に,インデックス・モビーレは,ランデロンとヴィーナス170の専売特許のようなものですから,ランデロンが好きでないと楽しみが半減します.
私は大好きですね,ランデロン.カム式ですが,キャリングアームやスライディングギアは採用されているおかげで,見た目という点ではバルジュー23やヴィーナス175にも負けておらず,本格的なクロノグラフムーブメントだと思います.カム式クロノグラフは,「ピラー式のコストダウン」というよりも「ピラー式からの技術の進化」と捉えたいです.
単に古典的な造形のクロノグラフムーブメントが大好きなだけなんですけど(^^;;;)...
11月10日に,セイコーのスピリットに,機械式モデルが加わります.現時点で詳細は不明ですが,ケースバリエーションは2種類で全部で8種類のようです.プレスリリースはここにあります.
いやぁ,満を持して,というか,ようやくか,といった感じの,セイコーの低価格帯の機械式時計のリリースです.すでに販売されているブライツの機械式はケース・文字盤デザインが少し派手な上,少しずつ高額にシフトしています.チタンダイバーズも出ていますが,あの時計はどちらかと言えば,逆輸入ダイバーズの延長上です.ですので,本当に90年代のローレル以降,久しぶりのノーブルで低価格なセイコーの機械式時計です.
ムーブメントは7S系を切替車式にして,手巻機能・秒針停止機能を追加した6R15です.見た目の印象は,7S系にカバーを一つ追加した感じです.精度保証はそれほど良くはないので,ポイントはマジックレバーをやめたことでしょうか...私はマジックレバーをこよなく愛しているので,個人的には残念でした.
ただ,おそらくセイコーは,国内向けには,廉価版に6R系,ブライツとクレドールに4S系と8L系,グランドセイコーに9S,というように棲み分けるのでは,という気がしています(これはあくまで私の想像です.念のため).セイコー独特のマジックレバーはグランドセイコーでどうぞ,ということになる気が少ししています.
一方,海外製の時計には,7S系を用いると思います.やはり,巻き上げ効率がよい上に部品点数が少なく耐久性が高い7S系は,クォーツの電池交換もままならないような国々では,必須でしょうから...
画像を見る限り,SCVS013はデザインも良さそうなので,心惹かれています.他のバリエーションも早く見てみたいものです.
久しぶりの更新です(^^;;;)...あまりに忙しかったことと,時計を買っていなかったことから,更新が途絶えていました.11月・12月は更新をがんばる予定です.
さて,10月に日本版クロノスが発刊になりました.個人的にはなかなかよい雑誌だと思いました.ただ,ドイツ版クロノスと同様にファッション系のページは除いて欲しかったですが(^^)...ちなみに,ドイツ版クロノスは,時計の写真と文章(文章が日本の時計雑誌よりも圧倒的に多く,一方で写真は小さめ)だけからなる90ページほどの薄い雑誌です.日本版のスペックテストはドイツ版譲りですが,ちょうどあの分量が続く感じ(ただしドイツ版の写真はあれより少し小さめ)です.
クロノスにはいろんな情報が載っていて重宝しました.オメガのコーアクシャルが7振動!だったことや,パテック・フィリップの5959に搭載されている,Cal.
CH R 27-525 PS の詳細が分かったこと,そして何より「垂直クラッチ」の仕組みが分かったことが収穫でした.
JLCのムーブメント Cal.751 と Cal.752 が採用している垂直クラッチですが,古くはピアース,セイコーが,最近ではFP,ロレックスが採用しています.「旧LMHよ,どこへ行く?」で書いたことは少しニュアンスが間違っていました.
仕組みとしては,文字盤(裏蓋)に対して垂直方向にクロノグラホィールをドライビングホィールと同軸に以下のように配置します.
(裏蓋側)
\/ クロノグラフホィール
> | < レバー
\/ ドライビングホィール
(文字盤側)
このとき,二つのホィールはバネで引き合っていて,それをレバーで離しているのだと思います.そして,クロノグラフをスタートさせると,上のクロノグラフホィールを押さえているレバーをはずすことで
>\/< クロノグラフホィール
\/ ドライビングホィール
と重ねてクロノグラフをスタートします.ストップは逆にレバーでクロノグラフ車を上に押し上げることで重なりをはずす,ということでした.
垂直クラッチのメリットは,場所をとらない点,通常のキャリングアーム式と異なりクロノグラフホィールとドライビングホィールが同じ方向に回転しているため針飛びが少ない点,などがあると思います.逆に,デメリットは,クロノグラフストップ時に常にレバーに力がかかっている点かなぁ,と素人ながらに思いました.この当たりはJLCはうまく解決しているのだと思いますけど...
いやぁ,今回のクロノスの記事で,垂直クラッチの仕組みをようやく理解することができました(^^;;;).時計ビギンのロレックス・デイトナのムーブメントの説明を読み返したのですが,確かにこのように記述されていました.ただ,あれを読んだときにはさっぱり分かりませんでした(^^;;;)...やっぱり,メカニズムの説明の場合には,その説明の仕方が重要だと感じました.
残念ながら,家の傍の本屋では日本版クロノスを扱っていなかったので,定期購読を申し込みました.
お遊びで,ちょっと辛口な批評を書いてみます.一部,「バーゼル&SIHH2005:ベストウォッチ(決定版)」,「旧LMHよ,どこへ行く?」,「バーゼル&SIHH2005:ベストウォッチ(暫定版)」と重複がありますが,御容赦ください.
耐磁時計でなくてすみません
by IWC/インジュニア・ミッドサイズ
IWCのインジュニアは自社製ムーブメントが話題になっていますが,そんなことよりも個人的にはこちらの方が衝撃でした.ATは先代と同じ80,000A/m耐磁ですが,クロノグラフは40,000A/m耐磁,ミッドサイズに至っては耐磁時計ではないとのこと...これで,果たしてインジュニア(英語の
engineer)を名乗ってよいのでしょうか?さらに,IWCのフリーガーラインの耐磁性能は,マーク15とクロノグラフが40,000A/m,ドッペルが80,000A/mだそうです.耐磁時計の代名詞であるインジュニアとドッペルの耐磁性能が同一とは?!このところのIWCは,技術のすべてをムーブメントだけに費やしている気がします.狂気ともいえる技術を機能に費やしてオーシャン2000やダヴィンチやディープワンを作っていた頃を懐かしく思います...
大きくてすみません
by ジャガー・ルクルト/マスター・コンプレッサー・エクストリーム・ワールド・クロノグラフ
46mm径はいくらなんでも大きすぎでしょう.しかも,コンプレッサーお得意のどでかいプッシャーまで付いていますから...JLC自社製のクロノグラフムーブメントであるCal.752を搭載していますが,素人目にはそれほど画期的なムーブメントであるようには見えません.フレデリック・ピゲ譲りの垂直クラッチに見栄えよくコラムホィールを付けただけ,という気がしないでもありません...コンプレッサーに限らず,JLCはマスターも40mm径にアップサイジングしましたし,レベルソもグランドがラインナップの中心になるような勢いです.こんな大きな時計ばかり作っていて,大丈夫なのかなぁ?それと,最近のJLCは,無節操に新しいムーブメントを作り過ぎのような気もします.価格も上昇の一途をたどっていますし...
見づらくてすみません
by ランゲ&ゾーネ/ランゲ1・タイムゾーン
外周部の都市名が文字盤をうるさくしている気がします.この都市名を5時位置のマーカーにあわせることでその都市の時刻が表示できます.ですから,外周部に都市名を見せる必要は全く無く,結局のところ,一目で世界各地の時間が分かるワールドタイマーのように見えて,実はデュアルタイマーです.機械は凝っているようですが,42mm径と巨大な上に,私にはこのデザインが決定的にだめです.ランゲがワールドタイマーを作ることはよいことだと思いますが,本当にこのデザインがベストだったのか...この時計を購入するんだったら,ランゲ1を素直に買った方がずいぶんましなような気がします.
未だに正体不明です
by パテック・フィリップ/5959
搭載ムーブメントは Cal. CH R 27-525 P と呼称するらしく,レマニア2310ベースとか自社製とかいう話があります.例えレマニアベースであったとしても,かなり手が加わっていると思います.ここまで手を加えた世界最薄クロノグラフムーブメントならば,もう立派に自社製ムーブメントと名乗ってもよいのではないでしょうか?デザインは最高ですが価格も最高です(^^;;;)...個人的には,パテックから憧れ・夢の時計が出て,うれしかったです(^^).
変な表示の時計は得意です
by ヴァシュロン・コンスタンタン/メティエダール
ヴァシュロンの新作で私が最も好きな時計です(もちろんとても手なんて出ませんが(^^;;;)...).個人的には,ヴァシュロンは,メティエダールに限らず,メルカトール,サルタレロ,ジャンピングアワー,ラ・グラン・ヴォヤージュのような,三針ではない時計を作らせると抜群にうまいと思っています.
結局ここに行き着きました
by オメガ/シーマスター・プラネット・オーシャン
ダイバーズウォッチをデザインすると,結局このようなデザインになるのかなぁ?と思わせる一本です.アロー針もかっこいいですし,オレンジの色使いはさすがだと思います.個人的には,40mm
or 38mm径をラインナップに加えて欲しいところですが,ダイバーズであれば,このサイズも許せるかなぁ?まだ実物を見たことが無いので,早く実物を見てみたい1本です.
目指せ!マニュファクチュール
by モーリス・ラクロア/マスターピース・ムーンフェイズ・レトログラード
新作のムーンフェイズ・レトログラードは,ダイアルの美麗さもさることながら,ETA/UT
6497 を一体型受けにした上で,ラクロア風の円形コート・ド・ジュネーヴを施すなど,なかなかの時計だと思います.今年はトゥールビヨンまでランナップに加わり,トップも「マニュファクチュールを目指す」とのこと.でもラクロアの売りはエタブリスールでもCPの高い時計を作ることにあったような気が...ちなみに,新作のレギュレーターの解説に「ラクロア初」とありますが,ラクロアは90年代にレギュレーターを製造したことがありますので,正確には「ラクロアのマスターピース初」です.
温度計を載せてみました
by ボール・ウォッチ/エンジニア・ハイドロカーボン・TMT
個人的にはIWCのインジュニアよりもエンジニアらしい時計だと思います.しかも「意味があるの?」と思わせる機械式温度計付き...今回の新作でムーブメント以外の技術で面白かったのはこの温度計です.スペックはエンジニア・マスター譲りの耐衝撃性(5,000G),耐定温性(-40度),耐磁性(12,000A/m)にマイクロガスライトの針とインデックス...この無意味さ・ばかばかしさと紙一重の狂気がとても心地よいと感じます.こういう狂気は以前のIWCの独断場だったのですが,IWCにはもやは見ることができません.
「味」を復刻してみました
by オリス/クロノリス
今年の新作で,価格・作り・デザインの面から私が最も気になっている時計です.積算計も無いクロノグラフであるオリジナルとは機能が異なりますが,オリジナルと同じくオレンジをアクセントに使い,しかも永久秒針は無し,というところは忠実に再現しています(^^;;;)...ケース形状もオリジナルとは異なりますが,70年代チックです.何と言うか,オリジナル・クロノリスの「味」を見事に復刻している感じでしょうか...この時計,交換用SSブレス付きのクロノグラフで20万円を切る価格は,今年の新作では図抜けてコストパフォーマンスが高いと思います.径を40mmで押さえているところも個人的には○でした.
美麗な時計を作ってみました
by ジャッケ・エトアール/ルナマチック,ルナ&エトアール
もともとジャッケ・エトアールが採用しているSUG製のSSケースは,質感が高いと思っていましたが,今までの時計はケースに対して文字盤の質感が落ちる時計が多かったと思います.今回の新作は,文字盤の質感が上がり,とても美麗でした.価格は30万円弱で,正直「高い!」と思ったのですが,現在は他の時計もかなり値上がりしているので,その中では許容範囲かなぁ,という気もします.
実はマニュファクチュールです
by レビュー・トーメン/スペシャリティズ
ヴァルカンに移行したクリケットのムーブメント MSR S23-80 以外にも,ずーっと自社製ムーブメントを作っていたレビュー・トーメン.ところが,長いことそれをメーカーの売りにしたことがなく,したがって90年代までは,ETA製ムーブメントを搭載した時計よりも自社製ムーブメントを搭載した時計の方が安い,という,今となっては信じられない現象が起きていました^^.トップが替わって自社製ムーブメントの価値を再発見したらしく,昨年当たりからそれを積極的に売りにしています(そのせいで多少価格は上昇しました).今年の新作は,ポインターデイト,ムーンフェイズ,パワーリザーブ計付きで,9時位置スモールセコンドのスペシャリティズで,ムーブメントは5.5振動の自社製GT60です.正直もう少し小振りな時計に仕上げて欲しかったですが,なかなかよさそうです.
2005年7月9日「バーゼル&SIHH2005:ベストウォッチ(決定版)」
久しぶりの更新です(^^;;;)...
バーゼル&SIHH2005の新作情報も出揃ったので,今回は私で気になった時計を書いていきたいと思います.こちらと内容が多少重複しますが,決定版と思ってください.(コメントが少ない時計は,重複して選んでいますので,こちらも参考にしてください.)
A) 工芸品(1000万円オーバー & 少量生産)
(1) パテック・フィリップ/5959
古典的な雰囲気といい,史上最薄のスプリットセコンドクロノグラフムーブメントである
Cal. CH R 27-525 PS といい,もうたまりません.夢の時計です.
(2) ヴァシュロン・コンスタンタン/メティエダール
Metiers d'Art で「メティエダール」と発音するそうです.こういう特殊表示時計を作らせるとヴァシュロンは抜群にうまいと思います.
B) 高額品(100万円オーバー)
(1) クロノスイス/デジター・MSA
FEF製Cal.130を搭載した,メカニカルデジタルウォッチ.ただ,今年のSIHHで本家カルティエから復刻版が出たタンク・ア・ギシェと見比べると,やっぱりデザインは本家の方が上かも?
(2) ダービー&シャルデンブラン/アエロディーン・トロフィー
オーロラ製の角型センターセコンドムーブメント Cal.19 (8*11リーニュ)を搭載したアエロディーンです.ギョーシェ文字盤が美しい!
(3) カルティエ/トノーXL・2タイムゾーン
縦51mm,横30mm弱の巨大トノー型ケースに二つのムーブメントを搭載して2タイムゾーンとした時計.この手の時計は色々とありますが,カルティエが作るとさすがにエレガントだと思います.2002年に出た「タンク・ア・ビス・2タイムゾーン」は一つのムーブメントで2タイムゾーンを実現しているので,今回のトノーよりも機能的には上だとは感じますが,デザインに関して言えば,今回のトノーの方が美しいと思います.
(4) IWC/ポルトギーゼ・F.A.ジョーンズ
1930年代に設計された Cal. 9820 の緩急針や受けを改良して搭載した手巻三針時計.正直,文字盤デザインは今一つだと感じます.1990年代のポルトギーゼの方が好みです.一方,ムーブメントは,古いIWCの「ジョーンズ・キャリバー」を思わせる意匠ではあるけれど,そんな背景よりも純粋に面白いと思います.ただ,私はお金があっても,文字盤デザインを理由に購入はしないと思います.
(5) パテック・フィリップ/5296
前回は3712(ノーチラスのプチコンプリ)を選んでいましたが,今ではこちらの5296に惹かれます.インデックスはパテックらしからぬトリプルサークルなので,センターセコンドが見事に似合っています.針もパテックには珍しくブルーで,そのような文字盤と針のバランスが素晴らしいと思います.ムーブメントは
Cal.324S ですが,正直あんまり見栄えが好みのムーブメントではありません.ですが,それを補って余りあるデザインだと思います.現行のパテックのセンターセコンドカラトラバでは随一の時計だと思います.
C) 通常品(100万円以下)
(1) オリス/クロノリス
今年の新作の中で最も私を魅了している時計です(^^).1970年代に発表されたオリス初のクロノグラフであるクロノリスは,積算計・永久秒針無しのカラフルなクロノグラフでした(デュポア・デプラ製ムーブメントを搭載).今回のクロノリスは,オリジナルを現代風にアレンジし,30分積算計を追加したクロノグラフです.いやぁ,このオレンジの使い方が絶妙です.しかも,デザイン的に大きくなりそうなところを径40mmに押さえているところも英断だったと思います.何より,交換用SSブレスと交換用工具を入れたレザーケース付きで20万円を切る価格は,絶大なコストパフォーマンスを誇るオリスの面目躍如です(^^).これ以外のオリスの新作でも,ビッククラウン・コンプリケーションはなかなか魅力的だと思います.
(2) ジャッケ・エトアール/ルナマチック
しばらく迷走が続いていた感があったジャッケ・エトアールが,ようやく現行ムーブメントで魅力的な時計を出すようになりました.うれしい限りです.今年の新作であるルナマチックとルナ&エトアールは,11時位置のムーンフェイズ部の意匠が多少異なるだけの時計です.ルナ&エトアールはムーンフェイズのムーンを隠す部分に12星座をあしらったモデルで,ルナマチックはムーンフェイズが二つ見えるモデルです.ケースの質感は上質で,しかも,リングを基調とした文字盤デザインもクールでかっこいいと思います.30万円弱という価格はちょっと高いかなぁ,という気もしますが,他のメーカーの値上がりぐらいを考えれば,まぁ妥当な範囲という気もします...
(3) オメガ/シーマスター・プラネット・オーシャン
ダイバーズウォッチを突き詰めていくと,このようなデザインに行き着くのかなぁ,と思わせるオメガのプラネット・オーシャン.特にオレンジベゼルモデルは,インデックスにオレンジを使い,ブロードアロー針とスピードマスター・プロフェッショナルと同じラグとあいまってなかなかかっこいいです.2サイズで,小さい方でも42mm径と大きな時計ですが,ダイバーズウォッチの中では屈指の時計になっていると思います.
(4) ジャッケ・エトアール/フィフティイヤーズ・アニバーサリー
クラウス・ヤコブ氏の父,ホルスト・ヤコブ氏が時計師として働き出して50年を記念して作られたモデルです.ムーブメントはAS1133(1123という話も?)ですが,ジャッケ・エトアールにしては珍しく,装飾は一切入っていません.緩急針はスワンネックに換装されています.一方,この時計の最大の売りは,デッドストックの「針」を搭載していることです.代理店の方に聞いたところでは,ユニバーサルの針だとのこと.最大の問題はケースサイズが多少大きくて42mmもある点.ですので,ムーブメントはこじんまりと見えます.あと,50万円弱という価格も,三針時計にしては高価過ぎる気がします...
(5) パネライ/ラジオミール・ベース
二層文字盤に二つの針が付いただけの時計ですが,「これぞパネライ!」というデザインだと思います.ムーブメントの仕上げがコート・ド・ジュネーブに変更になり,その仕上げがシースルーバックから覗くことができます.45mm径は正直大きいとは思いますが,パネライだと大きな時計も許せてしまうので不思議です(^^)...
さて,今回のバーゼル&SIHHで他に気になったメーカーは,ハミルトン,ボーム&メルシエ,ヴァンクリーフ&アーペル,ボヴェです.
ハミルトンは,魅力的な時計を素晴らしい価格で提供しています.他のメーカーが軒並み値上げしているので,そうとうコストパフォーマンス(CP)が高いと思います.CPということであれば,絶対的な価格は2年ほど前と比較すると上昇しているオリス,エポス,ノモスも,周りの価格上昇が凄いため,CPの高さが以前並みに戻った,という印象です.
ボーム&メルシエはもともとデザイン力が素晴らしいメーカーでしたが,今年はそのデザインを古典に振ってきました.今年の新作では,クラシマ・エグゼプティブ・レトロ・クロノグラフやハンプトン・クラシック・スクエア・クロノグラフのデザインは,純粋にかっこいいと思いました.サイズがそこまで大きくなく,価格も30万円台というところも魅力だと思います.
ヴァンクリーフ&アーペルは,ムッシュ・アーペルが素晴らしいデザインだと思います.JLCムーブメントとデザインをうまく融合していると思います.ボヴェのフルリエシリーズも,純粋に美しい時計だと思います.
でも,本当に時計の価格は高くなりました.以前書いた「私の時計の価格観」が通用しなくなっています...これを書いてまだ1年しかたたないのに...
私が時計好きになったのが1998-9年頃です.ですので,この頃雑誌で紹介された時計には特に思い入れが強く,その結果,1990-2000年に発表された以下のような時計を入手してしまいました.カッコ内は入手時期です.
1990-1994年
レビュー・トーメン/GT1885 (2002/10, 2003/4)
フレデリック・コンスタント/パワーリザーブ (1999/4)
セイコー/メカニカル (2003/11)
1995年
オーガスト・レイモンド/エバーグリーン (2002/5)
オーガスト・レイモンド/チャールストン・ドクター (2002/4)
セイコー/ローレル(LJAL601) (2002/8)
セイコー/ローレル(LJAK600) (2004/12)
1997年
オーガスト・レイモンド/イン・ザ・ムード (2002/12)
レビュー・トーメン/クリケット1997エナメル (2002/1)
オリエント/オリエントスター・パワーリザーブ (2002/1)
1998年
モーリス・ラクロア/マスターピース・エナメル (2005/3)
1999年
モーリス・ラクロア/マスターピース・FHF29 (2003/2)
オーガスト・レイモンド/バラード (2002/3)
オリエント/オリエントスター・ロイヤル (2003/8)
2000年
ジャッケ・エトアール/ヴィーナス・インペリアル・アップライト (2001/10)
ジャッケ・エトアール/パルスメーター・クロノグラフ (2003/7)
ジャッケ・エトアール/リスボン・ミディアム (2002/8)
オーガスト・レイモンド/カクテル (2003/4)
これ以外にも,エポスのレギュレーター (2001/11)とドクターズウォッチ (2004/1)は日本に正規輸入が開始されたのは2001年以降ですが,生産自身は90年代末にはされていたようです.
やっぱり,時計好きになって最初期の1999年にデビューした時計には特に強い思い入れがあります.購入はとても無理そうですが,ランゲ&ゾーネのダトグラフとジャガー・ルクルトのレベルソ・サンムーンが発表されたのも1999年なので,この二つの時計にも思い入れがあります.
振り返れば,ジャッケ・エトアールの入手は私にとっては本当にエポックメイキングだったと感じます.購入できたのも,かなり偶然が重なってのことですし...特にヴィーナス・インペリアルのおかげで,シースルーバックの手巻クロノグラフの深遠な世界へ入ってしまいました.ただ,やっぱり経済的なこと,それから,現時点で持っている時計でかなり満足していることから,今後はそれほど増えそうにありません(^^;;;)...
モーリス・ラクロアの時計は,上質な三針時計のよさを私に教えてくれました.マスターピース・FHF29もマスターピース・エナメルも,凝った形状のケースとそのサイズ,美しい文字盤と針,綺麗に仕上げられたムーブメント,それから全体的な佇まいが,私を魅了し続けています(^^).
オーガスト・レイモンドの時計からは,汎用ムーブメントに過ぎないユニタスの非凡なる平凡さを感じました.ユニタスをちょっとだけ磨いて単にケーシングしただけの時計ですが,価格を抑えたおかげでとても楽しい時計になっていると思います.
レビュー・トーメンの時計からは,マニュファクチュールの本来あるべき姿を学びました.やっぱり余裕を持って余技として腕時計を作っていたメーカーは一味違います.最近は傾向が変わりましたけど(^^;;;)...
セイコーは,何と言ってもメカニカルとローレルです.この2種類の時計,今考えるとかなり破格の時計だったと思います.しかもローレルは時計としてのできもなかなかのものだと思います.ただ残念ながら,68系や4S系を搭載した時計は,最近はずいぶん高価になりました.
雑誌では,ヴィンテージウォッチNo.7の「魅惑のオールドストックムーブメント」という特集にはかなり影響を受けました.ここに紹介されている時計をぜひとも手に入れたい,と強く感じました.結果として,ここに掲載されていないものまで入手してしまいました(^^;;;).
最初に買った世界の本格腕時計大鑑(現在のタイムシーン)は,1998-1999でした.ここには,モーリス・ラクロアのマスターピース・エナメルが掲載されていました.1999のバーゼル特集に掲載されていたマスターピース・FHF29とオーガスト・レイモンドのバラード,2000のバーゼル特集に掲載されていたジャッケ・エトアールの時計と共に,時計を入手するきっかけになりました(^^).
最初に買った時計ビギンはVol.17です.今見返すと,この号のモーリス・ラクロアの特集にもマスターピース・FHF29が掲載されていました.今回モーリス・ラクロアのページを作る際,この特集を読み返しました.
私は最初は別にオールドムーブメントが特に好きなわけではありませんでした.ただ,いろいろなムーブメントをシースルーバックで楽しみたい(これもジャッケ・エトアールの影響です),ということで選んでいくと,結局,手頃な価格で売られていたオールドムーブメントの時計が手元に集まってきただけです.ですから,オールドムーブメントを搭載していても,高いと思う時計には手を出しません(出せません).これは自社製ムーブメントにも当てはまります.
今,最も興味がある時計は,シースルーバックの三針時計です.ただし,(1)文字盤のデザインや作りが凝っていること,(2)ありふれていないこと,(3)高価でないこと,という条件がつきます.クロード・メイランやフィリップ・デュポアにそれほど惹かれないのは(1)の理由からで,ノモスにそれほど惹かれないのは(2)の理由からです.ただし,クロード・メイランは気になるメーカーではあります.また,(3)の理由から,ジャガー・ルクルト,パテック・フィリップ,ヴァシュロン・コンスタンタン,オーデマ・ピゲには縁がありません.ミネルバも私にとっては(3)の理由から購入にまでは至りません.
さて,現在はそうはいっても,手持ちの時計にずいぶん満足していることも事実です.ジャッケ・エトアールのクロノグラフ2本,モーリス・ラクロアの2本,オーガスト・レイモンドのオールドユニタス4本とチャールストン・ドクター,レビュー・トーメンの3本,セイコーのメカニカルとローレル2本,オリエント・スター・ロイヤル,それからアンティークシースルーバックの4本,これだけあれば個人的にはかなりの満足度です.これだけでも20本ありますが(^^;;;)...
ただ,こう書いていて,すぐに新しい時計を買ってしまうのが,時計マニアの性です(^^;;;).さて,私の今年の時計ライフが今後どのように展開するのか,乞うご期待(^^)!
正直,今回のバーゼル&SIHHで最も失望したメーカーが,旧LMHのランゲ&ゾーネ,ジャガー・ルクルト(JLC)とIWCです.技術はあると思います.でも,それだけに感じてしまいます(ToT)...
ランゲ&ゾーネの新作は,ダトグラフの文字盤バリエーションとワールドタイマーであるランゲ1タイムゾーンだけのようです.別に寡作なことは悪いとは思いません.むしろ,ランゲのようなメーカーだと,寡作というブランド戦略の方がよいとは思います.
問題はランゲ1タイムゾーン.そこらへんのワールドタイマーとは違うんだ,と言わんばかりの技術のようです.ですが,この時計は決定的にデザインがだめだと思います.3/4ダイアルに全周のワールドタイムディスクを入れるとは?
機能はおそらくデュアルタイムだと思います.そして,5時位置の小ダイアルの時刻は,そこにある楔形インデックスが指しているゾーンの時間帯を表す仕組みなのだと思います.それでは,なぜ,JLCのジオグラフィークのように他の部分は隠さないのでしょう?このせいで,とにかく文字盤がごちゃごちゃしていて著しく視認性が悪い上,洗練とは程遠いデザインだと思います.
ワールドタイマーをランゲが出すことはよいと思います.ですが,本当にランゲ1をベースにする必要はあったのでしょうか?もっと,ドイツのワールドタイマーは,スイスのそれとは違うんだ,という主張を持った時計を出して欲しかったと思います.
JLCの新作はかなり多くて,マスターコンプレッサーに追加されたクロノグラフ3モデル,マスターコントロールに追加された4モデル,AMVOX1アラーム,レベルソグランドオートマチック,そしてレディースとアトモスです.レディースとアトモスはここでは除外します.
まず,コンプレッサーシリーズについては「舵取りのいない旧LMH」でも述べたように,まずデザインとサイズが個人的には受け入れられません.このクロノグラフ,レディースのサイズは良いのですが,こちらはメカクォーツです.メンズは41.5mm径(Cal.
751)と46mm径(Cal. 752)...うーん,といった感じです.搭載するムーブメント
Cal.751 と Cal.752 (Cal.751にワールドタイムリングを追加したものだと思う)ですが,雑誌ではすでに発表済みで,ピラーホイールと垂直クラッチが特徴です.
詳細な動きがよく分からないので,ここからはムーブメントの画像を見た限りの推測です.
クロノグラフのリセット時に,クロノグラフホイールと2つの積算計の合計3つのハートカムを同時に叩いてリセット,という構造は理知的だと思います.一方,気になるのがクロノグラフのストップ時です.
例えば,ヴィーナス175やバルジュー23のようなキャリングアーム式の場合は,ストップ時にキャリングアームのトランスミッションホイールがクロノグラフホイールから離れ,同時にブレーキレバーがクロノグラフホイールを押さえます.ETA
7750 のようなスインギングピニオン式の場合は,ストップ時にピニオンがクロノグラフホイールから離れ,同時にブレーキレバーがクロノグラフホイールを押さえます.ETA
2894 のような二階建ての場合は,クラッチホイールがクロノグラフから離れます.
このように,ストップ時には,ホイール類がクロノグラフホイール「から離れる」ことでストップさせ,クロノグラフホイール「を押さえる」ことでホイールを固定します.つまり,「押さえる」動作は補助的な動作に過ぎません.一方,JLC
Cal.751&2 の場合,画像から判断する限り,ストップ時にクロノグラフホイールを両側からクラッチで押さえることだけでクロノグラフホイールを停止させているように見えます(おそらくロレックスも同じです...これも推測ですが).
これで十分なのでしょうか?私にはこの構造がそれほど良いものとは思えないのですが...満を持して登場したJLCの自社製機械式クロノグラフですから,せめてキャリングアーム式,もしくはそれと比較しても遜色が無い機能を持つクロノグラフムーブメントを作って欲しかったと思います.
推測はここまでです.この部分は後日修正するかもしれません.
マスターコントロールには,4つのモデルが追加されました.このことは別に悪くは無いと思いますし,特にトリプルカレンダームーンフェイズのマスターカレンダーのデザインは好きです.超絶系ですが,アントワーヌ・ルクルトも嫌いではありません.問題は,これらのモデルの追加に伴い,現行のマスターシリーズがほとんどディスコンになるということです.ということは,JLCの丸型時計は,すべて40mm径以上,ということになります...本当にこれでよいのでしょうか?個人的には,マスターウルトラスリムのディスコンが残念です.
アストンマーチンとのコラボレーションであるAMVOX,うーん,かっこ悪いです(^^;;;).アラームは旧モデルのメモヴォックスやレヴェイユの方が数段かっこいいと思うのですが...コンプレッサーといいAMVOXといい,JLCは「スポーツウォッチ=無骨」だと勘違いしているのではないでしょうか?デザインはドレスウォッチでスペックがスポーツウォッチ,というのもJLCだったらありのような気がするのですが...マニュファクチュールを標榜するのであれば,そういう新しい分野こそ創出して欲しい気がします.
レベルソグランドオートマチックは,文字通りレベルソグランドの自動巻です.ただ,あのデイ&ナイトの表示は異常に安っぽいと感じます.それよりも,グランドの自動巻化によって,レベルソはクラシックでもビックでもなく,グランドがその中心になっていくのであろうということは問題だと思います.グランドはいくらなんでも大きすぎだと思います...
満を持して登場した,IWCのインジュニア,これもはっきり言ってかっこ悪いです(^^;;;).先代が持っていたクールな印象が全くありません.ランナップはオートマチック,クロノグラフ,ミッドサイズの三種類で,自社製ムーブメントが搭載されているのはオートマチックのみです.このムーブメントは
Cal.5000 系を小型化した Cal. 80110 ですが,耐磁時計という性格上,インナーケースなどを搭載したので径が42.5mm!これではせっかくムーブメントを小さくしたのにその利点が生かされていません...
デザインも,「これがIWCだ」という主張が全く無く,乱暴に言えばどこにでもあるデザインです.IWCというロゴが無ければ,IWCの時計とは思えないのではないでしょうか?個人的には,少なくともこれよりもこだわったデザインのボールウォッチの方がよっぽど好感が持てます.
IWCではポルトギーゼ・F.A.ジョーンズがなかなかよさげです.ただ,文字盤デザイン(特にインデックス)が今一つなのと,ちょっと大きいのが残念...
さて,JLCやIWCの新作,これらの時計はおそらく50万円以上,クロノグラフは100万円以上の価格が付けられると予想しています.独立系を除いて,SSケースで100万円以上の価格帯を持つメーカーといえば,パテック・フィリップ(ノーチラス,アクアノート),ヴァシュロン・コンスタンタン(ロイヤルイーグル),オーデマ・ピゲ(ロイヤルオーク),ブレゲ(アエロナバル),ブランパン,グラスヒュッテ・オリジナル,フランク・ミューラー以外では,IWC,ゼニス,そしてJLCくらいなものです.これを見て,何か気づきませんか?
JLC,IWC,ゼニス以外は,SSモデルはすべてそのメーカーが出しているボトムを受け持っていて,メインは貴金属ケースの時計です.一方,JLC,IWC,ゼニスでは,これらの高価なSSモデルはボトムではなくフラッグシップに近い扱いで,しかも,SSケースの方が貴金属ケースよりも圧倒的に生産量が多い(と思われる)のです.つまり,JLC,IWC,ゼニスはあくまでも量産メーカーであり,高級メーカーではないのです.それが今では中途半端な高級メーカーになってしまいました(^^;;;).
この三社の内,ゼニスはうまく高価格化したと思います.やっぱりさすがはLVMH,ブランド品の売り方を良く知っています(^^).購買層を時計マニアからブランド好きにうまくシフトしたと思います.このこと自体は,時計マニアの私にはなかなか納得しがたいですが,客観的に見ても成功した方ではないのでしょうか?いまやゼニスは「ヴィトンの時計」という位置づけですし,それがずいぶん浸透しているような気もしますし...
一方,JLCとIWCは購買層が変化していないのに高価格化が進んでいます.今,日本は時計ブームですから,新規に時計を購入する人が急激に増えたため,その人たちを取りこむことに成功したのかもしれません.しかし,少し前からJLCやIWCを知っている人たちは,今の価格は信じられない上に,時計の出来もそれほどよくない,と思っているのではないでしょうか?もしかしたら,そう思っているのは私だけかも知れませんが(^^;;;)...
フランク・ミューラーが廉価モデルにETA製ムーブメントを搭載していることを皮肉って,「側時計」と言われています.でも,今のJLCやIWCを見れば,その反対の「中身時計」に思えるのは私だけでしょうか?時計はケース・文字盤・針といった「側」だけ,ムーブメントである「中身」だけでは成り立ちません.やっぱりその両方が備わってこそ,良い時計だと思っています.
JLCにしろIWCにしろ,単体としての側はまぁ良いのかもしれません.ただ,以前のモデルが持っていた,ある種の繊細さは,最近のモデルは失っているように感じます.特にJLCの場合,コンプレッサーシリーズの場合はインデックスと針のデザインが今一つのように思います.また,新しいマスターコントロールシリーズは,以前のマスターシリーズの文字盤意匠をある程度受け継いでいるので,ケース径が大きくなった分,何となく間延びしているような気がするのは気のせいでしょうか?また,リシュモンの戦略でしょうが,JLCもIWCも,スポーツウォッチ一辺倒になりつつあり,しかも高級ウォッチである,というわけが分からないポジションになりつつあると思います...
一方,ランゲ&ゾーネは90年代の大成功が嘘のような駄作が続いています(詳しくは「舵取りのいない旧LMH」を参照してください).もともと文字盤デザインが先にあり,それに合わせてムーブメントを製造する,という手法だったので,唯一無二のデザインであるランゲ1が生まれたと思いますし,その技術の粋を集めたダトグラフが誕生したのだと思います.ランゲの場合は,今年に限らず,2000年代になって,どうもおかしくなっているような気がします.
よく考えたら,この三社とも,どうもLMHからリシュモンへ移って,時計の魅力がかなり減ったと感じます.やっぱりブルムライン氏は偉大だったと感じます.もしかしたら,将来,こう言われるかもしれません.「90年代のLMHはよかったのだけど...」
2005年4月14日「バーゼル&SIHH:ベストウォッチ(暫定版)」
あまりに忙しかったので,HPの更新がすっかり滞っていました.未だに忙しいのですが,たまには更新しないと(^^;;;)...というわけで,今回はバーゼル&SIHH2005で発表された新作群についてです.
バーゼル&SIHH2005で,今年の新作群も少し見えてきました.ただ,どうもメディア規制が(特にSIHH)であったようで,ネット上でも得られる新作情報は限られています.その中で,個人的に「これは」と思ったベスト10を書いてみたいと思います.
(1) パテック・フィリップ/5959
パテックの自社製ムーブメントを搭載したスプリットセコンドクロノグラフ.個人的には感嘆の言葉しか出ません.古典的な文字盤・ケースに自社製の世界最薄の手巻スプリットセコンドクロノグラフムーブメントを搭載した時計です.私の中では,ここしばらくはランゲ&ゾーネのダトグラフが最も審美的で最も素晴らしいクロノグラフだと思っていましたが,5959はその座を奪取しました(^^).おそらく,もの凄く高価なのでしょうが,夢として語ることができる時計がパテックから出てうれしい限りです.
(2) ダービー&シャルデンブラン/アエロディーン・トロフィー
これは公式HPに掲載されています.今となっては誰も知らないであろう,エボーシュS.A.の一員だったオーロラ製の角型センターセコンドムーブメント
Cal.19 (8*11リーニュ)を搭載した金無垢のアエロディーンです.このムーブメントにお得意のエングレービングが入っていて,しかも美しいギョーシェ文字盤を纏っています.価格は今のところ不明です.ダービー&シャルデンブランの復刻モデルの中では出色の出来だと思います.
(3) クロノスイス/デジター
FEF製の角型ムーブメントを搭載した,メカニカルデジタルウォッチ.正直ムーブメントの受けの形状はそれほど好きではないのですが,今となっては希少な角型ムーブメントですし,今となってはなかなか見なくなったデザインの時計です.なお,このムーブメントは,以前の角型レギュレーターやホラにも一部搭載されていたようです.予価120万円くらい.
(4) ヴァシュロン・コンスタンタン/メティエダール
ヴァシュロンの250周年記念モデルです.時・分・日・曜日という窓が10時・2時・4時・8時位置にあり,文字盤中央にはレリーフが掘り込まれています.4本セットで四季をイメージしているようですが,詳細は調べていないので分かりません(^^;;;).メルカトールといいサルタレーロといいラ・グラン・ヴォヤージュといい,この手の特殊表示時計をデザインさせると,ヴァシュロンは抜群にうまいと個人的には思っています.
(5) モーリス・ラクロア/マスターピース・ムーンフェイズ・レトログラード
もう少し小さければ,秒針が付いていれば,そしてSSケースがラインナップに入っていればベストなのですが,それでもこれを選んだ理由は,ずばり私が今,ラクロア贔屓だからです(^^).まぁ,コート・ド・ジュネーヴ処理をしたと思われる文字盤は美しいと思いますし,針もバランスが取れていると思います.ムーブメントはおそらく
ETA 6498 ベースだと思います.ラクロアについては書きたいことが一杯あるのですが,それについては後日(^^)...
(6) ノモス/タンゴマット
ノモスによる ETA7001 のリファイン版に,自社で自動巻機構を追加したムーブメントを搭載した時計です.巻き上げ機構は,切替車式ではなくスイッチングロッカー式らしいです.いやぁ,表か見たら単にサイズアップしたタンジェントです(手巻が35mm径なのに対してこちらは38mm径).ムーブメントの仕上げはなかなか美しく,しかも意外と薄そうです.発売は来年とのこと.価格は未定ですが,おそらく20-30万円といったところではないでしょうか...
(7) ジャッケ・エトアール/ルナマチック
二つのムーンフェイズを持つルナマチックと一つのムーンフェイズを持つルナ&エトアールがジャッケ・エトアールのラインナップに加わりました.こちらは公式HPに掲載されています.ムーブメントはETA2824ベースですが,6時位置に指針式デイト,10時位置にムーンフェイズ,反対側の2時位置には飾りの環が配置されています.6時位置したの「Handmade by Klaus Jacob」という刻印はどうかと思いました(どうせならドイツ語にして欲しかったです)が,いやぁ,ジャッケ・エトアールにしてはえらくクールな文字盤です(^^).あとは低価格を期待しています.
(8) パテック・フィリップ/3712
ノーチラスのプチコンプリケーションです.ムーブメントはCal.315ベースからCal.240ベースに変更になっています.この時計,最初に画像で見たときには「何これ?」という感じでしたが,その後なぜか惹かれ続けています.しかもその理由が未だに自分でもよく分かりません(^^;;;).なぜだろう?ノーチラスは別に好きではないのですけど...
(9) パネライ PAM203
アンジェラス製8日巻きムーブメントを搭載したパネライお得意の限定シリーズです.パネライは自社ムーブメントを開発していることがSIHHで発表になり,来年以降,本格的に搭載してくるようです.パネライ自身,同じデザインの時計ばかり作っていますが,それがブランド・アイデンティティーでもあるので,そのような姿勢は好感が持てます.
(10) セイコー/スプリング・ドライブ
オメガのプラネット・オーシャンと迷いましたが,こちらにします.何より,ただの「SEIKO」ブランドのスプリングドライブ自動巻がなかなかかっこいいと思います.また,クレドールの(おそらくノード)ムーンフェイズもなかなか綺麗な文字盤のようです.SEIKOブランドの方は価格に期待したいところですが,どうも4000ドルくらいのようです...うーん,GSSDと大差が無い価格でどうするのでしょう?売れるのかなぁ?
それから,「最近気になる現行時計について」を一部修正します.
オレア手巻のインデックスに,自動巻のインデックスだったアラビア数字(しかも12時位置が赤)も追加になったようです.どうもこの当たりのヴァリエーションは広いようです.個人的には,このアラビア数字版(スペード針)に惹かれています.
ダービー&シャルデンブランは,限定のレディー・アンティカもなかなか良さそうです.要は,私はここのシルバー・ギョーシェ文字盤が無条件に好きなのです(^^;;;).レディー・アンティカのムーブメントは丸型の(おそらく)AS1727(お得意のエングレービング入り)なのでスモールセコンドは内寄りですが,トノー型なのでそれをあまり感じさせない点もなかなか好ましいですし,あの独特の針(Maltese
Cross)も面白いと思います.うーん,ダービー&シャルデンブランは魅力的な時計がレディースばかりです(^^;;;)...
ヴァルカンのクリケット1947レプリカですが,実物を見て,あまりに正確に復刻しているのが逆に徒になっていると感じました.つまり,オリジナルが持っていたある種のチープ感まで纏ってしまっていると思えたからです.ですので,良い時計だということは分かるのですが,あの価格はあまりにも高価だと正直感じました.私だったらやっぱりアンティークを探すような気がします.
下ではアンティークに惹かれている,と書きましたし,現行時計にはあまり惹かれなくなったのも事実です.ですが,その中でも私が気になっている現行時計がいくつかあります.今回はそれについて書いていきます.
(1) クロノスイス
クロノスイスについては,今までも何回か書きました.やっぱりオレア手巻とデルフィスはいつかは欲しい時計です.ただ,オレア手巻のインデックスが,以前は12位置が赤だったものが,最近は黒に変わったようです.これは残念...
それから,最近はこれにヴィータが欲しい時計に加わりました.ETA 7750 のスケルトンは理屈抜きに美しいと感じます.
(2) ダービー&シャルデンブラン
以前から気になっていたメーカーですが,1月に現行ラインナップを見る機会があり,そこで考えが少し変わりました.当初は昨年発表されたスピラール・ヴィーナスがNOSムーブメントを搭載しているのでよいなぁ,と思っていたのですが,これは文字盤がシェルということもあり,レディース色満載で少し引きました.変わって,レディー・スターにかなり惹かれました.サイズ的にもアエロディーンよりも小振りで私好みですし,何より文字盤が美しいこと!幸いなことにレディー・スターと文字盤に書かれているわけではないので,男性が着けてもそれほどおかしくないと思いました.
あとは,今年のバーゼルで発表されるであろう,アエロディーン・トロフィーはかなり魅力的です.角型センターセコンドムーブメントであるオーロラ(Aurora)製
Cal.19 というレアなムーブメントを搭載している上に,文字盤も画像を見る限りなかなか美しいと思います.ただ,金無垢しかないので,かなり高そうですが...
(3) ローマー
ローマーのコンピテンス・オリジナルは多少気になっていた程度だったのですが,1月に東京丸の内のアルキメデス・スパイラルで実物を見て,想像以上によい時計だと感じました.当初は同じデザインであるアルプロサのような多少チープ感がある時計をイメージしていたのですが,なかなかどうして,結構きちんとした質感でした.しかも時計のサイズが37mmもあるので,がっちり感もありました.ムーブメントも
FHF 138.001 という小型ムーブメントを搭載していて,それをシースルーバックから覗けますし,デザイン処理によって,中寄りのスモールセコンドをそれほど感じさせないのもよいと思います.
なお,同じローマーのコンピデンスには,HPにはありませんが,ETAの(おそらくNOSの)三針ムーブメントを搭載した角型もラインナップにあり,こちらもなかなかよかったです.
(4) オーガスト・レイモンド
ここのジャズエイジ・クロノグラフに最近惹かれています.史上最も生産されたであろうクロノグラフムーブメントである
ETA7750 搭載の時計が一つ欲しくて,候補にこれとクロノスイスのヴィータを考えています.現実的に私の経済状況であれば,ヴィータは無理そうなので,こちらをいずれ入手しそうな予感がしています...ただ,これはどうなるかは定かではありません.7750搭載であれば選択肢はいくらでもありますし...
関係ありませんが,今年はオールド・ユニタス・シリーズは出ないのかなぁ...出れば迷わず購入するんですが(^^;;;)...最近,クォーツモデルを前面に出しているのが気になるといえば気になります.あんまり路線変更をして欲しくないメーカーです.
(5) エベル
エベルはどちらかと言えば中古に興味があります.ル・モジュロールや1911クロノグラフなどのレマニア製自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載した時計はかなり惹かれています.あとはメリディアンはなかなか使い勝手が良さそうなワールドタイマーなので,気になります.実は,私はタイプEあたりも好みだったりします(^^;;;).LVMHに入る前は,デザイン処理が抜群にうまいメーカーだったと思います.LVMHから離れた現在,モバードグループでぜひとも往年のエレガンスさを復活して欲しいと思います.
(6) カルティエ
カルティエが挙がってことが意外だと思います.私は,特にタンク・フランセーズやサントスのデザインは嫌いではありません.ただ,あまりに溢れているので,絶対に購入はしないとは思いますが...で,カルティエにはとても気になるモデルがあるのです.それはトーチュ・ワンプッシュクロノグラフです.ムーブメントはおそらくジャケ製だと思います.雰囲気がかなり好みです.ただ,この時計もかなり高額なので,きっと気になっているだけで終わると思いますが(^^;;;)...
(7) ヴァルカン
ヴァルカンで興味がある時計は,クラシック・1947レプリカだけです.これは,昨年発表された時計の中で,ムーブメント・デザイン・価格という三つの観点から最もバランスが取れた時計だと個人的には感じています.一番惹かれるのは銀無垢モデルです.ただ,レビュー・トーメンのクリケットを知っている身としては,絶対的に高価だと感じるのも事実ですし,似たデザインのヴァルカン・クリケットはアンティークで比較的安価に入手できることも事実...うーん,悩ましい時計です(^^;;;).
2005年1月8日「シースルーバックという足枷,あるいは,歯止め」
このHPを見てもらえば一目瞭然ですが,私はとにかくシースルーバックが好きです.それは,時計の文字盤・ケースデザインにムーブメントの魅力というプラスアルファが加わった時計だからです.
私の時計選びでは,このシースルーバックということが足枷になる場合がしばしばあります.例えば,現行時計であればJLCのビック・レベルソやレベルソ・クラシックはシースルーバックでないのでよい時計だと認めつつ手を出しません.シースルーバックであれば間違いなく手を出していると思いますが...
現行時計はシースルーバックは比較的選択肢が多いですが,アンティークになるとなかなか...アンティークでは,オメガの30mmキャリバーのスモールセコンドとセンターセコンド,IWCのCal.83,
88, 89といった手巻とCal.852あたりの自動巻き,ロンジンの手巻,果ては国産のグランドセイコー,キングセイコー,ロードマーベルなどなど,かなり惹かれています.また,バルジュー90やヴィーナス203を搭載したトリプルカレンダーやムーンフェイズも大好きです.さらに陶製文字盤やエナメル文字盤の時計も大いに魅力を感じます.
角型のアンティークもいいですね.何より現行ではほとんど存在しない角型ムーブメントを使っているモデルも多いですから...また,文字盤デザインもバラエティーに富んでいてなかなか魅力的に感じます.その中でも一番気になるのは,1920年代のアメリカ時計,ハミルトン,エルジン,グリュエン,ブローバあたりです.これらの時計は安い上にムーブメントも極上なものが使われていると思います.
アンティーククロノグラフも大好きです.というよりも,クロノグラフの場合は,現行よりもアンティークの方に,惹かれるモデルが数多くあります.ロンジンやミネルバやモバードは最近値上がり気味なのが残念ですがやっぱり気になります.ですが,今一番気になるのは,エクセルシオ・パークとアンジェラスです.あと,レマニアも気になりますね.
でも,これらの時計に手を出さない理由は,ずばりシースルーバックでないことに尽きます.ここまでくると,足枷というよりは,膨大な数の時計を購入しないような歯止めの役割になっています(^^).
さて,この嗜好を続けて5年,手元にも曲がりなりにもHPに掲載できる量のシースルーバックの時計が集まりました.今の狙い目はアンティークのシースルーバックなのですが,これがなかなか出物がありません.ですがそれが逆に,出物を見つけたときの喜びは堪えられません(^^).ですので,私はこれからもこの偏った時計趣味を続けていくと思います.
あわせて,私は安物の代名詞であるエボーシュS.A.製のムーブメントも大好きです.自社製ムーブメントもよいですが,エボーシュ製のムーブメントも何より安価ですし,この偉大なる平凡さが魅力的だと感じます(^^).
でも,いつかはアンティークにどっぷり浸ってしまいそうです(^^;;;).最近は特に現行よりもアンティークに魅力を感じていますから...
昨日でこのHPを開設して一年が経ちました.この一年の私の時計ライフを振り返ってみたいと思います.
(1) セイコーの逆輸入ダイバーズ
夏の常用時計として,セイコーの逆輸入ダイバーズという伴侶を得ました.昨年はオレンジ・モンスターだけでしたが,今年に入って,ブラック・モンスターとホワイト・ナイトを入手し,夏はほぼ毎日これらの時計を着けていました.来年はブラック・ナイトを購入して,このローテーションに加える予定です.
多少大きいのが欠点ですが,プッシュ式バックルは着脱が容易ですし,夜光付針の視認性は抜群ですし,ケース・SSブレスの作りも秀逸です.確かに精度は多少甘いですが,これは一週間で時計を交換するので,それほど気になりません.
さすがに時計が目立ってはいけない場面では,逆輸入ダイバーズは無理ですが,そういうときにはセイコーの自動巻きやオーガスト・レイモンドのチャールストン・ドクターがありますし,スーツの際にはレビュー・トーメンのクリケット1997・エナメルがあります.
さらに,海外旅行中は今まではフレデリック・コンスタントのハイライフ・トリプルタイムを愛用していたのですが,今年2回海外に行ったときには,こういう曜日感覚が狂うときこそ曜日表示が欲しいなぁ,と痛感しました.ですので,今度海外に行くときにも,逆輸入ダイバーズを着けてみようと思っています.
(2) パリョートの魔力
私にとって今年一番のヒットメーカーはパリョートです.入手したブーランやブーラン・シベリアは,安い上に,ケースと文字盤の質感はかなり高いと思いました.ただし,針とベルトは安っぽいです(^^;;;).また,他のどの時計にも似ていないデザインが魅力的です.ムーブメントも,古きよき時代のものの系譜を使っているのでとっても楽しいです.
問題はこの価格で,パリョートにはまると,ほとんどすべての機械式時計がとても高価格に感じます.ですので,今年は結果的に散財は減ったような気がします(^^).
パリョートは,デッキ・クロックと,余力があればブーランの文字盤違いを購入したいと考えています.
(3) アンティーク・シースルーバック
今年入手した時計の中で特にお気に入りなのが,ベネディクトとエクセルシオ・パークです.どちらもムーブメントはいわゆる高級といわれている自社製ムーブメントではありませんが,私はこのような汎用ムーブメントは大好きです.ベネディクトは,私がこれまで興味を持てなかったトリプルカレンダー・ムーンフェイズに開眼した時計で,その中でも現行時計では得ることができない魅力が溢れています.一方,エクセルシオ・パークは,フライバック機能が付いたパルスメーター文字盤の雰囲気が大好きです.
さらに,まだUPはしていませんが,ずーっと探していてしかも何度か入手する機会を逸していて「縁がない」と半ば諦めていた,ダービー&シャルデンブランのインデックス・モビーレも,つい最近ようやく入手することができました(^^)!この時計は,シースルーバックから覗くことができるムーブメントと簡易スプリットセコンド機能のインデックス・モビーレも魅力的なのですが,何より古典的なケースと文字盤のデザインが個人的には一番の魅力だと思います.
これら3本に加えて,モバードのクロノグラフHP146は,購入価格こそ4本合計で40万円弱ですが,本当に私のお気に入りの時計となっています.やっぱり時計は価格ではありません(^^).
(4) 時計資料
時計ではありませんが,古い時計の雑誌やカタログなどの資料も今年はずいぶん集めました.雑誌は主に90年代のものを,カタログは Official Catalogue をはじめとするムーブメントのカタログを集めました.でも,カタログは単価が決して安くない上に,逃すとそれ以後なかなか入手できないのが悩みの種です(^^;;;).あと,タイミングによって価格がかなり変わるのも悩ましいです.
実は,半年ほど前からある時計を入手したいと強く思うようになりました.ただ,少し高価なので,そのためのお金を貯めなければなりません.実際にこの半年間は結構時計購入を我慢してお金を少しずつ貯めていたのですが,そのお金もインデックス・モビーレの購入に充ててしまいました(^^;;;).ですので,また一から貯金をしなければなりません.とりあえず,結婚10周年の2006年か,40歳記念の2007年を目指して,そのときのメモリアルウォッチとして入手できるよう,がんばる予定です.
ですので,来年は今年以上に時計購入を控えることになると思います.でも,2-3万円の時計であれば,ついつい買ってしまいそうな気がしています(^^;;;).
昨今の雑誌を見るにつけ,違和感が大きくなる一方です.それは,どうも個人に対する時計の存在が,内的なものから外的なものへと変わったのでは?と思うようになったからです.あくまで個人的な意見ですが,それについて書いていきます.
まず,最近では,時計雑誌ではなくファッション雑誌にもよく時計が取り上げられるようになりました.腕時計は服飾品の一つですから,このことに異論を唱えるつもりはありません.ただ,多くの雑誌における腕時計の薦め方が,以前の自己満足のもの・こだわりのものを持つ,という内的なアプローチから,他人へ自慢できるものを持つ,という外的なアプローチへ変化したような気がします.曰く,この時計を着けておくと一目置かれる,この時計を着けていれば時計のことをよく知っているように思われる,などなど...
特に気になるのが,ブランド価値を上げるために各メーカーが仕組んでいるとしか思えない値上げです.そして,これを宣伝する雑誌は,高価格のものほど高級で高い価値がある,と消費者に思わせんばかりです.ロレックス以外の時計の知名度が上がった今,例えばフランク・ミューラーの時計をしていれば,少なくとも100万円近いお金を払ったと周囲に認識されることが可能になったのです.このことにより,この時計を着けていればお金を持っている,と思わせることが可能になり,結果として,高価な時計を着けていることで自分がモノにこだわっていると周囲に思わせる,そういうことが可能なアイテムとなりました.言い換えれば,見栄がはれるようになった,とも言います(^^;;;).
しかも,時計を論じる切り口が,実は時計雑誌とファッション雑誌で大差がありません.ほとんどの場合,メーカーと時計のムーブメントが薦めるポイントになっています.長い歴史あるメーカーだからよい,マニュファクチュールだからよい,自社製ムーブメントだからよい,などなど...これが高い理由として消費者に刷り込みが行われていると思います.
一方で,デザインを論じた記事は,意外なくらいに少ないと思います.ファッション雑誌であれば,モデルさんが時計・スーツ・靴などをコーディネートした写真が載っていることもありますが,それがすべてではありません.また,あくまでもコーディネートであって,デザイン論などのデザインに特化した説明の記事などはほとんどありません.まぁ,日本には,時計の技術者はいても,時計のデザイナーはほとんどいませんから,もとから論じることができる人がいない,という事情もありますが,それならば他の分野のデザイナーに論じてもらってもよいような気がします.
要するに,時計雑誌だろうがファッション雑誌だろうが,記事の中身がほとんど同じわけです.その結果,中身の無い,類似の記事が多発しています.ですので,ファッション雑誌であれば,中途半端に技術論・メーカー論なんて述べず,純粋にファッションの観点から記事を作った方が潔いと感じますし,逆に時計雑誌であれば,ファッション云々には触れずに,純粋に時計の魅力だけで記事を作った方が潔いと感じます.
記事の差別化の一つなのかもしれませんが,最近では,ショップの連携記事が圧倒的に増えました.しかも,正規代理店と並行輸入店それぞれが力を入れている時計雑誌が異なるものですから,時計雑誌ごとに別のお店の紹介記事のオンパレードです.本当,半分以上がお店の紹介,というのも当たり前になっていますし,そうなると,もはや「時計雑誌」ではなく「時計ショップ雑誌」と言っても過言ではありません.これはやっぱり時計ブームのなせる業なのでしょうか?私には,時計ブーム末期の断末魔のようにも感じます.
さらに,時計雑誌も種類はずいぶんと増えましたが,時計評論家というものがまったく育っていません.いや,そういう肩書きの方はかなりおられますが,本当にそれらの方々が時計を批評している機会がかなり少ないと思います.結果として,すべての時計を誉めるだけの記事が溢れています.そもそも,時計の批評なんて,今は無きウォッチ・ア・ゴーゴーで連載されていた「ウォッチ・ミシュラン」,それから,双葉社の「よい腕時計にはワケがある-プロが本音で語る最新ブランドウォッチ50」,私はこのくらいしか知りません...
いっそのこと,例えば,一つの時計に対して,全体,正面,右側面,左側面,裏面,装着例,それからピックアップ写真を2枚ほどで1ページとし,これに下手な文章などは添えずにスペックだけを書いていく,まぁ,拡大カタログですが,それだけの雑誌があってもよいと思うのです.今の雑誌の乱立からは,変に飾ろうとする文章を書くよりも,写真だけをきっちり掲載すればよいのに,とつい思ってしまいます.
今までは時計雑誌も結構買っていましたが,あまりの中身の無さに,来年からは購入を少しやめようと思っています.まぁ,こんな感じでHPで文句を言う前に,雑誌を買わなければよいことですしね(^^;;;)...
今は,先日書いたローレルの中の「長く愛着が持てる時計」というフレーズが気に入っています.これは,内的なアプローチで初めて達しえる感覚で,ファッションアイテム,ブランド品として時計を捕らえた外的なアプローチでは絶対に達しないような境地だと思います.逆に,愛着が持てる時計であれば,ファッションは二の次になると思います.私自身を振り返ってみると,この「愛着」を持てる時計を入手してきたのだなぁ,と思っています.その中にはもちろん他人から見れば偏愛に見える妙な愛着もあると思いますが,それはそれでいいのです.所詮,自分が満足できればよいわけですから(^^;;;)...
ですので,私自身は間違いなく時計オタクだと思っていますし,それでよいと思っています.もう少しかっこよく言えば,時計狂(watch
enthusiast, watch mania)でしょうか(^^)...少なくとも,時計を購入するに当たって,ブランド志向・ファッション志向は限りなくゼロに近いです.まぁ,私自身決しておしゃれではありませんし,時計に合わせて服を選ぶ機会も皆無です.私の場合,それにそもそも冠婚葬祭以外でスーツを着る機会もありませんし(^^;;;)...何より,他人に向かって時計を自慢する機会は日常的には皆無です.もちろん,時計狂同士では,時計を見せ合う機会は当然ありますけど,それは私にとっては非日常的なので(^^;;;)...
そして私は,今後も「長く愛着を持てる時計」を探し続けると思います(^^).
2004年12月7日「時計雑誌の良心はどこに?−フランク・ミューラー騒動を通して見えたこと」
ここでは,今年の時計業界で局所的に最も話題になったフランク・ミューラー騒動についてです.ただし,内容ではなく,各雑誌の対応やその記事を通して見えたことを書いていきます.
きっかけは,おそらく今年初め当たりから国内最大の匿名掲示板でしばしば語られていた噂だったと思います.噂だけに信憑性は高くはありませんでしたが...その噂が噂ではなく事実だと分かったのは,2004年の7月1日です.しかも,この日発売の二つの雑誌に取り上げられました.
一つ目は,時計業界の中心的雑誌(と雑誌自身は思っている節がある)である時計ビギン夏号.109-111ページに渡って書かれていた「水面上に現れた‘‘2つの異変’’に迫る」と題された記事です.前半がフランク・ミューラー騒動で,後半が自社製ヒゲゼンマイの記事でした.このフランク・ミューラー騒動に関する記事は,正直「よく分からない」という印象を持ちました.原因を述べずにフランク・ミューラー氏とヴァルタン・シルマクス氏が訴訟合戦をしているという事実を伝え,最後にフランク・ミューラーというブランドはすでに人格ではない,という,ブランド擁護論を述べていました.
二つ目は,時計業界とはあまり関係の無い雑誌であるブルータス550号.こちらはかなり刺激的で,タイトルも「そしてフランク・ミューラーはいなくなった!?」,さらに風防が割れたフランク・ミューラーの時計をそのタイトルに載せるというかなりスキャンダラスな表紙の後,訴訟の原因と経過について,海外の雑誌の記事などを引用しながら詳細に述べ,最後は「さて,あなたは『フランク・ミューラーのいないフランク・ミューラー』を選びますか?」という言葉で終わっています.
正直,ブルータスの記事を見た後に時計ビギンの記事を読めば,時計ビギンが隠したかったことが少し見えてきます.フランク・ミューラー社におけるアルメニア人の不法就労,ジャケ社の家宅捜索において押収された,存在するはずが無いフランク・ミューラーの時計とそれが暗示するもの...すなわちフランク・ミューラー社自らがフランク・ミューラーの偽物を作っていたのではないか,という疑惑です.念のため書いておきますが,ブルータスの記事内容は,あくまで訴訟内容とそれに基づいた海外の雑誌の記事(その記事の信憑性は確かに?ですけど)をまとめたものであり,決してブルータスの捏造ではないように思えます.
ブルータスは時計雑誌ではありません.ですので,この記事は時計業界からの攻撃を受けました.まずはフランク・ミューラー氏の親友である松山氏が,ある雑誌誌上で噛み付いた「らしい」のです.「らしい」というのは,残念ながら私はこの記事を読むことができなかったからです.次に,時計ビギン秋号のDr.K氏の連載「時計病棟666号室」で,先の松山氏の記事がイエローカードぎりぎりとしながらも,それに同感,ということを書いています.「(ブルータスは)もっと本当の意味での権力に当たりちらすべきでしょ」ということまで...論点がずれてるって(^^).確かに表向きは「風防が割れたフランク・ミューラーの時計の掲載」の批判ですが,結局のところ,なぜだめなのかを比喩でごまかしているだけで,松山氏を擁護しているだけに感じます.
10月,フランク・ミューラー氏とヴァルタン・シルマクス氏が和解する,ということでこの騒動は終結します.そして12月の雑誌シーズンです.時計ビギン冬号では,早速このニュースについて松山氏が書いています.その記事には,この春フランク氏にあったのだが,彼は「もう少し時間が必要なんだ」と言っていたとのこと.つまり,松山氏は,ブルータスが書いていた記事内容はすでに知っていたということになります.同じく,220ページの記事でも,やっぱり騒動は知っていたが,ちゃんとしたこと形で落ち着くまでは,下手に騒ぐのはやめることにした,と明言されています.どうでもいいことですが,こっち(220ページ)の記事はいったい何を主張したいのか今一つ私には?です.
もう一つ,このことを取り上げた雑誌があります.それはタイムシーン.これ,少し変なのです.タイムシーンは実はフランク・ミューラー騒動を取り上げたことはありません.で,タイムシーンには騒動の説明は何も無く,和解したという事実だけが書かれているのです.この記事の最後は,「まずは,ウォッチランドの時計を支持してきた日本の購買者と販売店に,両者はきちんと説明すべき責任がある.今回の騒動の間も日本の時計ファンと販売店はいたずらに騒がず,静かに見守っていたからだ.彼らはそれに答える義理があるはずだ」という文章で締めています.でも,ちょっと待って,販売店はいざ知らず,購買者はその騒動を知る機会はかなり限られていたのでは?
もちろん,最初に書いた掲示板を始めとするネットなどを通して,この騒動についてすでに知っている人は,時計ファンであればかなり多かったと思います.でも,日本において活字としてこの情報が掲載された雑誌は,前述した時計ビギンとブルータスだけだったと思います.さらに,タイムシーンも言及していますが,この騒動の期間,販売店,ひいては代理店は,何の情報も出しませんでした.それでも,ブルータスの記事が出たので,われわれはその中身を知ることとなり,そのことを元に,ネット上では情報が流れていました.もし,ブルータスの記事が無ければ,今回の「和解」ということ自体がニュースにならなかったと思います.それほどに,代理店は情報を隠蔽しようとしていたと考えられます.ですので,記事にした時計ビギンとタイムシーンはまだましだと言えるかもしれません.フランク・ミューラー騒動に一言も触れていない雑誌もありましたから...
もっと妙だと感じるのは,ブルータス以外の時計雑誌が,訴訟の内容について一切触れず,あたかも天才肌の時計師であるフランク・ミューラー氏と経営担当のヴァルタン・シルマクス氏が,経営上の意見の対立で過度に訴訟合戦を広げている,という,「しょうがないね」と読者に思わせるようなお家騒動の記事となっている点です.前述の時計ビギンにしても,騒動中に騒がないのは例え認めるとしても,その騒動が終わった後,どのように読者に明らかにするつもりだったのか...まぁ,今回の記事でも,その内容については結局明らかにされませんでしたし,今後も明らかになることはないような気がします.だって,和解した今,両氏がブランドイメージを大きくマイナスにする自らの偽物作成疑惑について語ることは絶対にないからです.
結局,時計雑誌は時計メーカーや代理店や販売店が広告主なので,広告主の意向に反する否定的な記事を書くことができない,ということなのでしょう.フランク・ミュラーに対しては,正規代理店だけでなく並行輸入店も恩恵を受けていますから,それこそ日本のすべての時計雑誌で,フランク・ミューラーに少しでも否定的な記事は書けないようになっているのでしょうね.一方で,ブルータスはそういう縛りとは無縁の世界の雑誌なのだと思います.ですので,今回のような記事が普通の人の目にも留まるきっかけとなったのだと思います.私自身は,ブルータスのおかげで,いろいろな情報を知ることが出来て,正直よかったと思っています.
今回の騒動は,図らずも時計雑誌の良心のなさ,業界自体の閉鎖性を如実に物語っていると思います.さらに,どうも時計業界は,時計・メーカーに対する批判を一切受け付けない,という体質に感じます.これは時計雑誌を読んだことがある人であれば,誰でも感じたことがあると思います.どんな時計も,誉められることはあっても,決して批判されることが無いということを...
さらに,時計雑誌や時計業界は,適正価格ということについてはほとんど口を閉ざします.あたかも時計は工芸品なので,価格に文句を言うのは筋違い,と言わんばかりです.一方,私自身は,特殊な一点物やごく小規模の工房で作られたもの以外,時計はあくまでも工業製品だと認識しています.ですので,絶対に適正価格というものが存在すると思っていますし,どういう価格が適正かは当然個人差があると思っています.でも,雑誌に掲載されている時計のすべてが本当に適正な価格の時計なのでしょうか?「価値観は個人差があるので,どの時計も『高過ぎる』ということはできない」という雑誌の優等生的な言い訳が聞えてきそうですが,それは詭弁でしょう(^^).一方で,例えば「マニュファクチュールでこの価格は安い」などといった記事を書いているのですから...
ドイツの時計雑誌「Uhren Magazin」は,価格帯別のベストな時計,というものを選びますが,そういうことは日本の雑誌ではまずできません.それは,定価と実売価格(いわゆる並行輸入店の価格)が大きく異なることも理由の一つでしょうが,何よりも「高ければ高級」という価値観,さらには,上に書いたように工芸品である時計を価格で判断することは無粋だという価値観,これらが時計業界や雑誌を支配しているからだと思います.だいたい,10万円の時計と100万円の時計を同列に扱ってランク付けをするなんて,普通に考えれば狂気の沙汰としか思えません.自動車で言えば,軽自動車とスーパーカーを比較するようなものですよ(^^)...
クォーツショック後の時計を評して「高い時計が高級な時計ではない」とよく言われました.これは安価なクォーツムーブメントを搭載してケース・ベルトを貴金属にすることで高い価格を付けることへの批判の意味での文章でしたが,今も何ら変わっていないどころか,ますますこれに当てはまる時計が増えたと思います.だいたい,最近のある時計雑誌によれば,10万円くらいの時計は価値がなく,50万円以上100万円以下の時計が手ごろな価格な時計だそうですから(^^)...
時計雑誌とは,時計と時計店の広告にライターの文章をちりばめた,いわば拡大カタログに過ぎないような気がします.いや,もちろんそうでない記事もあるのですが,総じてそのように感じる雑誌が増えたと感じます.ですので,実際に時計を購入しようという人への良心というものは,残念ながら時計雑誌にはあんまり存在しないと思います.
最近,1994年から1997年に出版された Goods Press 別冊を4冊入手しました.これらの雑誌の記事は,あくまでも「機械式時計の魅力を語る」ということが基本になっており,安いものから高いものまで,さまざまなメーカーの時計が紹介されていました.これらの雑誌の記事にあって,今の雑誌の記事に無いもの,それは,ライターの時計に対する愛情,と言うと大げさかしれませんが,「世の中にはこんなに素晴らしい『機械式時計の世界』があるんですよ」という,時計に魅了されたライターが書いた時計の紹介記事だと思います.そこには,今のようなブランド品としての時計の紹介はありません.これを時代の移り変わり,ということは簡単ですが,それは個人的にはとても悲しいことだと感じます.
#もし,これを見て気分を害された時計メーカー・販売店・代理店・雑誌関係者がおられましたら,ここに深謝いたします.ただの個人の戯言だと思って御容赦ください
m(_"_)m...
2004年11月17日「魅惑のセンターセコンド・ムーブメント(2)」
前回書いた後,現行で魅力的なセンターセコンド・ムーブメントが存在することを思い出しました.それは...
(8) パリョート Cal. 53303
パリョートのデッキクロックに搭載されているムーブメント.もともとは,構造が酷似しているユリス・ナルダンのボード・クロノメーター(Chronometre
de bord)のムーブメント Cal. 4 だと思われる.ちらネジ付き切りテンプ,ブレゲひげ,スワンネック緩急計を採用し,香箱は裏側からもブリッジで支えられている構造.5分割ブリッジで,ガンギ車受けにはカバーが付いている.22石のインダイレクト・センターセコンドで動力伝達は出車式.5振動,径49.50mm(22
ligne),厚さ12mm,パワーリザーブ40時間.精度は日差+-1.25秒,4℃から36℃の温度差による最大日較差+-9秒,最大日較差+-6秒.なお,径については53303のデータが見つからなかったので,Official Catalogue に載っていたユリス・ナルダンの Cal. 4 のデータです.
これはデッキクロック用の大型ムーブメントですが,少なくとも,現行の手巻センターセコンドでは懐中・腕時計を含めて最も美しいムーブメントだと思います.なお,私自身は現行自動巻も含めて最も美しいと思っていますが,現行自動巻センターセコンドには,パテック・フィリップの
Cal. 315,ショパールの L.U.C 4.96,オーデマー・ピゲの Cal. 3120,ジャガー・ルクルトの
Cal. 889/2,IWCの Cal.5011 などがあり,美しさとなると基準が異なると思うので,ここでは敢えて手巻と限定しています.
しかも,53303は,価格が安いのもまた魅力的です.今,私はこの時計にかなり傾倒しています(^^;;;)...
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(参考: Official Catalogueより) ユリス・ナルダン Cal.4 (Chronometre de bord) パリョート53303と異なり,こちらはスモールセコンドで時間調整もタボ押しと思われる. なお,ユリス・ナルダンの有名なマリン・クロノメーターのムーブメントは,アンクル脱進機のこのCal.4ではなく,デテント脱進機で径83.00mmのCal.1 (Chronometre de Marine, grand format) と径70mmのCal.2 (Chronometre de Marine, petit format)である. |
2004年11月10日「魅惑のセンターセコンド・ムーブメント(1)」
今回は前回の「5振動センターセコンドに酔う」の補足です.主に,オールドムーブメントで魅力的な3針センターセコンド・ムーブメントについて書きたいと思います.
(1) パテック・フィリップ Cal. 12SC
この後の27SCは合理的にダイレクト・センターセコンドを採用したのに対し,パテック初のセンターセコンド・ムーブメントでは,クロノグラフの構造を基にした,ヴィクトラン・ピゲ(現在のフレデリック・ピゲ)が考案した間接駆動方式(出車式)のインダイレクト・センターセコンドを採用.通常の輪列とは別に,四番車付近にブリッジを立て,文字盤側にアームと伝え車を配置し,それを介してセンターの秒針を動かす仕組み.個人的には,世界最高峰のセンターセコンド・ムーブメントの一つ.径26.75mm,厚さ4.00mm.なお,個人的には,27SCはあんまり魅力を感じません...
(2) オメガ Cal. 284 (30 SC T4 PC AM)
いわゆるオメガ30mmキャリバー Cal. 267 (30 T4 PC AM) のセンターセコンド版.インダイレクト・センターセコンドで,動力伝達には出車式を採用.耐久性に定評のある30mmキャリバーの見た目は,スモールセコンドだと質実剛健といった趣が強いが,センターセコンドだとなかなか優美に感じる.90年代にオメガはスモールセコンドの30mmキャリバーを復刻したことがあるが,こちらのセンターセコンドもぜひとも復刻してもらいたい逸品.径30mm,厚さ5.10mm.
(3) IWC Cal. 89
スモールセコンドの Cal.88 をセンターセコンド化したムーブメント.インダイレクト・センターセコンドで,動力伝達には秒カナ押さえバネ方式.秒カナ押さえバネのシャフトが非常に細かく,それにより正確な秒を刻むことができる.径26.5mm,厚さ4.25mm.
雑誌等では,だいたいこの3つのムーブメントが絶賛されているけれど,私としては,さらに以下のようなムーブメントも魅力的だと思います.
(4) ロンジン Cal. 12L
12Lには,古典的な出車式もありそちらも興味深いが,ここでは,3番車や秒カナの受けを一体化した受けを持つタイプが魅力的だと思います.これは,二番車の受けにカバーが付いており,穴石もシャトン止めされている.12L以外に,12.68Z(S),10.68Zなども同じ構造を持つものがある.径27mm(12L).
(5) シェザール Cal. 7400
エボーシュS.A. の一社であったシェザール社のジャンピング・セコンド(ステップ運針)ムーブメント.他に,Cal.
115-118,7401,7402 があったらしいが,製造数はごくわずかだった模様.このムーブメントを搭載して,2001年にパネライが「ラジオミール・インディペンデント」を出したことは記憶に新しい.秒針を回す間接駆動式の四番車に特殊な送りバネを組み合わせ,テンプが5振動するごとにバネが1回四番車を送ることにより,秒針をステップ運針させる構造.今となってはクォーツ時計のおかげで見る影もなくなったジャンピング・セコンドだが,このような今だからこそ,私にはとても興味深い.ちなみに,ロレックスにもジャンピング・セコンドムーブメントを搭載した時計
Tru-Beat があるが,こちらはシェザール製ではなく,自社製の自動巻きムーブメント
Cal. 1040を搭載.
これまでは,アンティーク・ムーブメントを述べてきましたが,最後に,現行(とそれに近いムーブメント)で魅力的なものを二つ挙げておきます.
(6) ミネルバ Cal.49
有名な Cal.48 のセンターセコンド版.動力伝達方式は出車式.特に,90年代に出たTZ限定モデルが,ムーブメントの仕上げだけでなく,時計自身がとても美しい.径25.6mm,厚さ4.30mm.
(7) クロノスイス Cal. C.672
2000年に発表されたタイムマスターに搭載されているムーブメント.ベースはETA/UT
6497 であるが,これを出車を使ってセンターセコンド化したムーブメント.正直,時計のデザイン・サイズは好みではないが,ムーブメントはとても興味深い.
上で紹介したムーブメントは,奇しくもすべてインダイレクト・センターセコンドになってしまいました.やっぱり,その伝達方式の見た目が,ダイレクト・センターセコンドよりも面白いことが原因だと思います.それに,輪列としては,やはりスモールセコンド輪列の方が自然ですから(^^;;;)...そうは言っても,前回の「5振動センターセコンドに酔う」で述べたような古いダイレクト・センターセコンドのムーブメントも私は好きです.
現行で5振動センターセコンドのムーブメントは,ヴァルカン・クリケットのヴァルカンV10(旧
MSR S23-80)しか思いつきません.私自身,ヴァルカンの前のクリケットである,レビュー・トーメンのクリケット1997で初めて5振動センターセコンドを入手しました.
手持ちの時計で5振動センターセコンドムーブメントを搭載した時計となると,クリケット以外はすべてオールドムーブメントを搭載していて,Unitas
6300 を搭載したオーガスト・レイモンドのエバーグリーン,Venus 1221 を搭載したベネディクト,それから,ETA 1168 を搭載したエクセルシオ・パークです.
6振動センターセコンドのムーブメントには,セイコーの7S系とオリエントの46系がありますから,すぐに入手できます.これが5振動になると,本当に数が少なくなります.アンティークだと比較的よく目にすることができるのですが...
5振動センターセコンドの一番の面白さは,ユーモラスな秒針の動きです.スモールセコンドだと秒針が短くてあんまり分かりませんが,センターセコンドであれば,ちょっとひっかかるような,それでいて一生懸命動いていることを感じさせてくれる動き...
そもそも5振動は,その奏でる音が個人的にはもっとも好きな振動数です.その音と合わせるように動く秒針にとっても愛着を持っています.
スムーズなハイビートの動きもよいですが,ロービート,特に5振動センターセコンドの動きはたまりません(^^).これが6振動になると,5振動よりも引っかかり感がなくなり,個人的には少し興ざめのような感じがします.それから,セイコーとオリエントは音が聞えづらい点もちょっと...
しかも,クリケットはアラームムーブメントだからその構造は特殊であるので除外することにしても,Unitas
6300,Venus 1221,ETA 1168,どれも輪列が異なります.
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Unitas 6300 | Venus 1221 | ETA 1168 |
現行のETA製ムーブメントは,ガンギ車,4番車,3番車,2番車の軸が軸受けの上に同時に載っているいわゆる「ETA輪列(フォンテンメロン輪列)」とよばれる輪列を採用しています.ETA輪列の場合,ちょうど
Semag ES 95 ように軸受け石が4つ見えます(これ自身はETA輪列とは呼ばないと思いますが...).このETA輪列は,センターセコンド手巻時計の時計の薄型化には必須な技術だと思います.
一方,上の3つのムーブメントはETA輪列ではありません.4番車でセンターセコンド針をダイレクトに動かすことは同じですが,これから
Unitas 6300 の場合は2番車(4番車と同軸)が,Venus 1221 と ETA 1168 は3番車が,受け板よりも地板側に配置されています.このため,裏側からは3つしか軸受け石が見えません.ですので,このような輪列では,ETA輪列と比べれば,どうしても厚くなります.
ただ,今となってはこの厚さも魅力の一つです.実際,画像からは分かりづらいですが,Venus
1221 や ETA 1168 の受け板は,他のムーブメントと比べても厚くなっています.このどっしり感が個人的には大好きです.
確かに,輪列としては,3番車を地板側に配置するか,ETA輪列のようにせせこましい輪列にならざるを得ません.ですので,一番自然な輪列であるスモールセコンドレイアウトが,やはり時計の輪列としては王道だとは思います.実際,私もスモールセコンド輪列は大好きです.ただ,スモールセコンド輪列は,そのレイアウト上,輪列自身にほとんど変化がないのに対し,センターセコンド輪列は多種多様なので,輪列の形状を楽しむこともできると思います.ただし,輪列が重なる場合は,シースルーバックでも歯車が見えづらいという難点はありますが(^^;;;)...
ちなみに,アンティークで絶賛されているセンターセコンドのムーブメントは,スモールセコンド輪列にセンターセコンドを駆動する機構を入れたものです.代表的なものに,バネを使ったIWCの
Cal. 89 や,出車を使った Valjoux 90 があります.確かに機構としては凝っていますが,個人的には輪列自身を変えたタイプの方が,耐久性が高いように感じるのですが...まぁ,このようなセンターセコンド輪列を持つムーブメントは,ありふれているといえばそうですし,機構で動かす方が薄く作ることができる(特に,IWCの場合はムーブメントの厚さはスモールセコンドと変わっていないように見える)ので,こちらの方が好まれるのも分かるんですけど(^^;;;)...
上の3つのムーブメントも,はっきり言ってしまえば,当時の汎用ムーブメントです.ですが,現行で5振動センターセコンドのムーブメントの種類が限られている今となっては,このように綺麗に仕上げた後でケーシングし,しかもシースルーバックにすれば,かなり魅力的な時計になると思います.だからといって,このような汎用ムーブメントを搭載して高価だと,それはそれで問題だと思いますけど(^^;;;)...
あ!現行で5振動センターセコンドのムーブメントがもう一つありました.それは,クロノスイスのタイムマスター用のムーブメントで,これは,ETA
6497 に出車を追加してセンターセコンドにしています.これはとっても魅力的なムーブメントです.さすがは,ゲルト・ラング氏!できれば,腕時計用のスモールセコンドムーブメントでこの機構を実現して欲しいところですけど(^^;;;)...
センターセコンドの種類を私流に勝手にまとめてみました.ただし,(2)と(3)は,一般には一緒に「ダイレクト・センターセコンド」として語られることが多いと思います.
(1) スモールセコンド輪列に,センターセコンド化する機能を追加してセンターセコンドにしたもの.4番車が直接秒針を動かさないため,インダイレクト・センターセコンド(indirect
center seconds)とも呼ばれる.代表的なムーブメントは,バネを使ったIWCの
Cal. 89 や,出車を使った Valjoux 90.それから,現行のセイコー4S系もインダイレクト・センターセコンドです(ただし,4番車は6時位置ではなく4時位置).
(2) 2番車もしくは3番車を,地板側に配置してセンターセコンド輪列としたもの.秒針は4番車で動かすので,ダイレクト・センターセコンド(direct
center seconds)とも呼ばれます.(3)のETA輪列が主流になる前は,こちらが主流だったようです.ちなみに,古い国産ムーブメントもこのタイプはよく見かけます.
(3) スモールセコンド輪列のように同じ高さに輪列があるムーブメント.もっとも有名なものがETA輪列のムーブメント.こちらもダイレクト・センターセコンドです.現行ETA社製ムーブメントの場合は,ハイビートであるため,輪列自身もかなり小さくなっており,そのために自動巻き機構の追加が容易となっている.
センターセコンドは英語で center seconds もしくは sweep seconds と呼ばれます.一方,スモールセコンドは subsidiary seconds と呼ばれます.
2004年9月23日「パテック・フィリップ:90年代のモダニズムと今世紀の堕落」
今回は,パテック・フィリップについてです.
私は,90年代のPPは大好きです.特に90年代後半に出たカラトラバである5000と5026は,モダン・カラトラバの中では屈指の時計だと思います.もちろん,3796や3923も素晴らしいとは思います(私は3796よりも3923が好きです)が,4時位置スモールセコンドを採用して,決して過去の模倣ではないモダンデザインがとても心地よく感じます.さらに,プチ・コンプリケーションである5054や5055や5085も然り.過去の模倣ではないモダンデザインが私にはかなり魅力的な時計です.デザイン的には二針の5032も大好きです.
2000年に発表されたワールドタイム,5110は復刻デザインですが,好きな時計です.あとは2000年の10日巻きである5100もなかなか素晴らしい時計だと思います.これは実物は大きいらしいのですが,残念ながら,実物を見たことはありません.
ただ,これ以降に発表された時計はどれも魅力的には感じません.まず,今年のバーゼルで話題となった5196は,215を径37mmの時計に無理して搭載したために,あまりにもスモールセコンドが中寄り過ぎます.5196,実物の質感は素晴らしいらしいのですが,これはもう,ムーブメントの使い回しがパテックらしくないと思います.
そもそも,現行のパテックの基本ムーブメントには,手巻8振動の215,マイクロローター自動巻6振動の240,自動巻6振動の315の3種類しかありません.しかも,215は径が21.9mmしかありません(240と315の径は27mm).
こんな小さなムーブメントを新しいカラトラバのような37mm径の時計に収めて,何とも思わないパテックの良心のなさをとても悲しく思います.新しいコンドーロもこれを搭載しています.パテックであれば,30mm強径のラウンドムーブメントと角型ムーブメントを作った上で,これらの時計を作って欲しいと切に願います.
だいたい,アンティコルムと結託したパテックのイメージアップ戦略ともいうべき,昨今のオークションの高騰も,浮世離れしすぎていて,個人的にはどうでもよいことだと感じます.時計本体ではなく,そういう外的部分でイメージアップを図ろうとすること自体,パテックらしからぬ,と感じます.
215にしろ240にしろ315にしろ,もう30年近く作り続けているようですから,そろそろムーブメントの観点からの新しい提案があってもよいと思います.自動巻巻上げ方式は240も315も片巻上げですし...スイスの最高峰の時計メーカーであるのであれば,JLCのスイッチング・ロッカー式,IWCのペラトン式と並ぶ新しい自動巻方式の提案くらいあってもよいのでは?315のデチューン版ともいうべき324を喜んで作っている場合ではないでしょう...
それに,ワンオフとも言うべきグランド・コンプリケーションをいくら作っても,私は「それがどうした」とどうしても思ってしまいます.もちろん,そのようなグランド・コンプリケーションを作ることができる技術力はパテックには必要だとは思います.ただ,それだけで,カラトラバのようなただの三針時計がなおざりになっている印象をどうしても持ってしまいます.それは,グランドコンプリケーションが素晴らしければ素晴らしいほど,際立ってしまうように感じます.
アンティーク・パテックについても一言.昨今の価格高騰は凄いものがありますね...パテックで資産価値があるモデルと言えば,アンティークでもコンプリケーションだと思うのですが,最近ではカラトラバもずいぶん高騰しました...よい時計なのは確かですが,カラトラバは飾っておいてなんぼの時計だと思います.まぁ,アンティーク・カラトラバの実物を見たことがない私がこのように言っても,説得力はゼロですけど(^^;;;)...でも,12-600ATや27-460Mのような史上最高の自動巻ムーブメントであれば,巻上げを楽しむために使ってこその時計だと思います.
個人的に魅力的だと感じる現行のパテック・フィリップの時計は,二針カラトラバの5120だけです.これは,そっけないデザインと,それに組み合わされたマイクロローターのムーブメントをシースルーバックから覗ける点が,何と言っても好ましいです.できればブレス仕様の文字盤デザインを革ベルト仕様にも採用して欲しいところですが...
繰り返しますが,パテックには,まずは径が大きな手巻三針ムーブメントを切望します.これすら作れないようだと,パテックの技術力も大したことがないように感じます.現在の工作機械の精度を持ってすれば,設計と製造は容易だと思います.あとは,これに耐久性と高級さを併せ持った,パテックらしさをどのように付加するかでしょうか...もしかして,これが難しいのかなぁ?確かに難しいとは思いますが,逃げてばかりもいられない気がします.まぁ,日本のように,パテックであれば何でも喜んで購入する人が多い国がある限り,そのようなものを開発するとも思えないところも悲しいところですが...
それにしても,90年代のデザイン面でのチャレンジは素晴らしかったと思います.ムーブメントはこの頃からすでに上記の3種類だったのですが,時計の内容が今とは比較にならないくらい豊かだったと感じます.特に,240の欠点であるセンターでも6時位置でもないスモールセコンドを生かすモダンデザインは,素晴らしいの一言です.ダイアルレイアウトだけではなく,インデックスのデザインや針の形状など,細かい点も挑戦しているように感じます.また,3796にしろ3923にしろ,古の普遍的なデザインを現代風にアレンジしながら復刻したという意味合いはとても大きいと思います.
一方で,2000年以後のパテックにはそのような提案や挑戦は見当たりません.現在は,ムーブメントにしろデザインにしろ,ワンオフではない普通の時計に,新しい提案が何もないという何とも寂しい状況だと個人的には感じています.個人的には,5196を作るのであれば,せめて240を搭載した二針で,と思ったのですけど,あのデザインはどうしてもスモールセコンドを作りたかったのでしょうね...
12-600ATや27-460Mは,センター部分をローター周りの強度を増すために利用したためにスモールセコンドになったという背景があります.その一方で,215を搭載した5196の中寄りスモールセコンドには,私は何の意義も感じません.
9月4日から11日まで,仕事でポルトガルのポルトへ行っていました.ポルトや経由地のヒースロー空港で折を見て時計店のウィンドウショッピングをしました.
そこで一番驚いたのが,フレデリック・コンスタントの大躍進です.ヒースロー空港内の免税店やポルト市内の時計店で,かなり頻繁に目にしました.ディスプレイされている時計は旧型のハートビートと自動巻,それからパスエイションクォーツが中心で,ハイライフは三針がたまに置いてある程度です.
やっぱり,フレデリック・コンスタントは低価格で上質なことが売りになっているのだと感じました.これだけ店頭にあるということは,それなりに売れているということだと思います.
さらに,ハイライフの上級モデル,すなわち,レトログラードセコンド,ハートビートデイデイト,トリプルタイムは結局見かけませんでした.やっぱり,これだけの価格(日本円では10万円以上,ヨーロッパではおそらく800ユーロ以上)を出してまで時計を購入する場合は,フレデリック・コンスタント以外のメーカーを選ぶのかなぁ,という気もしました.
その他のラインナップで言えば,だいたいスウォッチはどこのお店にもあり,ついでオメガ,ティソ,ロンジン,セイコー,シチズン,モーリス・ラクロアといった感じでしょうか...ただし,お店によってラインナップはずいぶん異なります.ティソやロンジンは,タイムリーなオリンピックモデルも売られていました.モーリス・ラクロアは比較的に安価なクォーツ(および旧モデル)が中心でした.
それから,セイコーのアークチュラ・キネティック・クロノグラフのポスターはかなり見かけました.ですが,ポスターが置いてあるお店に必ずしもキネクロが置いてあるわけではありませんでしたが(^^;;;)...それから,セイコーやシチズンは海外製の方がデザインがよいと感じました.
今回,このように海外の時計店を巡る機会に恵まれましたが,日本と比較すると,やっぱり日本(特に東京)の時計ブームは異常に感じます(^^).ステイタス・シンボルとしてだけの時計では,時計がかわいそうです.さらに,あれもこれもと欲しがらず,もう少し大らかに自分の時計を見つめ直してもよいのでは,と思いました.購入して「はい終わり!」ではなく,いつまでも愛用していくことができる,そのような時計を無理をせずにゆっくりと購入していこう,という気になりました(^^).
ユーロ・パッションは,ジャッケ・エトアール,エポス,オリス,アントワーヌ・プレジウソ,ペルレ,ウォッチ・ピープル,ボーグリー,などなど,いろいろな時計メーカーの日本代理店です.スウォッチ・グループやリシュモン・グループやLVMHグループが代理店ではなく日本法人を設立している現在では,おそらく代理店として最も多くのメーカーを扱っていると思います.
まず,ユーロ・パッションへ声を大にして言いたいことは,激しい値上げはやめて欲しいということです.ジャッケ・エトアールやエポスのページにも書いていますが,一度発売されたモデルを値上げする回数が何と多いことか...
以下では,各メーカーと代理店のその扱い方について,私が感じていることを述べてみます.
(1) ジャッケ・エトアール
現在のユーロ・パッションは,今のジャッケ・エトアールの売り方を間違っているような気がします.これは,代理店というよりも,メーカーの責任ですが,結局,現行ムーブメントで魅力的な時計を作ることができなかった点が,今のジャッケ・エトアールの危うさを物語っていると感じます.それに輪をかけて,現行ムーブメント搭載の時計も,価格的なアドバンテージが他のメーカーと比べてない,という点...
結果として,輸入開始の2000年から今まで,NOSムーブメント頼りの時計販売になってしまい,しかも現在は頼みの綱であるNOSムーブメント自身がクロノグラフはほとんどなくなってしまって...NOSムーブメントが尽きたときがジャッケ・エトアールというメーカーが終わるとき,と感じてしまって,今後はかなり不安です.
代理店は,せめて現行ムーブメントの時計を割安と感じる価格で魅力的にしないと,このままではジャッケ・エトアールは,日本では売れなくなるのではないでしょうか?代理店のHPに,すでに売っていないヴィーナスやバルジューの時計をいつまでも載せている場合ではないでしょう...ドラスティックに,ヴィーナスやバルジューのことは忘れて,ジャッケ・エトアールの時計の売り方の戦略を練った方がよいと思います.
この当たり,メーカーとしては,ジャッケ・エトアールと比較して,クロノスイスは分をわきまえていました.クロノスイスも,初期はジャッケ・エトアールと同じようにNOSムーブメントの時計を中心に製造していましたが,途中から現行ムーブメント(+エニカ製ムーブメントがベースの自社製ムーブメント)にうまく移行できましたから...やっぱり開発力(というよりはゲルト・ラング氏のプロデュース力)とデザイン力が,ジャッケ・エトアールのクラウス・ヤコブ氏より圧倒的に上だと思います.
ゲルト・ラング氏は,ヴィンテージ・ウォッチNo.7の「魅惑のオールドストックムーブメント」でインタビューを受けています.その中で,「デッドストックのオールドムーブメントを新製品に採用するという動きが活発化していますが,このような市場の動向についてどのような見解をお持ちですか?」という質問に対して,今日では市場に出回るほどこれらが大量に残っていないこと,それから,昔のウォッチメーカーが持っていたほどのクラフツマンシップを我々が持っていないのでこれらのムーブメントを完全に復刻することは不可能,という理由から,「デッドストックのオールド・キャリバーを採用するというような市場の流れがあるとは思われない」と答えています.90年代初めにはNOSムーブメントの魅力的な時計を製造していた氏ですら,現在(インタビューは2000‐1年)ではそのような答えているのです.
一方のクラウス・ヤコブ氏は,同じ記事で最初はこれらのNOSムーブメント搭載の時計を,自分の時計コレクションの中のスペシャル・ウォッチと位置づけていたと答えています.氏にしても,ヴィーナスやバルジューが日本でこれほど受け入れられるとは思わなかったのではないでしょうか?ただ,売れてしまっただけに,メーカーと代理店の双方に,どちらかと言えば「売れるうちに売ってしまえ」という考えが根付いてしまい,消費者にも「ジャッケ・エトアール=NOSムーブメントを使った時計」という位置づけがなされてしまったと思います.
個人的には,今からのジャッケ・エトアールは,STT製ムーブメントを搭載した時計を,特にデザイン面からきちんと作りこみ,価格ももう少し下げて大々的に販売すれば,まだまだ命脈は絶たれないような気がします.主役はこのSTT製とETA製のムーブメントを搭載した時計とし,これらを他のメーカーと比較して競争できる価格帯にすること,そして,NOSムーブメントの時計はあくまでもスペシャルウォッチとして販売すればよいと思います.
ジャッケ・エトアールの美点は,ケースのよさにもあります.SUG製のSSケースの作りはなかなか上質だと思います.それに比べると,正直,針・インデックス・文字盤デザインなどにジャッケ・エトアールならではの独自性がありません.ドイツの時計らしく,針は長く,そして文字盤のバリエーションは少し減らして,ジャッケ・エトアールの顔となる時計を作ること,これも重要だと思います.その第一候補は,STT製のクロノグラフでしょうか...
(2) エポス
エポスの時計は,質は高いのですが,個人的には何となく時計として「隙」があるように感じます.これは,おそらく,「本当は○○の時計が欲しいけど,エポスに同機能の時計があるので,それで我慢している」とどうしても思わせるところに由来している気がします.クロノグラフ,レギュレーター,ジャンピングアワー,ビックデイト,パワーリザーブ計など,機能は充実していますが,価格を無視してそれらの機能(の一つ)でエポスを選ぶか,と言われると選ばないような気がします...このこと自身は決して悪いことではないと思うのですが,この隙を隙と感じさせないためには,素晴らしいデザインとよほどの低価格でないと難しいと思います.
さらに,エポスの時計のデザインには,思い入れがないというか,一貫性がありません.例えば,レビュー・トーメンやオーガスト・レイモンドなどは,デザインは正直あまりうまくないと思いますが,それでもメーカーとしての一貫性があるので,好きな人は好きになるデザインになると思います.一方,エポスのデザインが好きでエポスを買い続ける人はほとんどいないように感じます.
これは,エポスが数多くのモデルをラインナップに加えていることが原因だと思います.個々の時計のレベルは決して低いわけではなく,むしろ高いのですが,そのことが,エポスの時計を継続的に買わせる魅力を薄くしている気がします.ただし,数多あるメーカーの中には,こういうメーカーがあってもよいようにも感じることも事実です(^^;;;)...
少し気になることは,どうも角型パワーリザーブ(3327)が,代理店が目論んだようには売れていないように感じることです.3327は,エポスにしては珍しい限定品で,ムーブメントもジャケ736という角型ムーブメントを搭載していて,同ムーブメントを搭載している時計の中では最廉価です.ケース・文字盤の作り・デザインも悪くありません(私は大好きです).ただし,エポスにしてはかなり高額な時計です.
3327が売れていないのであれば,それこそ市場におけるエポスの位置がどこにあるのか,おのずから分かるのではないでしょうか?ムーブメントも,ETA,AS,プゾー,ヘブドマス,ジャケなど,かなり充実していますから,それらを使ってうまくデザインされた,日本円で10万円以内の時計,それこそがエポスの位置だと私は思います.
まぁ,エポスは現在は売れているようなので,現状維持でも問題はないのかもしれませんが,購入する側から見れば,エポスはジャッケ・エトアールよりも価格や値上げに敏感なメーカーだと感じます.その部分は代理店の方にも認識して欲しいところです.繰り返しになりますが,この価格帯の時計を購入する人(少なくとも私)は,「エポスだから買う」のではなく,「他と比較して驚くほど安価だから買う」のです(^^).#もちろん,好みのデザインがエポスには多いことも理由の一つですけど(^^;;;)...
それから,そろそろ将来性についても考えていかないと,ブランド価値が決してあるとは言えないエポスの今後は,少し厳しいように感じます.
(3) オリス
オリスはサンクロノスが代理店だった時代から明らかに価格帯が上がりました.TT1やアートリエは,確かに以前のモデルと比較して質感はかなり向上したと思います.ですが,やっぱりBC3や以前のオリスの価格に比べると,「これがオリスの価格?」と感じてしまう価格になったことは事実です.
しかも,90年代はオリスが手頃な腕時計の代名詞だった気がしますが,今となっては,エポスやノモスやフレデリック・コンスタントなどが輸入されており,それらのメーカーと比較しても手頃感はかなり薄くなった気がします.ここはやっぱり,代理店に頑張ってもらわないと...
メーカーとしても,昨今のデカ厚化に便乗している時計作りを続けていることは残念でなりません.デザインもインデックスがデコ調になったりとあんまり好みではありません.ワールドタイマー,トリプルカレンダー,レギュレーターを作り出せるのですから,もう少しダウンサイジングをして欲しいところです.#40mm径以内のアートリエ・ワールドタイマーが出てくれることを個人的には望みます!
あと,90年代はエレガントな角型ウォッチもいくつかラインナップにありましたが,それらがなくなったのは残念です.今も角型ウォッチはあることはあるのですが,インデックスがデコ調なので,飽き易そうな気が...
(4) アントワーヌ・プレジウソ
独立時計師の時計だから,それだけで付加価値があるのだとは思います.ただ,1年ほど前までと比較して,あまりにも高価格になりました...普通の三針が「チェ・ケバラ」と「ニュー・シエナ」しかないし...まぁ,そういうことを抜きにして,「プレジウソだから買う」という人がきっといると思うので,これはこれでよいのかもしれません...でも,プレジウソの売りって,超絶トゥールビヨンのような気もします.
(5) ペルレ
ペルレは,確かに時計の作りはよいとは感じますが,価格が少し高めに感じます.ダブルローターはギミックとしては面白いと思います.時計のデザインは悪くないと思いますが,ペルレというメーカーの存在自体は地味だと感じます.
この手のメーカーの時計は,代理店としては決して主力にはならないと思いますし,好きな人が購入してくれればそれでよい,という感じなのだと思います.ですので,私なんかが少し高いと感じている価格も,特に不利になることはないと思います.
「舵取りのいない旧LMH」への追記 (2004年8月29日)
まず,レベルソ・グランド用のムーブメントであるJLC875についてです.このムーブメントは何と厚さが5.3mm!これは,懐中時計のムーブメントである
ETA6497 の4.5mmよりも厚いのです!これを,薄型には不利なレベルソのケースに入れているわけです.レベルソ・グランドが厚くなるのも当然です...
一方,JLC822が厚さ2.94mm,これにムーンフェイズ,ナイト&デイ表示,パワーリザーブ計をつけたJLC823でも厚さ4.14mmです.レベルソに使うのであれば,厚さはこのくらいが限界でしょう...それをダブルバレルにしたから厚くなったとは,私には本末転倒に感じます.
よく考えてみたら,節操無く自社ムーブメントを開発し続けることは,ジャガー・ルクルトが昔からやっていることですから,このこと自身は「昔に戻った」と感じられなくはありません.ただ,このことを現在のブランド価値とすることで高価格化へ,というメーカーの方向性がどうにも好きになれません...90年代の方が節操があって奥ゆかしかったと思います.メーカーとしては,「知る人ぞ知る」メーカーというよりも「誰でも知っている」メーカーになることを選んだのかなぁ?
それから,IWCのCal.5000についてです.このムーブメントは径38.2mm,厚さ7.2mmもあります.これはどういう目的で開発したのでしょう?手巻で作っていれば,懐中時計用となりますから,まだ分かります.でも,自動巻だと懐中時計用には成り得ませんし,腕時計にすれば普通に42mm径,10mm厚は超えてしまいます.このムーブメントは歴史上最大サイズの自動巻ムーブメントでは?
しかも,チラネジまでついている始末...私はチラネジは嫌いではないのですが,古典的ではないムーブメントに付いていると,少し違和感を感じます.IWCのように技術を標榜するメーカーであれば,緩急計を使わずに,ジャイロマチックやヴァーナリーのような外に出っ張っていないスクリューバランスの技術を開発して付けて欲しいところです.そうでなければ,スムーステンプで十分だと思います.
今日の日記は,メールをよく交わしている Anton さんの意見に私の意見を追加したものです.ですので,以下の「私」という一人称には,Anton
さんの意見が加わっていることもあります.
LMHとは,今はリシュモンに吸収されてしまった,ランゲ&ゾーネ,ジャガー・ルクルト,IWCの3社のグループを指します.このグループは,元ユンハンスのマネージャーであるブルムライン氏が総帥として舵取りをし,特にランゲ&ゾーネの復活で一躍脚光を浴びました.ところが,そのブルムライン氏は,LMHが2000年末にリシュモンに吸収された後,2001年に亡くなりました.その後のこの3社の出す時計は,時計雑誌ではだいたい絶賛されていますが,私には「なんだかなぁ」と思うようなものばかりです.
(1) 自社ムーブメントを節操無く開発し続けるジャガー・ルクルト
ジャガー・ルクルト(JLC)は,「自社ムーブメント」を節操無く開発しすぎだと感じます.マニアにはこれが魅力なのでしょうけど,私は正直?です.特に,レベルソ・グランド用のムーブメント874&5,マスター・8デイズ用の877,それから,今年発表のマスター・ホームタイム用の975...
874&5はその大きさ・厚さがレベルソにそもそもふさわしくないと思います.しかも,レベルソにはグランド用の822という素晴らしいムーブメントがあるのに,あえてこれより大きなレベルソを出すとは...ブリッジの形状は現代的で,私はあんまり美しくないと思いますが,これは人それぞれですから除外するとして,確かに874&5は8日巻きになりました.874にはビックデイトも付いています.でも,ただそれだけでは?レベルソ・コンプリカシオンが2000年に終了して以後,挑戦的なレベルソが発表されていないことも気になります.
JLCは,877をパネライ用に開発したといったら,その必然性は分かります.パネライはそもそもデカ厚時計ですから...実際,今年パネライが搭載して,こちらはよいと思いました.でも,JLCが40mmを超えるデカ厚時計を出す必然性はないのでは?
マスター・ホームタイム,時計自身は悪くなさそうです.巻き上げ効率もよいらしいし...自動巻としてはなかなか優秀らしいです.ただ,開発途上で,ムーブメントのサイズを27mmから30mmにアップしたとのこと.今だからこそ,JLCはデカ厚なんて作らずに,32mm径くらいの普通の時計を開発すべき,だと思うのですが...
それから,これらのムーブメントは,普通の顔をしていません.874&5と877は4時位置スモールセコンド,877はGMT専用です.ということは,普通のドレスウォッチには使えません.まぁ,このサイズだとドレスウォッチに使えないのは当然ですが...結局,手巻や自動巻のドレスウォッチは,旧来からあるムーブメントに頼ることになります.ですので,このムーブメントは普遍的なムーブメントとは思えません.
だいたい,JLCはそもそもランゲ&ゾーネのようなプレミアム・メーカーではなく量産メーカーです.ところが,現状を見れば,1時計1ムーブメントというランゲ&ゾーネと似たような戦略をとりつつ,時計の生産本数は比較にならないほど多い,という妙なことになっているような気がします.
あと,ムーブメントではありませんが,マスター・コンプレッサーもまずいと感じています.技術のJLCならではの,あのコンプレッサーシステム,それが先にありきでラインナップに加えられた時計たちのデザインは,はっきりいって,むごいと感じますし,JLCらしくありません.
それから忘れていませんか?ブルムライン氏がLMHの総帥として,JLCの社長に就任した1980年代前半,最初にしたことは他社へのムーブメント供給の打ち切りと自社銘の時計の製造です.それからJLCは今の地位を築きました.でも,今のリシュモン下のJLCは,ブルムライン氏が就任する前の時代へ逆行し,リシュモンへのムーブメント供給会社へ成り下がる道を歩んでいるように感じる,といったら,失礼でしょうか?
(2) デザイン・アイデンティティを失ったランゲ&ゾーネ
最近のランゲ&ゾーネの新作はデザインがまるでだめだと思います.今年発表されたダブル・スプリットは,その技術力は凄いとは思います.でも,ランゲのクロノグラフはビックデイトが付いた「ダトフラフ」でアイデンティティを作っていたのだと思います.そのための少し下寄り目のスモセコと30分積算計だったはず...ところが,ビックデイトがなく,インダイアルがダトグラフと同じとは,何とも間抜けに感じます.申し訳なさそうに12時位置にはパワーリザーブ計が付いていますが,これなんて,デザインも何もあったものではないと思います.
それでも,まだダブル・スプリットは許せます.もっとまずいと感じるのは,ダトグラフからビックデイトを除いた,今年発表された1815クロノグラフです.デザイン・アイデンティティがない上に,ランゲが廉価版の時計を出してはいけないでしょう...
ひどいと言えば,昨年発表のグランド・ランゲ1ほど,アイデンティティを失ったデザインはありません.そもそもランゲ1は「すべての針が重ならない」ということであのレイアウトを得たはずです.それが,そのアイデンティティをかなぐり捨てるような,交差する針...少なくとも,ビックデイトに針がかかるのは正直みっともないと思います.さらにランゲ1にも「ルミナス」というドレスウォッチだかスポーツウォッチだか分からないモデルを出す始末...
今振り返ってみれば,1999年のダトグラフは本当に衝撃的で感動的でした.でも,その後はどうでしょう?2000年のトゥールビヨン,2001年のランゲマチック・パーペチュアルは,感心はしましたが,感動はしませんでした.この後は無残です...
考えてみれば,大成功を収めた今のランゲ&ゾーネであれば,毎年新モデルを出さなくてもよいような気がします.その代わり,2,3年に一度,誰もが感動する時計を製造し,あとは既存のラインナップを妙にいじらずにやっていける気がします.もともとそれほど生産量が多くないわけですし...
(3) 普通の時計を作らないIWC
LHMの位置づけにより,IWCはスポーツウォッチ中心のメーカーに変わっていました.ところが,最近ではスポーツも中途半端,ドレスも中途半端,結局,何がしたいのかよく分からないメーカーになってしまいました.
まず,最近の自社製ムーブメントである自動巻7日巻きの5000系.自動巻機構にペラトン式を採用して,しかも自動巻でロングパワーリザーブということで,マニアには受けがよいようですが,これはまず大きくて厚すぎです.なので,これを収める時計ケースは40mmを優に超えます.しかも,手巻のロングパワーリザーブであれば,手巻の手間を省くというメリットがありますが,自動巻のロングパワーリザーブにどれほどのメリットがあるのでしょうか?ブランパンの100時間くらいで十分な気がします.
それでも,2002年のビックパイロットウォッチであれば,デザイン的に分かります.ところが,今年は以前限定で出ていたドレス系のポルトギーゼをレギュラー品としてラインナップに加えました.しかも,SSケースで100万円オーバーとは?!
確かにポルトギーゼは,そもそも懐中時計がベースなので,きちんと復刻すればそれなりに大きくなるのは分かりますが,これは復刻ウォッチではなく,あくまでポルトギーゼをオマージュとして製造された時計だと思います.それがこんな大きなムーブメントを搭載するとは...ここまでやるなら,以前のジュビリー・ポルトギーゼのように,懐中時計のムーブメントを搭載したら,と言いたくなります.
それから,今年発表のアクアタイマーも今一つ中途半端です.以前のあの過剰なまでの技術を誇示する姿勢が残っていたのであれば,今やありふれた2000mではなく,5000m防水くらいで出してきたはずです.しかも,デザイン上も特にIWCのアイデンティティがあるようには思えないし...
マークシリーズもスピットファイアーなんて亜流を出す始末...IWCで普通に使える時計といえば,スピットファイアーではないマークXVとポートフィノだけ,という状況は,あんまりよいとはいえないのでは?それとも,IWCはスポーツウォッチを作り続ければよいのかなぁ?でも,それらの時計もそれほどスポーティではないという現状も...ポルトギーゼは位置づけが不明ですし...
というか,IWCがクロノグラフを製造することに私は未だに違和感があります.IWCはプレーンなデザインの素晴らしい時計を出していたメーカーだったのに...アンティークもそうですが,90年代であれば,JLC製ムーブメントを搭載したポルトギーゼもなかなかでした.それが,今となっては...
私は,IWCには,普通の三針で,中身も高級で(ただし別に自社製ムーブメントでなくてよい),しかもデザインも素晴らしい時計を作って欲しいと思っています.
(4) 高価格化の一歩をたどるジャガー・ルクルトとIWC
昨今のジャガー・ルクルトとIWCの高価格化は,以前のゼニス並みにひどいと感じます.いくら自社製ムーブメントを搭載しているからとはいえ,SSケースで100万円以上の時計をラインナップに加えるとは,かなりあきれています.
時計はムーブメントだけではありませんし,まして,自社製ムーブメントであればどれも素晴らしいのではありません.時計はサイズも含めたデザインも大きな要素です.新作だけではなく,既存のラインナップの値上げも凄いです.JLCのウルトラスリムはいつの間にか定価が50万円を超えました...
LMH時代は,JLCとIWCの上にランゲ&ゾーネという存在があったので,まだ価格帯は納得できるものでしたが,ランゲという重しが取れた今は,JLCもIWCも高級化しようと一生懸命です.ただ,「高価格化=高級化」ではないと思います.
それから,メディアも無責任だと感じます.例えば,JLCのマスター・ホームタイムの70万円超の定価を「お手ごろ価格」と煽るメディアは一体何を考えているのか...私自身は「私の時計の価格観」で述べたような価格観なので,なおさらその思いが強いです.
正直に白状すると,今年のバーゼル&ジュネーブの新作で欲しいと思った時計はほとんどありませんでした.一方で,最近のマイ・ブームはパリョートです.パリョートは,ブーランRGPをいずれ購入しようと思っています.あとはモルニア製懐中時計ムーブメントを搭載したブーラン・シベリアも欲しいです.ただ,後者の購入はもう少し先かなぁ?サイズを絞った時計が出てくれると嬉しいのですが...
セイコーのアークチュラ・キネティック・クロノグラフ・チタンは欲しい時計の一つです.チタンの時計が欲しいこと,それから,キネティックが一つは欲しいこと,この二つを満たす時計として,アークチュラを選びました.あのキネクロは,ダイアルレイアウトも大好きです.
クロノスイスのデルフィスとオレアはそろそろ本気で考えようかなぁ,という気になっています.ただ,限定品でもなく,ずっと売っていそうなので,なかなか決断ができません(^^;;;)...そろそろエニカ製のムーブメントのストックが尽きるとの噂もあるようなのですが...まぁ,どちらにしろ,来年,もしくは,再来年の目標になりそうです.
ジャガー・ルクルトのウルトラスリムとレベルソ・サンムーンは欲しい時計ですが,ウルトラスリムはデザインで,サンムーンは価格で躊躇しています.「こんな時計が欲しい!」で書いたように,822搭載のSSケースが出てくれると嬉しいのですが...あとは,手巻のメモヴォックスもいずれは欲しいですが,これはどうなるかなぁ?
今,タイムトンネルにある,クロード・メイランもなかなかそそられます.バルジュー22,88,90がいいです.ただ,クロード・メイランはロゴが凄まじくかっこ悪いのがちょっと...でも,クロード・メイランはブランドの価値という点からは最も離れたところにある時計なのでなかなか好感が持てます.
現実的に買えるかどうかは分かりませんが,グラスヒュッテ・オリジナルのパノグラフのSSケースは,なかなか魅力的だと感じています.SSケースなのでそれほど高価ではない(けど100万円は越える)し,デザインも面白いし...ただ,並行で買ったらメンテナンスがちょっと心配かなぁ?
最初に書いたように,現在,幸か不幸か,パリョートがマイ・ブームになっています.これはまずい...他のスイス製の時計はどれを見ても高価に見えます(^^;;;)...いや,それぐらいの感覚の方が普通の人の感覚に近いのでしょうけど...まぁ,このまましばらくパリョート熱に浮かされていれば,時計購入欲も少しは下がるかなぁ?どうかなぁ?下がらないとちょっとまずいかなぁ?
今UPしている時計を,文字通り入手順に並べてみました^^...
こうやって見ると,2001年10月からもっぱら手巻が中心になっていることが分かります(^^;;;)...一月の最多入手記録は4本でした.今のところ,入手数は,2002年がピークでしたが,金額だと2003年が一番でした.
ただ,今年は購入ペースが今まで以上に速いので,本気で自粛しないとまずいなぁ...今年の今後の目標は「これ以上時計を購入しないこと」です...
私が時計好きになってから,6年が経ちました.最初に意識して購入した時計は,フレデリック・コンスタントのパワーリザーブで,購入は1999年の5月でした.ですので,このころから時計雑誌は買っていました.逆に,1998年以前の時計の情報が載っている本と言えば,「バーゼル時計年鑑」くらいしか持っていませんでした.
そこで,最近,ヤフオクにて1998年以前の時計雑誌をいくつか購入しました.成美堂出版の「腕時計セレクション」を6冊(1993年−1998年),それと古いウォッチ・ア・ゴーゴーを8冊です.このことから,いくつかのことが推察できました.
(1) 最近のムーブメント偏重は,だいたい2000年くらいから始まったようです.おそらく,「1つの時計に対して1つのキャリバー」という方法による高級化が成功したランゲ&ゾーネが影響していると思います.ちなみに,ETAという文字も90年代はあんまり出てきません...また,シースルーバックの時計が増え始めたのもこの頃だと感じました.
(2) パテック・フィリップが毎年新キャリバーを開発するようになったのは,どうも2000年の8日巻きからのようです.これも,(1)で述べたランゲ&ゾーネの影響だと思います.それまでのパテックは,既存のムーブメントを使いまわした時計を出していた感が強いです.ただ,デザイン・サイズを考えると,90年代のパテックの方が現行よりも上だと個人的には思います.
(3) オールド・ムーブメントの流行も,ジャッケ・エトアールの輸入が開始された2000年くらいからです.90年代では,ヴィーナスやバルジューという文字を見つけることすら困難でした.また,アンティークでも,意外とムーブメントの情報がありませんでした.
(4) オメガのデヴィル・プレステージの手巻に搭載されたキャリバー651は,1994年のデビューで,そのときにはなかなか扱いが大きかったのですが,その後,他のモデルに掲載されることもなく,ついには生産終了となった不遇のキャリバーだと思います.キャリバー自身は,ETA
7001の改良なんですが,受けの形まで変えていますし,なかなか頑張っていると思ったのですけど...
(5) ノモスは,今とは代理店が違いますが,96年には日本に輸入されていました.ただ,ノモスがここまで人気になったのは,ものがよいことはもちろんですが,代理店が変わって雑誌などに広告を打ったことと,ムーブメント重視の風潮が理由だと想像しています.時計を見る目が,90年代と2000年以降は変わったということでしょうか...クロノスイスも,99年頃に代理店が変更になっていました.
(6) 「腕時計セレクション」の場合,時計のメンテナンスについて掲載が始まったのは1997年からです.それまではメンテナンスについては一切触れられていません.これは出版社が悪いのか,それとも...
それにしても,階級があり分不相応な時計は周囲の目を気にして購入しづらいヨーロッパ(とどこかに書いてありました)に比べて,お金があれば周囲を気にせずに時計を買うことができる日本は,各メーカーが時計市場としては魅力的だと思っていることも納得できました.そのような事情と,物価が高くて相対的に時計が安くなる現在の日本では,超高額の時計がほいほい売れている(らしい)のも分かります.だからといって,昨今の各メーカーの急激な値上げに納得できるわけではありませんが...
さらに,日本では,時計によって逆にステータスを高めようという傾向があるようだと感じますし...「私の時計の価格観」で述べたように時計の価格があんまり話題にならないのも,日本の特徴のような気がします.ドイツの時計雑誌「Uhren
Magazin」では,価格別の時計ランキングとなっているのに対して,日本の時計雑誌はあまりにも価格を意識していませんから...まぁ,これは日本の時計雑誌が代理店の広告から成り立っているという事情もあるとは思います.
今日はちょっと趣向を変えて,手持ちのシースルーバックの時計を記念撮影してみました.
いやぁ,我ながらここまでシースルーバックの時計ばかり,よく集めたものです(^^;;;)...しかも手巻(一本自動巻がありますけど)で,ここに写っている時計は全部ムーブメントが違います...こうやって並べて眺めると,なかなか壮観です.このために時計を集めている,といっても,過言ではないかなぁ(^^;;;)?
最近は,現行ではこれ以上はかなりお高い自社製ムーブメントの時計になるし,一方でアンティークはシースルーバックをほとんど見ないし,と思っていたのです.ところが,アンティークのシースルーバックは意外と見つかって,しかも面白い時計ばかり...
さらに,ベネディクトとエクセルシオ・パークで,センターセコンドもなかなか面白いということが分かったので,次は敬遠していたETA2801とETA2660を入手しようかなぁ,という気にもなっています(^^)...あ,その前に,Poljot
のスモセコ三針とクロノグラフとアラームという選択肢もあるかなぁ?
どちらにしろ,ちょっと散財し過ぎたので,しばらくは時計購入を自粛しないと(^^;;;)...
私がごく個人的に考えてる,「こんな時計が出れば面白いのに・・・」というものを紹介します.ただし,そんな超絶の時計というわけでなく,そのメーカーの現行時計を少し変更することで自然に製造できるであろう時計ばかりを挙げてみました.
【オリス・ワールドタイマー】 まずはオリスのワールドタイマーです.この時計,ワールドタイム機構がすこぶる秀逸なのでいずれは欲しいのですが,今までサイズとデザインの面から敬遠していました(^^;;;)...今年のバーゼルでアラームクロックとセットで発表されたアートリエ・ワールドタイマーのデザインがよかったので,このデザインを採用の上,ケース径を38mm以下にしてぜひともレギュラー化して欲しいものです.
【オリス・トリプルカレンダー・ムーンフェイズ】 オリスは自社製モジュールの宝庫なので,それを組み合わせて古典的なトリプルカレンダー・ムーンフェイズウォッチをぜひとも作って欲しいと思っています.文字盤デザインはアートリエシリーズでよいのですが,現行モデルとは異なり,6時位置に顔入りムーンフェイズでこれと同軸のスモールセコンド,曜日と月表示は2時と11時位置の窓式,日付はもちろんポインターデイトでお願いします(^^)...
【ユンハンス・マックスビル】 この時計はぜひともシースルーバックにして欲しいです.ETA
2801 のシースルーバックは,マイスタージンガーやラコやグリュエンにはありますが,小振りで安価でプレーンなデザインの時計ではあんまりありません(少なくとも私は知らない)ので,ここは,デザインも秀逸なこの時計のシースルーバック化を希望します(^^).
【ノモス・二針】 なぜノモスは三針ばかりなのだろう?二針にしても結構いけるような気がします.もちろん,ロゴの位置や大きさ,それからインデックスデザインは多少変更が必要だとは思いますが...
【セイコー・ブライツ】 今年のバーゼルで発表になった,白文字盤・ラウンドケースのブライツには,ぜひとも同じデザイン意匠(バーインデックス・ドルフィン針)の三針もしくは三針+日付をラインナップに加えて欲しいと思います.今のセイコーには,クレドールとグランドセイコーの下にはブライツしかなく,しかもそのデザインは奇抜なものが多いので,ここは一つプレーンなデザインを望みます.できれば,肉厚なベゼルは避けて欲しいところですが...まぁ,この当たりの時計をキングセイコーとして復活するのもありかなぁ?
【セイコー・クロノグラフ】 セイコーは,せっかく小振りなクロノグラフムーブメントである6S系を持っているのですから,これを搭載している時計のサイズはぜひとももう少し小さくして欲しいと思います.それから,縦三目を横三目に変更し,空いた12時位置にパワーリザーブ計を配置した時計なんかは面白いと思います.いっそのこと,ボヴェのようにリューズを12時位置に持っていけばインダイアルをいじらずに簡単にできそうですし...もしくは,リューズはそのままで30分積算計を3時位置にし,6時位置の12時間積算計を取っ払った上でここにパワーリザーブ計を配置するというのもありかなぁ?さらに,6Sの手巻・SSケース・革ベルトをラインナップに加えて欲しいところです.
【オリエント・パワーリザーブ】 ラウンドケース・バーインデックス・ドルフィン針・パワーリザーブ計の少し小振りな時計を出して欲しいです.昔はあったんですけど,製造中止になって3年くらいたったので...ロイヤル以外にもノーブルなデザインのオリエントスターがあってもよいと思います.ただし,日付を入れるのであれば,ぜひ6時位置に(^^)...また,秒針はぜひブルースチール針に...
ついでに,雲上系も(^^;;;)...
【パテック・フィリップ・5120】 ローマ数字インデックス・バトン針・革ベルトの5120だけではなく,バーインデックス・ドルフィン針・WGブレスの5120/1にも革ベルト仕様をぜひ!5000のように,4時位置にスモールセコンドを入れるのも大歓迎!
【ヴァシュロン・コンスタンタン】 ヴァシュロンにはやっぱりシャンベランを再び作って欲しいなぁ...
【ショパール・L.U.C.】 個人的に,ショパールのL.U.Cのスモールセコンドは,あの日付とスモールセコンドの位置のために少し文字盤のデザインが落ちると思います.一方,センターセコンドはデザインはよいのですが,ムーブメントがジュネーブシールなしのL.U.C.4.96しかないし...センターセコンドでLU.C.1.96並みのムーブメントを搭載した時計が出ると嬉しいです.日付が無ければなお嬉しいです...
【ジャガー・ルクルト・レベルソ】 レベルソ・サンムーンのSSケース版が破格で出ると嬉しいです.もしくは,2001年に西武百貨店限定で出ていた,822搭載のシースルーバックよ再び!
【ジャガー・ルクルト・マスターウルトラスリム】 これはもう顔をもう少し魅力的にして欲しいです.ドルフィン針かバトン針で,バーインデックで十分です.文字盤を凝って,エナメルとかポーセリンとかにするのもいいかなぁ...
私はお金持ちでもありませんし,しかも貧乏性です.ですので,時計を趣味としている人から見れば,時計に出せる金額は意外と低い方だと思っています.それでも,一般の人には「何と無駄遣いをしていることか?!」と言われそうですけど(^^;;;)...
私の場合,中古時計の比重も高いため,一本当りの時計の購入価格はそれほど高くありません.掲載している時計の中では,購入価格が20万円を越えたものはたったの2本,10万円を越えたものでも6本に過ぎません.残りはすべて10万円以下です(^^;;;)...それでも,今持っている時計にはかなり満足しています.
ですので,ただの三針で10万円以内,クロノグラフで20万円以内だと,デザインが気に入ってシースルーバックでムーブメントが美しければ手を出しがちです.一方,ただの三針で20万円近くするような時計だと,なかなか手が出なくなってしまいます...
例えば,すでに日本未入荷となって久しいミネルバのピタゴラスは,ヤフオクなどで20万円くらいで取引されていますが,その価格だと私の感覚ではちょっと高く感じます.確かに自社製ムーブメントのCal.48は興味はありますし,よい時計だということも分かるのですが,誤解を恐れずに言えば,ただの三針手巻時計です.これを購入するには,よほどミネルバに対して思い入れがないと,と思いますし,私は現時点ではそれほど思い入れはありません.
手持ちの三針時計で購入価格が最も高かった時計はモーリス・ラクロアのFHF29です.これは,入手する前に文字盤を見て惚れ込み,さらにムーブメントを見て惚れ込んだ時計です.このような特徴ある美しい文字盤であれば手を出しやすいのですが,ミネルバの場合はその当たりが私にとってはまだまだ,という感じです.これは,ジャガー・ルクルトのマスター・ウルトラスリムにも当てはまります.あのデザインが...
いつも欲しい時計として書いているクロノスイスのオレアも,エナメル文字盤でなければ,私にとっては大幅な魅力減です.いくらムーブメントが好きだとは言っても,やっぱり着けている時に裏は見ることができませんから,文字盤やケースデザインも時計購入の大事な要素です.この両者が一致して,しかも低価格な時計が私にとって魅力的な時計となります.ジャッケ・エトアールのヴィーナス・インペリアルやパルスメーター・クロノグラフも,この文字盤・ケースでなければ,いくら美しいムーブメントとは言っても,手は出していなかったでしょう...両者の文字盤は大好きです.
それから,今の私にとっては,人が持っていないレアな時計であるということも重要な購入動機になっています.誰もが知っているような時計や賞賛する時計にはそれほどまで興味が沸きません.ですので,現行品にはそれほど興味はありません.その代わりに1990年代の時計に興味があります.1990年代は,後半になってようやく機械式時計ブームの兆しが見え始めた時期で,そのブームをつかもうと,各メーカーとも必死に時計を作っていた,という印象を持っています.あとはアンティークにも興味があります.
時計趣味に価格のことを持ち出すことは無粋かもしれません.ただ,実際に湯水のようにお金があるわけでもなく,その中から「これは!」という逸品を選ぶわけですから,私にとっては価格もかなり重要な要素です.対価格で考えて明らかに出来がよく,しかも,自分好みにぴったりの時計を入手したときの嬉しさはたまりません.そういう意味では,レア度・デザイン・機能・価格を考えれば,モバードのクロノグラフHP146は掘り出し物でした!こういう大満足の時計を入手すると,本当に嬉しくなります(^^).
時計の価格を気にしなければ,「よい」と言われている時計は雑誌などで簡単に見つけることができます.しかし,逆に言えば,「よい」と言われている時計は30万円以上はする高い時計ばかりです.ただ,そのような「よい」時計を選ぶことは単に雑誌に踊らされているだけで私は面白くありませんし,高い時計の方が安い時計より当然「よい」時計になるでしょう(実際にはそうでもない時計も結構あると思いますが).ですので,できるだけ少ないお金で,しかもこだわりのある時計を入手する,これがちょっと屈折した私の時計趣味です(^^)...
二つ前の「ムーブメントブック」で書いたことをもう少し考えてみました.結局,メーカーや代理店やショップの思惑は,その時計の価値を如何につけるか,ということなので,時計の価格を下げる技術や大量生産向けの技術はあんまり興味がない,ということなのでしょう...マジックレバー式しかり,ETA製ムーブメントしかり,カム式クロノグラフしかり...
ダービー&シャルデンブランのダービー博士が開発したインデックス・モビーレ(簡易スプリットセコンド)は,結局,そのチープさが原因であんまり売れず,そのため会社の経営をかなり圧迫したようです.これは,メーカーや代理店やショップに限らず,消費者自身も,時計に工芸的価値を求めていることを意味しているような気がします.
反対に,手がかかった技術や自社製ムーブメントは,宣伝しやすいこともあってか歓迎されているようです.ただ,昨今の無意味な(と私自身は感じる)自社製ムーブメントの流行はいかがなものかと思います.自動巻ならいざ知らず,手巻三針のムーブメントを大々的に宣伝しても,私自身は全然食指が動きませんし,明らかに技術面よりもブランド価値を上げるためだけに自社製ムーブメントが作られているような気がします.
私自身も,そのような手がかかったムーブメントは決して嫌いではありません.ただ,以前は手をかけなければ高級時計として成り立たなかったものが,現行時計を見る限り,手をかけることの方が前提になっているような気がして,あんまり楽しくありません.手をかけることが,工芸品的価値を高めるための目的になっているだけ,という印象を持っています.
最近特に絶賛されているジャガー・ルクルトですが,レベルソであれば私自身はビック・レベルソのサイズまでが許容範囲ですし,ムーブメントを裏から覗くことができるレベルソ・サンムーンは大好きです.このムーブメント
Cal. 823 は本当に美しいと思います.ですが,2002年に発表された,あれよりさらに大きな8日巻きのレベルソ・グランド・デイトに搭載されている
Cal.835, これこそ現代的な受けの形状なのでしょうけど,あんまり惹かれません.しかもあのサイズが...レベルソの複雑系は,あの小さなケースに複雑機能を入れているので偉大だったのであって,あれほど大きくなるとあまり価値がないような気がします.確かに今はデカ厚時計が流行しているので,あの大きな時計でも抵抗はないのでしょうし,大きくすることでダブルバレルを搭載でき,それによって8日巻きが実現できたそうですが,そこまでしてレベルソの美しさを破棄する意味が私には分かりません.
一方,アンティークショップの方々は,主にムーブメントを中心に時計の善し悪しを述べられます.確かにそのことは一理あるとは思います.ただ,アンティークウォッチは製造されてから少なくとも30年以上は経過していることは考慮に入れるべきだと思います.それから,ユニタスが大好きな私が言うのも説得力はありませんが(^^;;;),度の過ぎたムーブメント至上主義は個人的には遠慮したいところです.
個人的には,アンティークの魅力は,ムーブメントよりも,「ワンオフ」と言ってもよいくらい同じデザインの時計がほとんど存在しないところにあると思っています.まぁ,中にはオメガのスピードマスタープロフェッショナルのように例外もありますけど...それと,ケースの意匠や文字盤のデザインも魅力的な時計が数多くあります.そのような中で,自分の好みの時計を見つける楽しみがアンティークならではと思います.
私自身は,ムーブメントの好みは,自動巻の場合は巻き上げ効率,もしくは,見た目です.ですので,自動巻で好きなムーブメントは,価格が安いこともありますが,セイコーやオリエントのマジックレバー式です.あとはパテック・フィリップやショパールのマイクロローター自動巻とジャガー・ルクルトのCal.
920は,見た目がとても美しいので,いずれは欲しい逸品です.
一方,手巻三針の場合は見た目です.受け板が曲線的なものや多分割であるムーブメントが好みです.チラネジは無いよりもあった方が好きですが,それほどこだわってはいません.例え技術的に手がかかったムーブメントといえども,見た目が好みでないものは好きではありません.ですので,L.U.C.も手巻のクワトロには全然食指が動きません...また,ドイツ製に多い一体型の受けもそれほど好みではありません.
さらに,最もこだわっている点がシースルーバックであることです.アンティーク好きに言わせればおそらく邪道でしょうけど,せっかくのムーブメントが見れないなんて,私には耐えられません(^^)...最近では,数は少ないけど時折見かけるアンティークのシースルーバック手巻時計に興味があります.
最近,ミシェル・ジョルダン,ガルーチ,プリンス,ビーバレル,ロベルタ・ビビアーニ,シモン・レガーといった超破格時計が流行しているようです.まぁ,もともとはいわゆるフェイクものばかりでしたが,それにこのようなブランド名をつけて売るようになったようです.私はこの手の時計を「おもちゃ時計」と呼んでいて,かなり否定的です.デザイン意匠が有名な時計たちのフェイクだということもありますが,何より問題なのはその品質と保証についてだと思います.
これらのおもちゃ時計は,中にはミヨタ製とセイコー製(もしかしたらそのフェイク)があるようですが,主に中国製ムーブメントを搭載していています.このムーブメントの品質が非常に悪く,リューズが抜ける,針が動かない,などのトラブルが多いと聞きます.単価が安いだけに,おそらく時計店への卸値も想像以上に安いのだと思います.ですので,良心的なお店だと,トラブルがある時計は新品と交換,となります...#それでも儲けが出るのかなぁ?とすれば,そうとうな卸値です.
それから忘れてはならないのは,時計を購入して,例えば3年後にこれらのメーカーが存続しているかどうか,です.現在でもしばらくするとメーカー名が消えるこの手の時計から察するに,そんな先ではこれらのメーカーはおそらく存続していないでしょう.となれば,トラブル時には購入した時計店での修理となります.こういう場合,普通は有償です.ですから,新品時の保証は無いのも同然です.しかも,修理用の部品がなければ最悪です.#おそらく,部品は供給されていないのでは?
この手のおもちゃ時計は安さと機能が魅力的なのは確かです.ですが,それ相応の複雑機能がついた時計であれば,それが故障したときの保証・修理も考えて購入すべきだと思います.ところが,この手の時計を購入する人は,時計に詳しくて何本も時計を持っていて遊び感覚で買う人以外に,今回機械式時計を初めて購入するという人が多いように感じます.前者の場合,おもちゃ時計を使い続けることは稀でしょうからトラブルもおのずと少ないでしょうし,トラブルも含めたある種余裕がある場合が多いと思います.ですが,後者が購入した場合,おもちゃ時計を使い続け,しかもさまざまな機能で遊ぶため,トラブルが発生する確率がとても高くなると感じます.
おもちゃ時計の機能で面白そうなものと言えば,主に(1)パワーリザーブ+GMT,(2)レギュレーター,(3)ジャンピングアワー,(4)トリプルカレンダームーンフェイズ,(5)スケルトン,(6)オープンハートでしょうか...超破格は無理でも,少し頑張れば,以下のようなしっかりした時計を買うことができます.
(1) 【パワーリザーブ+GMT】 どうしてもGMT針つきが欲しいのであれば ETA2892
搭載の時計を買いましょう.これとてトラブルが皆無というわけではありませんが,おもちゃ時計と違い,GMT針は独立して動かすことができます.色んなメーカーから出ているので,探せば新品でも5万円程度で見つかります.さらに,GMT針が必要なければ,巻き上げ効率に優れたオリエントという魅力的な選択肢があります.これだと,海外生産品であればおもちゃ時計とほぼ同じ価格帯からあります.
(2) 【レギュレーター】 少し前のグレース・ファブリオなどに10万円以下の時計があります.また,手巻でよければ,エポスという手もあります.いっそのこと思いきり頑張って,ここ10年のレギュレーターの礎を作ったクロノスイスのレギュレーターを入手するという手もあります.
(3) 【ジャンピングアワー】 自動巻・手巻ともに,エポスという魅力的な選択肢があります.特に手巻は角型でデザインも秀逸です.ただし,ちょっと高くなるのはやむをえないでしょう.
(4) 【トリプルカレンダームーンフェイズ】 現行品であれば,エポスやオーガスト・レイモンド,それから,ちょっと前のフレデリック・コンスタントやルイ・エラールなどにあります.あとは,少し高くなりますが
ETA/VAL 7751 搭載のトリプルカレンダームーンフェイズ+クロノグラフという選択肢もあります.アンティークでもよければ,この手の時計は10万円以下で探し出すこともできます.
(5) 【スケルトン】 これはエポスの手巻・自動巻スケルトンにいくつかバリエーションがありますし,ちょっと前のアロマや限定品ですがオリエントの手巻スケルトンといった選択肢があります.さらに,自社製ムーブメントを搭載したレビュー・トーメンのオープンハートも選択肢に入ると思います.
(6) 【オープンハート】 これにもエポスとフレデリック・コンスタントという魅力的な選択肢があります.オープンハート自身,フレデリック・コンスタントのお家芸なので,これが一番よい選択肢だと思います.
価格だけで選べば,おもちゃ時計をいくつも集めるくらいなら,セイコーの海外生産の5やダイバーズ,それから,オリエント(国内品・海外生産品)を集める方が,よっぽど健全だし魅力的だと思います.品質にはまったく問題がありません(通常の時計より丈夫なくらいです)し,かなり独特なデザインも多く,オリジナリティーに溢れています.特に,セイコーの海外生産ダイバーズの品質は,おもちゃ時計と比べることができないほど高品質です.
ちなみに,ここではあえて避けた「フェイク」についてですが,私自身は否定的です.フェイクを買うくらいなら,我慢してお金を貯めて,本物を買うべきです.フェイクを楽しむ,ということは,自分自身をもだましていることになりかねません.まぁ,本物を持っていて普段使いにフェイクを買うという気持ちであれば少しは分かりますが,それも時計に傷がつかないように,でも,人には自慢したいという,ちょっと心が貧しい考え方だと思います.
最近,このようなおもちゃ時計を扱うお店が増えたのは残念な限りです.時計店の方々には,売りっぱなしではなく,アフターのことやトラブル回避の意味も含めて,おもちゃ時計を購入する際の注意を消費者にするくらいの良心があってもよいような気がします.例えその注意でその方がそのおもちゃ時計を購入しなくなったとしても,短期的な目で見れば損ですが,長い目で見ればそのお店にとって結局は得になることだと思います.実際にダイビングをするときにはロレックスよりもGショックを薦めるような良心的なお店であれば,なおさらだと思います...
#もしこれを見て気分を害した時計店の方がおられましたら,深謝いたします.ただの時計好きの戯言だと思って御容赦ください
m(_"_)m...
久しぶりの更新です(^^;;;)...
最近,「ムーブメントブック」なる本が出版されました.それには「腕時計はムーブメントで選ぶ時代だ!」という勇ましいサブタイトルが付いていました.この本のようにマニアックな情報が簡単に入手できるようになったのは歓迎すべきことだとは思います.ただ,この本は,現行時計に対して,マニュファクチュール信仰を植えつけることと,雲上系以外の現行時計に対する否定的な感情を持たせる,という意味で少し危険だとも感じました...つまり,マニュファクチュール以外のメーカーの現行時計をムーブメントがだめ,というような卑下する見方を植えつけかねません.
もともと分業制からスタートしたスイスの時計業界は,今も昔も,産業という側面からは,マニュファクチュールではなく,エタブリスールの方が存在意義が高いと私は感じています.それを,メーカー側からマニュファクチュール信仰を植えつけるのはいかがなものかという気がします.最近のマニュファクチュール信仰は「○○社製のムーブメントだからよい」といった,時計の付加価値を上げることだけに使われている気がします.
また,現行ムーブメント批判で真っ先に上がるETA製ムーブメントについてですが,大量生産品であること以外で,具体的にETA製ムーブメントがだめなところを,雑誌などの記事で見たことがありません.そもそもETA製ムーブメントの情報があれだけ掲載されたことは,この「ムーブメントブック」が初めてだと思います.ただ,これもカタログだけで,この本の情報からだけだと,具体的にどのような仕組みであり,技術的にどのような利点・欠点があるのかは,分かりませんでしたが...
ムーブメントを突き詰めていくと,時計の選択肢は結局現行時計ではなくアンティーク時計になってしまうと思います.アンティークショップのオーナーたちは現行時計を否定する方が多いと感じますし,確かにそのような見方は一理あるとは思います.ただ,今から50年以上前に技術が未熟だったから必然的にせざるを得なかったことを,「凝った作り」と何でもありがたがる風潮はいかがなものかと感じます.現行ムーブメントとオールドムーブメントは,その時代背景から違うものができて然るべきだと思いますし...この当りは「工芸品はよいが,大量生産の工業製品はだめ」という考えに似ていると感じます.
時計職人でもある金子時計店の金子さんは「セイコーのマジックレバー式が最もすばらしい自動巻ムーブメントである」という主張をいつもされています.理由としては,巻き上げ効率がよいこと,部品点数が少ないため,故障が少ないので耐久性が高く,しかも修理がしやすいことを挙げられています.消費者の立場から言えば,これに加えて廉価な時計が多いこと,という利点もあります(^^).
一方で,マジックレバー式のような「工業製品」にどちらかと言えば否定的な方もいます.そういう方からはマジックレバー式に感心する言葉はほとんど出てきません.しかも,そういう方の方が雑誌などへの露出は圧倒的に多いと思います.例えば,「ムーブメントブック」には,冒頭に何人かの方へのインタビュー記事があり,その中に「好きなムーブメントは?」という質問がありますが,その答えのどこにもセイコーの文字は出てきません.
確かに,セイコーのマジックレバー式ムーブメント,特にセイコー5に搭載されている7S系を見ると,見栄えはよくないどころか私も悪いと思います(^^;;;)...しかしながら,マジックレバーの技術的アドバンテージは非常に高く,ある意味,究極の自動巻機構と考えることもできると思います.一方で,「好きなムーブメントは?」の答えは,一部を除き,どれも見栄えがすばらしいムーブメントばかりです.ということは,「好き」と「技術的に優れている」が同じではないということを意味しているように感じられます.
自動巻に関して言えば,セイコーのマジックレバー式とIWCのペラトン式は,構造上,とてもよく似ています.ローターの回転をハートカムの偏心運動に変換し,それを用いて爪を上下に動かすことでゼンマイを巻き上げる,という原理自体は同じだと思います.これを思いっきり凝って作ったのがIWCのペラトン式,逆に,思いっきり簡素に作ったのがセイコーのマジックレバー式だと感じます.なお,ムーブメントブックには,IWCのペラトン式の図解が119ページに,セイコーのマジックレバー式の図解が120ページに載っています.
それなのに,時計雑誌などでは,IWCのペラトン式は絶賛されていて,セイコーのマジックレバー式はほとんど無視されています.まぁ,メーカーや代理店や販売店の広告媒体である雑誌にとって,主にセイコーやオリエントの逆輸入・海外生産品に搭載されているマジックレバー式巻上げのムーブメントをほめたところで,何の利益もないので,無視されるのも当然といえば当然ですが,やっぱり一消費者としては,そういうことを知っておいても損はないと思います.
また,よくムーブメントを紹介するときに「仕上げのよさ」という言葉が使われます.例えば,ここの中のヴィーナス175とバルジュー23は仕上げの趣は違いますが仕上げがされているムーブメントで,ゼニス146HPはお世辞にも仕上げがされているとは言えないムーブメントです.これだけを見て,どれが好きかといわれると,ほとんどの人はヴィーナス175かバルジュー23を選び,ゼニス146HPは選ばない思います.
では,ゼニス146HPが同等の仕上げがされている,もしくは,ヴィーナス175とバルジュー
23がほとんど仕上げがされていないとき,どれが好きだと答えますか?私の場合は,三つの大きなホイールを持つゼニス146HPです.クラッチの形状やピラーの歯の数などから,ヴィーナス175やバルジュー23を選ぶ人がいるのも分かります.ただ,このような見方も,まだ技術的ではなく,工芸的な「見栄えの好み」に属する問題です.このように,ムーブメントを比較する場合,曲がりなりにもプロであるのであれば,仕上げの条件を同じにした上で,それが持つ独自の技術的な特徴を述べ,その利点まで述べなければ,その意見は私のような素人でもできる単なる個人的な思い入れに過ぎず,説得力がありません.見た目だけの感想なんて,わざわざ雑誌で紹介するまでもないでしょう...
クロノグラフムーブメントの場合,さらにピラーホイール信仰もあります.私もピラーホイール式のクロノグラフムーブメントは大好きですが,その理由は「部品がギュッと詰まった感じがして見栄えがよい」というごく個人的な理由からです.ピラー式は見栄えがよいこととプッシュボタンの感触がよい,というはなはだ感性に訴える利点はあります.ですが,技術的には,カム式よりもコストがかかり,調整にも手間がかかるという欠点があると聞いたことがあります.まぁ,見栄えのよさは,キャリングアーム式であれば,別にピラーホイール式でなくても私は好きなんですけど(^^;;;)...
翻って,「ムーブメントブック」のインタビュー記事を見ると...技術面よりも工芸面ばかりが述べられているように感じます.ムーブメントの比較ではクォーツと機械式を分けて考えるように,手巻と自動巻,また,三針とクロノグラフは,技術的には分けて考えるべきものだと感じます.
支離滅裂で申し訳ありません m(_"_)m...どうも最近の雑誌を見ると,技術面のふりをした工芸面や感性に訴えた理由をもとに,あたかも技術的に優れたムーブメントである,と結論づけている文章をよく見かけるような気がして...ただ,いろいろ書きましたが,見栄えがよいムーブメントはやっぱり大好きです.特に,雲上系のパテック・フィリップやショパールのL.U.Cは憧れですね(^^;;;)...
手持ちの時計で好きな文字盤はモーリス・ラクロアのFHF29とレビュー・トーメンのクリケット1997エナメルです.
FHF29のソリッドシルバーギョーシェ文字盤は,光の反射によってなかなか綺麗に輝きます.例えば,フレデリック・コンスタントのパワーリザーブなどのギョーシェ文字盤とは明らかに輝きが違います.しかも,放射状に伸びたギョーシェがブルースチールのブレゲ針と相まって,綺麗です.
一方のクリケットは,ギョーシェ文字盤にフンリケ・エナメルをあしらった綺麗なブルー文字盤です.これは正面から見るとあんまり良さは分かりませんが,斜めから見ると,裏のギョーシェ模様が綺麗に見えます.しかも,手作りらしく,文字盤表面は少し凸凹しています.
凸凹しているといえば,セイコーのローレルもそうです.この琺瑯文字盤に,スペード型ブルースチール針とブレゲ数字・レイルウェイインデックスの組み合わせはなかなか味があります.
また,ジャッケ・エトアールのパルスメーター・クロノグラフもなかなか味があります.文字盤の素材は普通に使われているものでしょうが,赤で印字されたパルスメーターといい,ブレゲ数字のインデックスといい,文字盤デザインは,古きよき時代の銀無垢ケース・ポーセリンダイアルの時計を髣髴させるものになっています.
一方,何もデザインしていないようで,インデックスの長さや色合いがしっかりデザインされていると感じる,セイコーのメカニカルの文字盤も好きです.あれほどまでにそっけないと,逆に「あっぱれ!」と感じてしまいます^^.
私の欲しい時計の中に,クロノスイスのデルフィスとオレア手巻があります.機能やムーブメントも好きな理由なのですが,何と言っても,デルフィスの美しいギョーシェ文字盤とオレアの美しいエナメル文字盤に惹かれています.いつかは手に入れたいと思っています.いつになるかは分かりませんが(^^;;;)...
文字盤だけに限れば,ブレゲのギョーシェ文字盤(ブレゲではギローシェという)も魅力的です.クロワゾネもいつかは欲しい逸品です.パルミジャーニのタペストリーやバイヨンも綺麗ですし,クレドールの彫金モデルも素晴らしいと思います.これらの時計の場合,「文字盤を買う」という趣の方が高いと思いますし,ここまでの芸術品であれば,それもまた時計選びの一つかなぁ,と思います.まぁ,私には経済的に高嶺の花ではありますが(^^;;;)...
ところで,手持ちの時計では,カレンダー機能が全然充実していません.現時点で,日付表示なしの時計が20本ありますし...これはあんまり意図してはいなかったのですが,手巻を中心に集めると,必然的にこうなってしまいました.唯一の例外は,トランスコンチネンツ・ミニッツリピーターです.これはクォーツの永久カレンダーです.
トリプルカレンダームーンフェイズの時計も一つは欲しいです.特に,手巻のオールドムーブメントを搭載して,シースルーバックで,ムーンフェイズとスモールセコンドが同軸の時計,なんてのが出たら飛びつくかもしれません.ただ,だいたい一週間交代で一つの時計を身に着ける習慣なので,使うたびに日付・曜日・月・ムーンフェイズをあわせるのが億劫になって,次第に使わなくなりそうです.最近,日付すらあわせるのが面倒になってしまいましたし(^^;;;)...
一方,ドクターズ・ウォッチ,レギュレーター,ジャンピングアワー,レトログラードといった,ちょっと変わった表示の時計は大好きです.ジャンピングアワーもレトログラードも持ってはいないのですが,これを同時に解決するためには,前述したクロノスイスのデルフィスを買うしかないかなぁ...ただ,現行品ということもあって,早急に買おうという気にはなあんまりなりませんし,私にとってはちょっとお高いし(^^;;;)...それに,ジャンピングアワーであれば,エポスの角型手巻と丸型自動巻という破格で魅力的な二つのモデルがありますし...
最近の時計を見て感じることは,分針が短いことです.私の場合,ラウンドケースの時計の分針は,ケースの縁まで伸びているのものが理想的です.少なくとも,分インデックスと重なる長さは欲しいところです.
手持ちの時計では,やっぱりジャッケ・エトアールの分針が長めです.これはノモスやクロノスイスもそうですから,どうもドイツの伝統らしいです.
それと比較すると,セイコーやオリエントは短めです.ただ,私の手持ちのセイコーは,分インデックスが無く,かつ,5分インデックスをすっぽり覆う長さの分針を持つメカニカル,分インデックスが比較的内側にあるローレルとオレンジモンスターとたまたま私の要求は満たしていますが(^^;;;),ブライツあたりを見るとやっぱり短いですね...オリエントも特にオリエントスターロイヤルとオリエントスターパワーリザーブはもう少し長い分針だと,雰囲気がぐっとしまると思うのですが...
手持ちのスイス製でも,オーガスト・レイモンド,フレデリック・コンスタント,エポスは短いものが多いです.手持ちの時計のうち,私の要求を満たす分針をもつラウンドケースは,オーガスト・レイモンドのエバーグリーンとエポスのユニタスだけです.特に,エポスのレギュレーターはほんの少し分針が長いだけでかなり理想的なのですが,これはポインターデイトと干渉しないためだと思います.でも,やっぱりちょっと残念な長さです.
一方,レビュー・トーメンの場合,GT1885とクリケットは共に要求を満たします.ただし,クリケットには分インデックスがありませんが...あと,ゼノのシーハンターやオメガのスピードマスタープロフェッショナルは要求を満たしますが,ロンジンは満たしません.ゼノは一般的には短いですが,シーハンターの場合は分インデックスが長いことが要求を満たした原因です.
時計雑誌をぱっと眺めてみても,針が長いメーカーといえば,パテック・フィリップ,ゼニス,IWC,ブランパン,ブレゲ(ドレス系),それからドイツのメーカーです.インデックスにかかっているという意味では,ブライトリングもそうですね.針自身はそれほど長くないけど...また,オーデマ・ピゲとヴァシュロン・コンスタンタンは長かったり短かったりのようです.ただ,ドレス系は長いものが多いです.ジャガー・ルクルトはレベルソの針は角型の割には長めだとは思うのですが,ラウンドは短いものが多いです.オメガはスピードマスターとデ・ビルは長めですが,シーマスターは短めです.オリスやパネライやモーリス・ラクロアは短めです.また,国産三社はすべて短めです.ちなみに,日本で一番人気のロレックスの場合,デイデイトやデイトジャストやエアキングといったスタンダード系の針は長いですが,スポーツ系はすべて短くなっています.
ロレックスに限らず,一般に,スポーツ系の時計の場合,夜光を載せた太い針が主流ですから,短くなるのも当然といえば当然ですが...そうであれば,インデックスを少し内側に配置するとか,針の先端だけ細く伸ばすなどの工夫はして欲しいと思います.でも,スポーツロレックス好きの人にはあの針の長さのバランスが好きなのでしょうけど(^^;;;)...
こんなことにこだわる私は変だと思っている方,一度アンティークウォッチを見てみてください.ほとんどの時計が,長い針か内寄りのインデックスを採用し,針とインデックスが重なるようになっています.現行時計でも,ここを工夫するだけで,ずいぶん雰囲気がよくなる時計が多いと思うのですが,いかがでしょう?
2004年1月22日「スモールセコンドの位置とドクターズウォッチ」
このページを開いて一ヶ月が経ちました...そろそろ手持ちの時計がなくなりつつあるので,日記と称して更新を続けるしかない(^^;;;)...というわけで始めてみました.まだ検索エンジンにも引っかかっていないようなので,このページを見ている人は極少数だとは思いますけど(^^;;;)...
スモールセコンド(スモセコ)の時計は大好きです.大好きですが,昨今の「中寄りスモセコ」はあんまり好みではありません.できれば,6のインデックスが隠れるくらい6時側にあるスモールセコンドが好きです.
アンティークウォッチを見ると,スモールセコンドは全部そのような位置にあります.ところが,現行時計を見ると,三大メーカーをはじめとして,軒並み中寄りスモセコです.これは,時計のムーブメントは「小は大を兼ねる」という事情があります.小さなムーブメントを使って大きな時計を作ることはできますが,逆は不可能ですからねぇ...
また,最近では合理化のために角型ムーブメントがほとんど生産されていないため,特に角型のスモセコにこの傾向は顕著です.というよりは,目の錯覚なのですが,ケースが下に長い分,中寄りに見えてしまうのです.例えば,モーリス・ラクロアのFHF29と比較すると,オーガスト・レイモンドのバラードはかなり中寄りです.
私はユニタス・ムーブメントが好きなのですが,その第一の理由は,ケースサイズとあったスモールセコンドムーブメントを使っていることです.オーガスト・レイモンドのイン・ザ・ムードやブギ,ジャッケ・エトアールのリスボン・ミディアムを見ると,きちんとスモールセコンドが下に位置しています.また,レビュー・トーメンの二つのGT1885もそうなっています.
そんな私が大好きなのが,ドクターズウォッチです.エポスにしろオーガスト・レイモンドにしろ,秒針を大きくして時分針を上にずらしているため,スモールセコンドの中寄りの印象がかなり薄れています.何といってもこれがいいですね^^...
この二つのドクターズウォッチのムーブメントはAS1727で,ムーブメントのサイズとしては,バラードのユニタス6580と変わりません.さらに,秒針位置は実はほぼ同じです.ところが,バラードではかなり中寄りだったスモセコが,エポスやオーガスト・レイモンドのドクターズウォッチではそのように感じません.
確かに,古の角型ムーブメントを使ったドクターズウォッチと比較すると,まだ秒針は中寄りなのですが,現行時計には角型ムーブメントのドクターズウォッチはおそらく存在しませんから,幅を考慮すれば,これら二つのドクターズウォッチはよくデザインされていると思います.
そうは言っても,デザインがすばらしく比較的安価な中寄りスモセコも大好きなのですけど(^^;;;)...ノモスのオリオンやルードヴィッヒ,リメスのファロはいずれは欲しい時計の一つです.
ただ,三大メーカーの中寄りスモセコは,「三大メーカーなのに...」とつい思ってしまいます.高級メーカーなんだから,小は大を兼ねるという兼用なんてケチくさいことをせず,メンズ用・レディース用と別々にサイズ違いのムーブメントを作って欲しいものです.